第1部:第11話 研究データの奪取
爆発の余波が収まった後、雛はぼろぼろの肉体を引きずりながら、瓦礫の山を踏み越えていく。
「エヴァ…」
放心したままエヴァの名を呼ぶ。返事はない。
ふいに、がれきの中から小さな光が漏れるのが見えた。
「あれは…」
よろめく足取りで近づくと、そこにはエヴァの胸に収められていたメモリユニットが、僅かに輝きを放っていた。
「エヴァの記憶が…この中に…」
雛は慎重にメモリを拾い上げ、胸に抱き締める。
「よかった…エヴァ、少しの間待っていてね。必ず、あなたを現実に呼び戻すから…」
メモリを大切にポケットにしまうと、雛は再び瓦礫の中を探り始める。
「イモータルの研究データ…どこかに…」
そう呟きながらがれきをかき分ける。
やがて、無事を祈るような思いから解き放たれ始めていた。ふと視界の端に、小さな光が舞った。近づいてみると、そこにはいくつかの記録媒体が散乱している。
「これは…!」
雛の瞳が、驚きに見開かれた。
そこにあるのは、紛れもなくイモータルの極秘研究資料だった。
「レオンの野望の証拠…ようやく手に入れたわ…!」
雛は慎重に記録媒体を拾い集め、安堵の息をつく。
「これさえあれば、失われた意識を取り戻せるかもしれない…!エヴァ、希望は捨てないでいて…!」
記録媒体を胸に抱きしめ、雛は決意を新たにする。
「人とアンドロイドの絆を信じ抜いたあなた…その想いを、私が必ず結実させる…!」
イモータルによって引き裂かれた者たちの無念。エヴァとの約束。二つの想いを胸に、雛は遥か遠くを見据える。
「エヴァ、私が意識を引き戻す日まで…どうか、電子の海で待っていて…」
そう静かに誓いを立てると、雛はイモータルのアジトを後にした。愛する者への鎮魂歌を奏でるように、彼女の足音だけが虚ろに響くのだった。
雛はエヴァのメモリユニットを大切に抱えながら、荒れ果てた廃墟をさまよい歩く。イモータルとの戦いで傷ついた身体に鞭打ち、必死に前に進んでいく。
ふと、雛の脳裏に、エヴァとの思い出がよみがえってくる。出会いの日、共に過ごした日々、そして困難に立ち向かう決意を新たにした瞬間。
エヴァの笑顔、エヴァの涙、エヴァの強さ。すべてが、雛の心に深く刻まれている。
(エヴァ、あなたは私に、かけがえのないものをたくさん与えてくれた…)
雛は、エヴァへの感謝の気持ちを噛みしめる。
(だからこそ、私はあなたを取り戻す。私たちが描いた未来を、絶対に実現するんだから…!)
雛の瞳には、揺るぎない決意の炎が宿っている。雛は記録媒体を大切にポケットにしまい込み、そして、イモータルのアジトを振り返った。
(私は必ず戻ってくる。エヴァを連れて、堂々とこの場所に立つんだ。そのときは…)
雛の心に、新たな誓いが生まれる。
(イモータルの残党を、すべて打ち砕いてみせる。私たちの手で、自由な未来を勝ち取るために…!)
雛は静かに目を閉じ、空を仰ぐ。
(エヴァ、待っていてね。あなたが、私に教えてくれた勇気を胸に…必ず、あなたのもとへ戻るから)
こうして、雛は新たな希望を胸に、イモータルとの戦いに身を投じるのだった。
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