sparkling morning 〈side 心〉

「…はい。それで、入隊希望の新入生が来てしまいまして…」

(それどんな子ー?)

「中学から楽器を続けており、大事な楽器を教育委員会に壊された…なんか殺気がすごい子です。」

(えー、だいかんげーい!楽器も絶対上手だし…いいよ!入隊をきょかするぅー!)

「ありがとうございます、本部長。」

(いえいーえー。にしても、心はいつもお仕事真面目に頑張ってるねぇ〜。マジSUGOI☆いつもありがとねぇ〜。じゃ、またなんかあったら連絡よろー♪)

「はい。失礼します。」


なんであの人はあんなテンション高いんだろう…。なんだろう、めっちゃ美希に似てる。もしかしてあれか、トランペットか。

いやぁ…ちょっと分かり合えない気がする…。


第三部隊部長、心は、猛烈に困っていた。

顧問が上機嫌だったことによる一瞬の入隊OKに、唐突な本部長からのいつもありがとねの言葉。本部長って感謝できたんだ…の驚きにより、心は数秒フリーズしてしまった。

そして、今の、秒で終わった入隊許可取り。正直、え、そんなゆるくていいの?と思ってしまった。

そして、予想外に早く終わってしまった、が重なり…。

(やばい…音ちゃんの分の譜面、譜面台、練習機材、名前…なんにも確保できてない…。)

圧倒的危機に陥っていたのだ。

一応いろんなパートに聞きまわってみたが、どこも余りはないという。トランペットは主戦力で人数も多いため、練習場所など余ってないだろう…。

BrassBandの練習場所は、少し特殊だ。専用のパソコンを開き、ヘッドホンを装着すると、仮想世界、sparkling morningに通じる。ここでは視覚、聴覚、触覚が仮想世界に移り変わり、吹いた感覚、音は感じられるが、実際はその場から動いておらず、ただ動画を楽しんでいるようにしか見えないという優れものだ。

(まあ、一応トランペットなんだし…聞いてみるか。)

たしかトランペットパートは3階のつきあたりの教室…だよね。

「…美希ちゃーん?…いる?」

「あ、部長、こんにちは!…先輩なら、さっきどこかに…」

「あ、そう…。うん。わかった。ありがとう。」

えー…いないのかぁ…めんどぉ…

(…歩いて探すかぁ)

「ホルン、美希知らなーい?」

「知りませーん」

「フルートぉ、美希知らない?」

「…わかりませんねぇ…」

「クラリネット?美希知らない?」

「ちょっと見てませんねぇ。」

「美希知らない?」「うーん…」

「美希見てない?」「見てないなぁ…」


(ぜんっぜんいない…疲れた…。いったん自分のパートもどろ。)

ガチャ

「ただいま…。疲れた…。…え?」

「あ、ここちゃーん!!いたぁー!ずっと探してんだよ?」

…それはこっちのセリフ…

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