第18話 目的地
そう言うと、彼は照れたように笑い、気にしないでくれ、と言ってくれました。
そんな彼の優しさに感謝しつつ、今後について話し合いました。
まず、私たちが、元の世界に戻る方法について、話し合った結果、
やはり、現状では難しいということが分かりました。
というのも、この世界に来る際に使用したゲートキーと呼ばれる魔道具は、
すでに壊れてしまっているからです。
つまり、帰る手段がないということです。
それを聞かされた時は、目の前が真っ暗になりました。
絶望に打ちひしがれそうになったその時、グレオスハルト様が提案してくれました。
何でも、私たちの世界に繋がるゲートがあるかもしれない場所を知っているそうです。
その場所の名は、"果てなき旅路"、この世界における最果ての地と呼ばれている場所です。
そこは、常に荒れ狂う嵐によって守られており、普通の人間では近づくことすらできないと言われています。
また、そこには、強力な力を持つドラゴンが生息しており、近づくものを容赦なく攻撃してくるのだそうです。
ちなみに、この世界の人々は、その場所のことを"死の世界"と呼んでいるとか、
ともかく、そんなところに行くなんて、自殺行為としか思えません。
けれど、他に選択肢はありません、こうなったら、行くしかありません、
覚悟を、決めるしか、ありません、 というわけで、早速、出発準備に取りかかることにしました。
まずは、装備の確認、特に、武器に関しては、念入りにチェックします。
次に、食料の確保、これも、かなり重要になってきます。
特に、水の確保が難しいため、多めに持っていった方がいいでしょう。
最後に、回復アイテム、万が一、怪我をした場合に備えて、必要最低限のものを用意しておきます。
最後に、忘れてはならないのが、通信機器、これがあれば、いつでも連絡を取ることができます。
もちろん、通信魔道具なども持っていくつもりです。
他にも、思いつく限りのものをバッグに詰め込んでいきます。
こうして、準備が整ったところで、いよいよ出発の時を迎えました。
見送りに来た人々の中に、妹の姿を見つけ、声をかけます。
ありがとう、必ず帰ってくるからね、約束だよ、 そう言って、
小指を差し出すと、妹も同じ様に、自分の小指を絡めてきました。
指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った、
これで、大丈夫、必ず帰ってこられる、信じてるよ、
そうして、妹と別れた後、私は、グレオスハルト様と共に、 一路、目的地へと向かいました。
道中、モンスターとの戦闘はあったものの、無事に目的の地へと到着することができました。
そこは、辺り一面、何もない荒野のような場所で、
まさに、不毛の地と呼ぶに相応しい場所です。
ただ、一点だけを除いて、他は全て同じような景色が続いているだけなので、方向感覚が麻痺してしまいそうです。
そんな中、私たちは、黙々と歩き続けました。
どれくらい歩いたでしょうか、まだ先は長そうです。
そう思っていた矢先、前方に何かが見えてきました。
近づいてみると、大きな門のようなものが現れました。
どうやら、ここが終着点のようです。
やっと着いた、そう思うと、一気に疲労感が押し寄せてきて、思わず座り込んでしまいました。
グレオスハルト様も、同じ様に疲れた表情をしています。
二人揃って、深いため息が出てしまうほどでした。
けれど、いつまでも休んでいる訳にはいきません。
立ち上がると、目の前にある巨大な門を見つめ、気合いを入れ直します。
そして、意を決して、その扉を開きました。
中へ入ると、そこには、広大な空間が広がっており、
奥のほうには、祭壇のようなものが見えます。
おそらくは、あそこへ行く必要があるのでしょう。
そう判断した私たちは、祭壇の方へと進んでいきました。
階段を上り、近くまで行くと、そこには、一体の石像がありました。
よく見ると、翼が生えており、鳥の姿をしているようです。
さらに、その頭上には、光輝くリングのようなものがあります。
それを見て、私は確信しました。
これこそ、私たちが探していたものだということを。
ならば、やることは一つ、さっそく、試してみることにしましょう。
まず、石像の前に跪くと、祈りを捧げ始めます。
そうすると、突然、頭の中に、言葉が浮かんできました。
"汝、我と契約を望むか? " それに対し、迷わず答えます。
はい、望むところです、お願いします、
すると、頭の中の声が、さらに続けて、"ならば、我が名を呼べ、
さすれば、契約は成立するであろう"、そう言われたので、言われた通り、その名を呼びます。
突然、目の前に魔法陣が出現し、輝きを放ち始めました。
あまりの眩しさに、目を開けていられません、
やがて、光が収まる頃には、目の前に、人の姿をした何かが現れていました。
その姿は、人間に近い姿をしていましたが、
肌の色は灰色、髪は白、瞳は青、といった具合で、
明らかに、普通の存在ではないことだけは、一目見ただけで分かりました。
それに、何よりの特徴は、背中に生えた、大きな翼でしょう、
まるで、天使のような姿、それでいて、どこか神々しさを感じさせる、
そんな不思議な雰囲気を漂わせている、そんな人(?)でした。
その人は、ゆっくりと目を開けると、こちらを見たまま、動きを止めました。
どうやら、驚いている様子、というより、戸惑っていらっしゃるような感じです。
無理もない話ですが、初対面の人間がいるのですから、当然の反応と言えるでしょう。
とはいえ、このまま黙っているわけにもいかないので、とりあえず、話しかけてみることにしました。
「こんにちは、私は、リアンシューベレナといいます、
あなたはどちらさまですか?」
なるべく丁寧に話すように心がけながら話しかけましたが、
それでも、緊張してしまう自分がいます。
しかし、それも無理のないことだと考え、我慢することにしました。
それより、今は、この方のことが知りたいという気持ちの方が勝っているくらいですし、
その気持ちを抑えることは難しいものです。
なので、思い切って質問をぶつけてみることにしました。
果たして、結果はどうなるのでしょうか、少しドキドキしながら、彼女の言葉を待ちます。
しばらくして、ようやく、反応が返ってきました。
ただし、それは、期待していたものとは大きくかけ離れたものでした。
予想していなかった答えを突きつけられ、困惑せずにはいられませんでした。
どうしてそんなことになってしまったのか、疑問が残るばかりですが、
それは仕方のないことだと思われます。
なぜなら、どう考えても納得できるはずがありませんから。
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