第15話 戦闘
というのも、先ほどの戦いの最中、どうしても腑に落ちない点があったからです。
それは、カレルさんのことについてです。
実は、ここに来るまでの間、何度か話しかけようとしたのですが、
その度にタイミング悪く邪魔が入ってしまい、結局、聞けずじまいのままここまで来てしまったんです。
まぁ、今更気にしても仕方がないことだとはわかっているんですけど、
それでもやっぱり気になってしまうものは仕方がないというかなんというか、
そんな感じで悶々としている内に、時間は過ぎていきました。
そして、ようやく落ち着きを取り戻した頃、ようやく話ができる状態になったのです。
よし、今度こそ聞いてみよう、そう思い口を開きかけたその瞬間、またしても邪魔が入りました。
なんと、向こうからこちらに向かってくる人影が見えたのです。
それも複数、まずい、このままだと挟み撃ちにされてしまいます。
慌てて逃げようとする私達の前に、立ち塞がる存在がありました。
それは、盗賊達のリーダー格と思われる男でした。
男は、不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ています。
まるで、獲物を見つけた獣のような目つき、
その視線だけで背筋が凍り付くような感覚に襲われ、恐怖心が込み上げてきました。
しかし、私は複数のスキルと最強という称号の持ち主ですから、
このまま抵抗しようと思います。
覚悟を決め、拳を握りしめ、相手に向かって構えを取ります。
一方、相手の方も、剣を抜いて臨戦態勢に入っています。
さぁ、いよいよ戦いが始まります。
先に動いたのは、私の方でした。
素早く踏み込み、渾身の一撃を叩き込むつもりでしたが、簡単に避けられてしまいました。
それどころか、逆に隙だらけになってしまったところを狙われ、危うく斬られるところでした。
間一髪、避けることができたものの、次はありません。
次に同じ攻撃をすれば、間違いなく当たってしまうでしょう。
そうなれば、致命傷は免れません。
どうすれば、この状況を打開することができるのか、
必死に考えを巡らせていると、ふと、ある一つの案が浮かび上がりました。
それは、あまりにも危険すぎる賭けではありましたが、
現状では、これしか方法はありません。
やるしかない、覚悟を決め、実行に移すことにしました。
まず、周囲を見渡し、利用できるものがないか確認します。
近くに転がっている小石を発見し、拾い上げます。
それを相手に見せつけるように掲げた後、全力で投げつけました。
相手は、咄嵯に身をかわそうとしたものの、
わずかに間に合わず、左肩に命中してしまいました。
それにより、一瞬、動きが鈍った隙を狙って、
一気に間合いを詰め、腹部に蹴りを入れ、吹き飛ばします。
その衝撃で、相手は地面に叩きつけられ、うめき声を上げました。
今がチャンスとばかりに追撃を仕掛けようとした。
その時、後ろから別の敵が現れ、襲いかかってきました。
何とか反応して避けることはできたものの、体勢を崩してしまい、膝をついてしまいます。
そこへ追い打ちをかけるかのように、次々と攻撃を仕掛けてくる彼らに対し、
防戦一方になってしまいます。
反撃しようにも、なかなか機会を見出せずにいたため、次第に追い詰められていく一方でした。
そんな私はスキルを発動するために、目を閉じ、意識を集中します。
次の瞬間、視界が真っ白になり、辺り一面、光に包まれていき、
やがて、それが収まる頃には、目の前には、巨大な扉が出現していました。
急いで、中へと入り、扉を閉めると、ようやく一息つくことができました。
これで一安心と思った矢先、扉が勢いよく開き、そこから、一人の男が現れたのです。
その男は、全身が鎧で覆われており、手には、大きな槍を持っていました。
どう見ても友好的とは思えない雰囲気を漂わせていたため、
すぐに戦闘態勢に入ろうとしたのですが、なぜか、身体が思うように動きません。
それどころか、立っていることすらままならない状態でした。
どうして、こんなことになっているのだろう、
全く理解できないまま、呆然としていると、その男が話しかけてきました。
どうやら、私に話があるらしいのです。
正直、嫌な予感しかしませんでしたが、
無視するわけにもいかなかったので、とりあえず耳を傾けてみることにしました。
そうすると、男はとんでもないことを言い出したのです。
何でも、自分は魔王軍の幹部の一人なのだとか、
しかも、その中でもかなり上位に位置する実力を持っているらしいのです。
それを聞いて、思わず耳を疑ってしまいました。
何故なら、目の前にいる人物は、どこからどう見ても普通の人間にしか見えなかったからです。
しかし、その直後、信じられない光景を目にすることとなりました。
なんと、男の背中から黒い翼が生えてきたのです。
しかも、それだけではありません、お尻の部分からは尻尾まで生えてきたではありませんか、
その姿はまさに悪魔そのものといった様子でした。
「私は最強よ、戦うの?」
「ああ、勿論だ、貴様を倒し、その力を奪う為にやってきたのだ」
そう言うと、いきなり飛びかかってきた。
速い、避けられない、咄嗟に防御姿勢を取るものの、
呆気なく吹き飛ばされてしまう、そのまま壁に激突してしまう、
痛みに耐えきれず、意識を失いそうになった。
だが、ギリギリのところで耐え抜いた。
まだ戦える、立ち上がろうとした瞬間、今度は尻尾を使って攻撃してきた。
何とか回避したものの、続けて放たれた回し蹴りを避けきれず、まともに受けてしまった。
あまりの衝撃に、骨が何本か折れてしまったようだ。
もはや立ち上がることすら困難、万事休すかと思われたその時、頭の中に声が響いた。
その声は、紛れもなく自分自身のもの、だけど、どこか違うような感じがする、不思議な感覚を覚えた。
その声に導かれるままに立ち上がると、全身に力が漲ってくるのを感じた。
今なら勝てるかもしれない、そんな気がした。
だから、迷わず突撃することにした。
一直線に駆け抜けていき、相手の懐に飛び込んだ。
そして、思いっきり拳を突き出す。
そうすると、見事にヒットしたのか、相手はよろめいた。
すかさず、連続で攻撃を加える、最初は戸惑っていたようだったが、
次第に慣れてきて、最終的には、こちらが押していた。
最後は、渾身の力を込めて殴り飛ばす。
そうすると、相手は壁を突き破り、外に放り出されていった。
やった、勝ったんだ、喜びに浸っている暇もなく、すぐに後を追いかける。
外に出ると、そこには、満身創痍ながらも、かろうじて生きている状態の彼がいた。
それを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
それから、すぐに駆け寄って抱き起す。
息はあるようだが、意識が朦朧としているようだ。
このままじゃ危ない、早く治療しないと、 そう思って、自分の服を破り、
包帯代わりに巻いてあげた。
応急処置が終わると、彼を抱きかかえたまま、家路についた。
無事に戻ってきた私達を見て、両親は驚いていたけど、
事情を話すと納得してくれたみたいで、特に詮索されることはなかった。
むしろ、心配されてしまったくらいである。
その後は、彼の看病をしながら、付きっきりで過ごした。
と言っても、大したことはできないんだけどね、
せいぜい、汗を拭いてあげるくらいだし、
後は、時々、声をかけてあげるぐらいかな、
それでも、少しずつ回復に向かっているみたいで、顔色が良くなっていたように思う。
おかげで、数日後には、すっかり元気になっていた。
ただ、一つだけ気になることがあった。
それは、あの時のことについて覚えていないということだった。
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