第9話 彼の事を愛している私
とにかく今は一刻も早く問題を解決しなければという思いが強くなりましたので、
急いで対策を考え始めることにしました。
まずは原因を突き止めるところから始めなければならないのですが、今のところ何もわかっていません。
そうなると手がかりになるのは目撃証言くらいしかありませんよね?
なので、とりあえずそれらしい情報を求めて聞き込みを開始することにしました。
その結果わかったことといえば、噂程度のものでしかありませんでしたが、
一応収穫はあったと言えなくもないので良しとしましょう。
そんなわけで一旦調査を打ち切って屋敷に帰ってきたのですが、
そこで新たな情報が飛び込んできたのです。
なんと隣国が我が国に対して宣戦布告を行ったというではありませんか!?
これには驚きましたが、同時に納得もしました。
何しろ、ここ最近の行動を見ていると怪しすぎる部分が多々見受けられましたから。
もしかすると何か企んでいるのではないかと思っていましたが、予想通りだったようです。
しかし、困ったことになりました。
これではいつ攻め込まれてもおかしくない状況になってしまいました。
どうすればいいのでしょうか?
途方に暮れていたその時、ふと頭の中に浮かんだ考えがあります。
それはあまりにも危険な賭けではありましたが、
今の私にとってはそれ以外に選択肢はないように思えたため、
思い切って実行に移すことにしました。
そしてついに迎えた当日、私たちは指定された場所に向かいました。
そこは国境付近の荒野で、周囲には人の気配は全くありません。
そこにやってきた人物こそまさに私が待ち望んでいた相手でした。
彼こそが今回の騒動を引き起こした張本人なのです。
私は怒りに打ち震えながら彼を睨みつけました。
そうすると向こうも同じような表情をしてこちらを睨んできます。
お互いに一歩も引かない状態が続いた後、最初に口を開いたのは彼の方でした。
その言葉を聞いた瞬間、全身の血が沸騰するかと思うくらいの衝撃が走りました。
何故なら、それが事実だとしたら到底許すことなどできない内容だったからです。
だからこそ私は意を決して反論することにしました。
相手は鼻で笑いながら言い返してきました。
その態度を見た瞬間、頭の中で何かが切れる音が聞こえました。
それからはもう自分でも何を言っているのかわからないくらいに怒鳴り散らしていました。
やがて冷静さを取り戻した頃にはすっかり疲弊しきっていましたが、まだ終わりではありません。
次なる手段に出るべく準備を始めていると、急に目の前が真っ暗になり意識が遠のいていく感覚に陥ります。
どうやら薬のようなものを使われたみたいです。
薄れゆく意識の中で最後に見たものは不気味な笑みを浮かべる彼の顔でした。
ああ、私はここで死ぬのか──そう思った瞬間、誰かが私を抱きかかえてくれた気がしました。
誰だろうと思って薄っすらと目を開けると、そこにいたのはグレオスハルト様でした。
助けに来てくださったんだと思ったら涙が溢れてきました。
そんな私を見て彼は微笑みながら言いました。
(大丈夫ですよ)
と言ってくれたことで安心感が生まれ、一気に緊張の糸が切れたようでその場で気を失ってしまったのでした……。
次に目を覚ました時にはベッドの上だったので一瞬混乱してしまいましたが、
傍らには心配そうに見つめるグレオスハルト様の姿がありました。
その様子を見た途端、再び泣き出しそうになる気持ちをぐっと堪えつつ、必死に笑顔を作りました。
それを見た彼もまた笑顔を返してくれたのでとても嬉しかったです。
その後、お互いの無事を確かめ合うかのように抱きしめ合いました。
しばらくの間そうして抱き合っていたのですが、
いつまでもこうしてはいられないと気づき名残惜しい気持ちを抑えて離れることにしました。
それから今後について話し合うことにしました。
まず第一の目的であった戦争を回避することはできたものの、
根本的な問題解決には至っていないので、これからも行動を共にしていくことを提案されましたので、
喜んで受け入れることにしました。
当面の間はこの国に留まることにして、情報を集めたり他国へ使者を出したりするなどの活動を始めることを決めました。
そうして二人で協力しながら頑張っていくことにしました。
これからどんな困難が待ち受けているのかわかりませんが、彼となら乗り越えられると確信していますから!
数日後、私たちは無事に帰還することができました。
もちろん、隣にはグレオスハルト様がいてくれます。
帰り道の途中では特にトラブルもなく、順調に進んでいきました。
途中で野営をしたり休憩したりしながらもひたすら歩き続け、
ようやく見慣れた風景が見えてきました。
ここまで来ればあと少しだと思いながら、足取りも軽く帰路につきました。
そして遂に我が家に到着することができたのです。
早速中へ入ると、お父様たちが出迎えてくれました。
彼らは私の顔を見ると安心したように胸を撫で下ろし、無事で良かったと言って抱きしめてくれたのです。
私もそれに応えるように抱き返しました。
その後は皆で食事をとり、疲れを癒やすために早めに寝ることにしました。
翌日からは色々な手続きを済ませるために奔走することになります。
まずは王様への報告を済ませた後、お父様から説明を受け、
私とグレオスハルト様は正式に婚約することになったのです。
「これで名実ともに貴女は私の婚約者となったわけだ」
そう言われた時はとても嬉しかったです。
それと同時にこれからはもっと頑張らなければという気持ちになりました。
だって、大好きな人とずっと一緒にいられるんですから幸せ以外の何物でもないでしょう?
だからもっともっと努力を重ねなければなりません。
そしていずれはお母様のような立派な王妃になるというのが私の目標の一つです。
そのための勉強も怠らないようにしなければいけません。
そのためにもより一層励まなくてはいけません。
そう決意を新たにしていると、グレオスハルト様が話しかけてきました。
「どうかしましたか?」
と聞かれたので、考えていたことを伝えると、彼は微笑んでくれました。
その表情を見ているだけで心が安らぐような気がして、思わず見惚れてしまいそうになります。
今度は彼が質問を投げかけてきたので、それに答えます。
そうすると、何故か黙り込んでしまったのです。
どうしたのかなと思っていたら、突然抱きしめられてしまいました。
突然のことに驚いてしまい、声も出せませんでしたが、
不思議と嫌な感じはせず、むしろ心地良いと思いました。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていました。
翌朝、目が覚めると、目の前に彼の顔があって驚きました。
しかも、お互い素肌のまま抱き合って寝ていたのですから尚更です。
昨夜のことを思い出して顔が熱くなってきましたが、同時に幸せな気分にも包まれていました。
グレオスハルト様の温もりを感じながら幸せな気分に浸っていると、不意に名前を呼ばれました。
振り向くと、そこには彼の顔がありました。
どうやら起きていたようです。
目が合うと微笑みかけられたので、こちらも微笑み返しました。
そうすると、突然口づけされてしまいました。
びっくりして固まっていると、舌を入れられてしまいました。
戸惑いながらも受け入れていると、しばらくして解放されました。
ハァハァと荒い呼吸を繰り返していると、彼が耳元で囁いてきました。
(おはようございます)
と言われ、ドキッとしてしまいました。
恥ずかしさのあまり顔を背けようとすると、顎を掴まれて正面を向かされてしまいました。
そのままじっと見つめられていると、なんだか変な気分になってきてしまいました。
頬が熱くなるのを感じつつも、目を逸らすことができません。
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