第6話 私と彼のお時間
「よし、いい子だ」
そう言って褒めてくれたグレオスハルト様に頭を撫でられると嬉しくなってしまいます。
「ありがとうございます」
そう言って頭を下げると、今度は耳元に口を寄せて囁くように言いました。
それを聞いた瞬間、心臓が大きく跳ね上がったのを感じました。
それはつまり、私がグレオスハルト様のことを異性として意識しているということを
暗に示しているということでもありますよね?
そう思うと恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまいました。
そんな私の様子を察してか、それとも偶然かはわかりませんが、
グレオスハルト様の手が私の頬に触れた瞬間、ピクッと反応してしまったのです。
そしてそのまま優しく撫でられた後にゆっくりと離れていく指先を見つめていると、名残惜しさを感じてしまいました。
もっと触れて欲しいと思ってしまいますが、さすがにこれ以上を求める勇気はありませんので我慢することにしました。
それからしばらく沈黙が続いた後、不意にグレオスハルト様が口を開きます。
「リアンシューベレナ、俺とキスしようか」
そう言われた瞬間、心臓が大きく跳ね上がりました。
そして同時に顔が熱くなるのを感じていましたので、きっと赤くなっていたと思います。
それでもなんとか平静を装って答えようとしましたけれど上手くいきませんでして、
つい噛んでしまいました。
ああもう恥ずかしいですわ!
でも仕方がありませんわよね?
だって好きな人とキスできるんですもの、嬉しくないはずありません。
だから私は思い切って行動に移すことにいたしました。
グレオスハルト様の首の後ろに手を回して抱きつくようにしながら顔を近づけていきます。
最初は軽く触れるだけの口づけでしたが、徐々に深いものに変わっていきました。
お互いの唾液を交換し合うかのように何度も繰り返していくうちに、
頭の中が真っ白になっていって何も考えられなくなってしまいます。
ただ目の前にいる彼のことしか考えられなくて、もっと欲しいと思ってしまう自分がいて、
それがとても幸せだと感じていました。
そうしてしばらくの間お互いを求め合っておりましたが、
さすがに息が苦しくなってきたため一旦離れることとなりましたが、
「もっと、したいです」
そう言うとグレオスハルト様は微笑みながら答えてくれました。
「ああ、そうだな」
そう言って再び口づけを交わすことになりましたが、今度は先程よりも長く濃厚なものでした。
何度も角度を変えながら繰り返していくうちに段々と思考が蕩けていくような感覚を覚え始めていましたので、
もう限界が近いことを察しました。
なので最後に思い切り吸い上げてから離すと、二人の間に銀色の橋がかかるほどの
激しいものでしたので自分でも驚いてしまいました。
でもそれ以上に嬉しさの方が勝っていたのですけれどもね?
だって好きな人とするキスというのはこんなにも幸せな気持ちになるものなんですわね?
もっと早く知りたかったという気持ちもあるのですけれど、
今となってはもう遅いことですし今更後悔しても遅いことくらい理解していますので諦めます。
ですから今はただこの幸せな時間を存分に味わいたいと思うのです。
「グレオスハルト様、大好きです」
そう言って微笑みかけると、彼もまた笑顔を見せてくれたのです。
「それよりも何処かへ行きたい所はあるか?」
「そうですね、海に行きたいです」
「分かった、じゃあ行こうか」
そう言って歩き出すグレオスハルト様についていく形でついていきますと、
途中何度も立ち止まりそうになっていましたが、
その度に振り返って待ってくれるので安心して歩くことができました。
それからしばらく歩いたところでようやく目的地に到着しました。
そこは砂浜になっており、目の前に広がる青い海に目を奪われてしまいます。
潮風の匂いを感じながら深呼吸をしていると、不意に肩を叩かれて振り向くと
そこに立っていたグレオスハルト様が手を差し伸べてきたので、その手を掴むことにしました。
そのまま手を引かれる形で波打ち際まで歩いていくと靴を脱いで裸足になり、
ゆっくりと足先を海水に浸けていきます。
ひんやりとした感触がとても心地よく感じますし、
何より開放的な気分になることができました。
ついはしゃいでしまいそうになりましたけれど我慢することにいたしました。
だってせっかくのデートなんですもの、楽しまないと損というものでしょう?
それにグレオスハルト様も一緒ですから寂しくありませんものね?
だから思う存分楽しむことに決めました。
「グレオスハルト様、早く行きましょう!」
そう言って彼の手を取ると引っ張っていく形で歩き始めました。最初は戸惑っていた様子でしたがすぐに笑顔になってくれましたので、私も嬉しくなってしまいました。
それからしばらくの間、私たちは波打ち際で遊んだり、砂浜を散歩したりして過ごしましたが、
それでも時間が経つのはとても早く感じてしまいました。
でもそれだけ楽しかったということですし、
何より好きな人と一緒ならどんなことでも楽しく感じるものなんだということを改めて実感しました。
だから私はこれからもずっと彼と一緒に居たいと思っていますし、
その為にも努力を怠らないつもりです。
だって彼との未来のためにも、 もっと自分を磨いていかなければならないのですから。
だから私はこれからも頑張っていくつもりです。
「それではそろそろ帰りましょうか?」
そう問いかけると、グレオスハルト様は少し寂しそうな表情を見せましたが、
すぐに笑顔に戻って頷いてくださいましたので安心しました。
それから私たちは帰り支度を始めましたけれど、
その前にもう一度だけ海を見ておこうと思い立ち、
二人で並んで座りながら水平線の彼方に沈んでいく夕日を眺めておりました。
その美しい光景に見惚れていると不意にグレオスハルト様の手が私の手に触れてきたのです。
驚いて隣を向くと、そこには真剣な表情の彼がいましたので、
私もそれに応えるように手を握り返しました。
そうすると彼は優しく微笑んでくださったのですけれど、
それがとても嬉しかったのです。
ですから私も精一杯の笑顔で応えようと頑張りました。
そしてそのまま自然と顔が近づいていくにつれて鼓動が激しくなっていきましたが、
不思議と嫌な気持ちはありませんでしたしむしろ幸せな気分に浸っていたくらいです。
やがて唇が触れ合うと同時に、ゆっくりと瞼を閉じます。
しばらくの間、そのままの状態でいるつもりだったのですけれど、
途中で息苦しくなってきたので一旦離れて呼吸を整えた後、再び口づけを交わしました。
それから何度か繰り返しているうちに段々とエスカレートしていき、
最終的にはお互いの舌を絡め合うような濃厚なものへと変わっていったのですけれど、
不思議と不快感はなかったのです。
むしろ心地良さすら感じていましたから不思議ですよね?
その後もしばらく続いた後ようやく満足したのか、
どちらからともなく口を離すことになりましたが、
その時には既に身体に力が入らなくなってしまっていて
立っていることすらままならない状態でしたのでグレオスハルト様に寄りかかるような格好になってしまいました。
でも、そんな私のことを優しく受け止めてくださったおかげで倒れることもなく済みましたが、
その代わりにますます密着することになってしまいました。
そのせいでしょうか、体中が熱くて仕方がありませんので少し離れようとしたのですが、
逆に強く抱き寄せられてしまいまして身動きが取れなくなってしまいましたので諦めざるを得ませんでしたのです。
「グレオスハルト様、お慕いしていますわ」
そう言って私からも抱きつきましたけれど、
グレオスハルト様は私の首筋に顔を埋めたまま動かなくなってしまいました。
その代わりなのかわかりませんが、身体の方は小刻みに震えていたようでした。
どうしたのでしょう?
不思議に思って問いかけようとしたところで不意に顔を上げてきましたので、その表情を見て驚きました。
何故なら彼の顔は真っ赤になっていて、しかも目が潤んでいたのですもの!
これはもしかして風邪を引いてしまったのでしょうか?
心配になってきましたがとりあえず休ませた方が良さそうだと思い、
急いで屋敷に戻ることにしたのですけれど、その間ずっと手を握られたままでしたから、きっと寂しかったのでしょう。
本当に可愛らしいお方ですこと。
そんなことを考えつつ歩いているうちに屋敷に到着しまして中に入ると、すぐに寝室に向かいました。
そしてベッドに寝かせた後、水差しを用意して持っていき飲ませてあげましたら少し落ち着いたようでしたので一安心しました。
それからしばらくして眠りに就いたのを確認した後、私も自室に戻り休むことにいたしました。
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