第7話 お試し同棲3日目(泣かれた話)

泣かれた日が正確に同棲3日目だったかどうかは、もはや定かではない。


土曜日の昼食つくりは私が担当であるため、台所に立っていた。確か焼きそばがリクエストであったため、それに応じていた。

少し後ろからいんちょさんが話しかけてきた。内容はいんちょさんの友達の話で、確実に他愛もない内容だった。

途中、登場人物といんちょさんとの関係性が分からなかったので、何関係の人なの?と聞いたら、以前話したコレコレの人だよと答えた。

そして、「何も憶えていないね」とポツリと呟かれた。

これは男女間ではアルアルの流れなのでは思う。実はいんちょさんには以前にも別件で同じ事を一度言われて、今回が2回目だった。正直、1回目の時もこの呟きが引っかかった。

私は、ゴメンネと謝り、続きを促した。

いんちょさんは、じゃあ、アレコレは憶えてる?と質問し始めた。次の質問は憶えていたため返答すると、更に別の質問が重ねられた。

少しの間があり、私はその質問には答えず、「そうやってクイズをだして私を試すつもりなら、もういんちょさんの話は聞きたくないよ。だってそのうち必ず間違ったり、答えられなかったりするからね」と返した。

もちろん私は、強くそう思って返したわけではない。

その後、その場は有耶無耶になり終わってしまった。


夕方になり、これまでの様子とは違っていたので、怒ってるの?と聞いたが、首を横に振っただけだった。


夜、いつものように寝ようとしていると、いんちょさんが近づき、私の布団に入ってきた。

いんちょさんに話しかけても反応が悪く、私がいんちょさん側に顔を向けると、いんちょさんは逆側に身体を向けてしまった。

この時点で、やはり様子が変だと確信し、理由を聞くことにした。

話してくれるまで、中々大変であったが要約すると、「話を聞きたくない」との発言が嫌だったそうだ。そうやってコミュニケーションを絶たれることは絶対にしてほしくないとの事だった。

その時、少しだけだけど、泣かれた。

後日、自分でも泣くとは思わなかったと言っていた。

私は、もうそういう事は言わないようにするねと謝って、その後は自然といつもの流れとなった。


私はそんなことは言わないように気をつけるけれども、いんちょさんは私に対して、憶えてないねとか、前にも言ったという事は言い続けるのだろうなと思った。

そんな事はとても言えない。

こうやって、世の夫は徐々に自分からなるべく話さないようにして、上述の様なことを言われることを必死に回避することで、最終的にはありがちな無口なお父さんが完成されるのだろうと思った。

これはほぼ間違いないと確信している。

世の夫だけが孤独であると言うつもりはないが、世の夫の孤独さが少し想像できた。


今後はより簡単な文章で淡々と、箇条書きになるくらいな文章にしよう。


















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