3枚目 それは、最悪の『出会い』から

『港が見える展望公園』

かつては戦後の疲弊した町に多くの物資を届け、町の復興に役立ち、現在はサンマや鰹などといった魚介類の水揚げ量が県内トップになり、大型旅客船も停泊する国際ターミナル港、三浜みはま港を望む三浜公園。春には桜の名所、夏は大型ライブステージでのイベント、秋には大漁祭り、冬は初日の出の絶景。春夏秋冬、多くの人が集まり楽しめる憩いの公園となっているが本日は平日の昼間。それに六月の中頃ということもあり今の時間は健康体操をしているご老人たちしか見当たらない。そんな所に私もいるというのは何だか可笑しな光景だ。成人男性が仕事もせずに公園にいる。そうしたらニートだと思われても仕方がない。ただ、家に居ると父の事を思い出すので居たくないのだ。だから、何言われても良い覚悟でここにいる。先程、ハローワークに行ったもののこれといった収穫が無かった。それどころか、もう募集は終わりつつになりますと職員から言われたときのショックはとてつもなかった。このまま帰っても母には心配され、夜には父に罵倒される。

「……やっぱり、帰って来るんじゃなかった。」

こんな人生、もう嫌になってくる。憧れの東京で挫折し、その傷をつけたまま故郷に戻ってもその故郷には夢は無い。生きるためにもがこうとしても、すがるものは無い。グシャグシャと髪を掻く。その右手には絡まった髪の毛が数本、抜けるべくして抜けた髪の毛が数本、呆然と残った髪の毛が数本。それを空に投げる。因縁めいた何かから解放されたい思いも込めて。

「……ストレスか。」

口には出したくないのでそういうことにした。穏やかな初夏の風は夏の始まりを予感させている。ただ、それは私にとってはもう夏になってしまうという焦りを感じさせるものになっている。

「とにかく、早く仕事を見つけないとな。このままだと生きていくのも大変になる。」

立ち上がり、尻についた土や草花をパシパシと払う。さてと帰ろう、と思いながら後ろを振り返った時だった。

「う、うひゃぁぁぁぁぁ~~~!!!」

という驚きにも似た悲鳴が丘の上から聞こえてくる。視線を向けると丘をゴロンゴロンと体を横にした人物が転がってくる、……転がってくる!?

「と、止まって~~~!!!……というか誰か止めて~~~!!!」

何が何だかわからないが、その物体……もといその人物は真っ直ぐに私に向かってきている。先程のご老人たちも健康体操を終えて何処かに行ってしまい、周りを見ても近くには私以外誰もいない。

(……マジかよ。)

止めるといっても成人男性一人では、というよりかは例え私が三人いてもあの丘の上からハイスピードで転がる物体(?)には太刀打ちできない。ボウリングのピンのように弾けるだろう。……しかし、

「……ええぃ!!ままよ!!!」

考えても結果は出ない、ならばと大怪我覚悟で膝をつき、両手を広げる。そして顔を上げたときには……

「「……あ。」」


ゴチーン、と豪快な音が公園内にこだました。

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