第4話 ひょっとしてテイムイベントか?
モンクエはフィールド画面上に点在するモンスターとそのまま戦闘するシームレスなシステムではなく昔ながらの移動画面から戦闘画面にランダムエンカウント採用されていた。
そのためテイムできる仲間モンスターとシンボルエンカウントするボス以外は戦闘中の立ち絵しか存在していない。
それもあってレッサーオーガのようにフィールドのグラフィックが存在していないモンスター達がどのくらいのサイズなのかは知らなかった。
「まあ、想像通りと言えば想像通りだけどこの体格はマジでヤバい……」
レッサーオーガは三メートル近い体格をしており手に持っている棍棒は俺の身長と同じくらいあるため今の俺がまともに戦っても勝てそうなビジョンが全く見えない。間合いに入ってあんな物で殴られたら多分死ぬと思う。
ちなみにゲームでは最大五体同時に出現する事があったので今回現れたのが一体だけというのは本当に不幸中の幸いだ。
一瞬補助魔法を使って防御力を上げる事も考えたが多分それがあまり意味をなさないくらい攻撃力が高い事は容易に想像できたため辞めた。
距離を保ちつつ各種攻撃魔法と補助魔法を使いながら上手く隙を突いて逃げる作戦がこの場合は最善な気がする。
「まずはこれだ、
俺は相手が動き出すよりも前に先手必勝で幻影呪文であるルッシオを唱える。ゲーム内では物理攻撃の空振り率が大幅に上がるためよく使っていた。
ちなみにルッシオは最初のボスである偽勇者レナード戦をクリアするには結構重要な補助呪文の一つだったりする。
「よし効いた、モンスターの耐性がゲーム通りとは分かってても実際に見るまではマジで怖いな」
レッサーオーガは見当違いな方向へ棍棒を振り下ろしていた。この呪文が効かなければ五体満足で逃げられる可能性は極めて低かっただろう。
だがまだ危険な状況には変わりないため油断は一切出来ない。実際レッサーオーガは見た目以上に素早いため背中を見せて逃げるのはかなりリスクがある。
「次はこいつだ、
初級氷雪呪文であるスティーをレッサーオーガの
その結果レッサーオーガは凍った地面に足を取られて尻もちをつきまともに立てなくなった。よし、完全に俺の狙い通りだ。
ゲームでは純粋にダメージを与える事しか出来ない攻撃呪文もこの世界ではこんな使い方が出来る。これは村の外に出て戦闘をしていた時に気付いた使い方だった。
俺はレッサーオーガが尻もちをついたまま見当違いな方向へ棍棒を振り回している様子を横目で見ながら全力で走り始める。
別のレッサーオーガと鉢合わせても面倒なのでエンカウントエリア漏れと思わしき川周辺からは一刻も早く離脱しなければならない。
「……とりあえずこのくらい離れれば大丈夫だろ」
しばらく全力疾走をしてから後ろを確認したが追いかけきている様子はなかった。命に関わるため今後はエンカウントエリア漏れにはマジで注意する必要がありそうだ。
それから俺は地図とコンパスで現在地を確認した後アムカラを目指して再び歩き始める。さっきの失敗を踏まえ今度は頻繁に地図とコンパスで位置を確認しながら歩いているためもう迷わないはずだ。
その後は特に大きなトラブルもなくアムカラが目視で捉えられる位置まで来た俺だったが再びイレギュラーが発生する。
「おいおい、こいつって……」
俺の前に突如現れたのはベビーメタルドラゴンというモンスターだった。ベビーメタルドラゴンやその上位種は経験値が普通のモンスターの何十倍も多いためレベル上げには非常に最適な相手だ。
だがこいつらは防御力がゲーム内最高クラスに設定されていてなおかつ物理攻撃以外は完全に無効化され、さらにすぐ逃げ出すため倒すのは結構難しい。
その上出現率も極端に低いためそもそも中々出会えないモンスターだったりする。今いるアムカラ周辺での出現率は1%くらいだったはずだし。
だから出会えれば幸運なのだがパーティの状況次第では手放しでは喜べなかったりする。なぜならドラゴンという名がついている通り普通にブレス攻撃もしてくるからだ。
「……うん、こいつは無視しよう。経験値がないこの世界でわざわざ倒すメリットなんて全くないし」
そう思ってさっさと立ち去ろうとする俺だったが何と向こうから攻撃を仕掛けてきた。体当たりしようとしてくるベビーメタルドラゴンに対して俺は咄嗟に盾でガードしながら片手直剣で斬りつける。
多分大したダメージは与えられていないだろうが多分これで逃げ出してくれるんじゃないだろうか。そんな事を思っていると向こうの様子が少しおかしい事に気付く。
さっきまではベビーメタルドラゴンから殺気を感じていたはずなのにそれが嘘のように無くなったのだ。
「ひょっとしてテイムイベントか?」
モンクエではテイム出来るモンスターを倒すと一定確率で”仲間になりたそうにこちらを見ている”というメッセージが流れる事がある。そしてベビーメタルドラゴンはテイム出来るモンスターの一匹だ。
そう思った俺はベビーメタルドラゴンにそっと手を伸ばして見る。すると特に攻撃される事もなくむしろ俺の手を舐めてきた。うん、これは間違いなくテイムイベントだ。
「確かベビーメタルドラゴンのテイム率って256分の1だったよな、変なところで運使い過ぎだろ……」
ひとまず目の前にいるベビーメタルドラゴンは俺の仲間になったらしい。
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