第4話 黒猫との別れ。

 最初に黒猫の死を発見したのは母だった。

いつもなら餌を食べる時間なのにずっと段ボール箱から出てこない。

寝ているようにしか見えなかったから、私も兄も邪魔をしないように静かに通り過ぎていた。

母が猫に触れた時も、温かくまだ生きていてもおかしくない温度だったという。しかし、一切反応しない。だから持ち上げてみた所、やはり無反応で、とても軽かったらしい。

 その話を聞いた時、私の脳裏に浮かんだのはクロが無くなる前に私に見せてくれた笑顔だった。

いつも通りに膝にのせて、毎回クロは私の顔を見ながら撫でて欲しそうに膝に乗るから表情が全てわかるのだが、昨日のクロはとても甘えん坊で、1時間くらい撫で続けていたが、ずっとニコニコと絵文字のような顔で静かに私の手を受け入れていた。今思えば、もう悔いはないよと言っていたのかもしれない程、幸せそうな顔で。

 私はこの顔がもっと見れると思っていたから、とても悲しくなった。

結局黒猫は家猫ではなかったから、役所に連絡をして送別をし、そのまま骨を受け取る事も出来なかった。

あの時私の仕事がもっと早くに終わっていれば、間に合ったかもしれないが…、写真で見せてくれたクロの死に顔はとても優し気で、寝ているようにしか見えなかった。庭中の花を入れて、段ボールに詰めて送り出したそうだ。 それを見届けられなかった自分が悔しかった。

でももしかしたらクロは私にあの笑顔を最後に残したかったのかもしれないと思う。

都合の良い話だと思うが、もし死の前日にあんなに良い笑顔を見せてくれるモノが居たとしたら、こちらも安心してまた明日。と言ってしまうだろう。

そんな、心配をかけずに逝く方法をあの黒猫は理解していたのかもしれない。

 だから私は、猫はひっそりと死ぬという話と、隠れて死ぬという話だけは信じることができない。あの仔は、幸せそうに亡くなった記憶が猫の話題や画像を見るたびに脳裏をよぎるのだから。

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黒猫の笑顔 餅戸 @mochod

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