第2話 黒猫との接触
私が黒猫に餌をあげたのは、雪が降りそうなほど寒い夜の事だった。雨が降っており、天気予報では雪に変わるかもと言っているほどの寒空の中、寝付けなかった私はホットミルクでも飲もうと冷蔵庫を開け、電子レンジで温めていた。オート温め機能は本当に便利だと家電製品の進化に感謝しながら家の庭が見える窓を眺めていた。雪降り積もったら、大変だなぁ。職場でも雪かきやらされるのかな?と考えながら眺めていたら暗くて暫く気づかなかったが、金色の目がこちらを見ている。あ、あの黒猫だとすぐにわかった。黒猫の特徴に右足だけ白い靴下を履いているような色をしているから、すぐに分かった。でも、家に入れるのはまずいよなぁ、寒そうだけど…そうだ、夕食時に食べきれなかった焼き鮭の残りをあげてみよう。流石に人間用の味付けがされてたら体に悪いから、ぬるま湯でよく洗って、最後にお湯でほぐしたら温まるんじゃないか?
たとえそれが、一時的にしか寒さをしのげないものだとしても、私はそれを実行した。自分用に温めたミルクが猫舌の私には丁度いいぬるさになる頃に、焼き鮭は湯気を出すほどの温かさになった…多分、警戒したりしてる間に冷えて食べやすい温度になるだろうと思いながら、一応指で触り火傷しない温度である事は確認した。ついでに味見もしたが塩気は無くなっていた。これなら大丈夫だろう……というか、食べないなら黒猫も手を付けないだろうし、早く置きに行こう。
玄関のドアを開けると黒猫は逃げずにまたにゃあと鳴きまねをして、足元にすり寄ってきた。寝間着に黒い毛が大量についたが、とりあえずこの焼き鮭(湯すすぎ)を置いて様子を見よう。窓から見える位置に餌の乗った皿を置き、私は室内に戻った。のんびりぬるいミルクを啜りながら黒猫がどうするのか見ていたら、すんなりと食べ始めていた。その餌を盗るモノは居ないのに盗られないように急いで食べているように見えた。皿はとても綺麗に舐められ、ツルツルになっていた。 これは回収して洗剤で洗わないと…犬に悪いなと思いながら黒猫の食べっぷりにどこか安心している自分がいた。
再び玄関に出ると、黒猫は家に入りたそうにしていた。私がもし一人暮らしなら入れていただろうが、そもそも猫用のケージも何も用意していない。
「ごめんね、家は入っちゃだめだよ」
そう言いながら手を顔に近づけると理解したのか、ドアから離れて庭に座った。ギリギリ雨に濡れない場所。しゃがんでみて思うが、とても寒い。そうだ家には入れられないが、段ボールと湯たんぽくらいは使ってもいいだろう。そう思った私は急いで皿を回収しぬるい湯たんぽと通販で届いた小さめの段ボールにボロい布を湯たんぽで包みいれ、庭の雨がしのげるところに置いた。
「…ここならいつでも来ていいから」
そう言いながら私は家に入り黒猫の様子を見守った。
流石にダンボールと湯たんぽにタオルという雑過ぎる家はダメだろうなと思っていたら、素直にジャンプして入りそのまま出てこなかった。
もしかして関わり過ぎたかなと思いながらも眠気が来たので私も寝ることにした。翌朝、母に猫の段ボール箱と寝床の事を伝えたが、何とか許可をもらい寒い間はここで寝れるよと思いながら雨上がりの庭で伸びをする黒猫を見ていた。俗にいう庭猫という関係になったのだろう。
この黒猫が我が家の猫と認識されるまでそう時間はかからなかった。
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