番外編 彼女と友人
このまま嘘をついたままというのは悪い気がして俺は一人暮らしではなく彩花と住んでいることを雨咲さんに話した。だが、彼女は気付いていたようで……。
「この前、お邪魔したときに一人暮らしではなく、もしかしたら如月さんと住んでいるのかもしれないと思いまして……予想は正解でしたね」
別に雨咲さんに彩花と住んでいることを言わないといけないわけではないので黙っていてごめんは違う気がする。
けど、一人暮らしですよねと言われて違うと嘘をついたことは謝らなければならない。
「ごめん、一人暮らしかと聞かれたときに嘘ついた」
「謝らなくても良いのですよ。誰しも全てのことを誰かに話さなければならないわけではないてすし」
嘘をついたことに奏は怒ることなく、俺ではなく彩花の方へと視線を向けた。すると、彩花は俺の服の裾をクイクイと引っ張ってきた。彩花は俺に用があるのかと思ったが雨咲さんに話しかける。
「雨咲さん、ケーキ好きですか?」
「私ですか? 好きですよ」
「では、一緒に今からケーキを食べませんか? 匠くんと2人では余ってしまうので」
「……良いのですか? 私は邪魔者でしかないですけど」
「大丈夫です。わ、私……雨咲さんと仲良くなってみたい……です」
「……私もです。永瀬くん、いいですか?」
「構わないよ」
「では、ご一緒します」
彩花が緊張しつつ頑張っている姿を見ていると懐かしい記憶を思い出す。
(成長したな……)
***
「お邪魔します」
雨咲さんは、ペコリと一礼してから玄関で靴を脱ぎ、彩花が彼女をリビングへと案内した。
リビングへ着くと彩花はさっそくケーキの準備をする。その間、俺は3人分の紅茶を淹れた。
「永瀬くん、フォークはどこにありますか?」
「フォークはここの引き出しだよ」
「教えてくださりありがとうございます」
場所を教えると雨咲さんはその引き出しを開け、フォークを3つ取ってリビングへ戻っていった。
***
「如月さん、持ってきました」
お皿にケーキを乗せていると雨咲さんは、フォークをキッチンから3つ持って帰ってきた。
「ありがとうございます。雨咲さん」
「……如月さん。同い年ですし、敬語でなくても良いのですよ?」
「……癖、なので……。ですが、雨咲さんがそう言うなら少しだけ言葉を和らかくしますね」
ケーキの準備ができると俺は、3つのティーカップをトレーに乗せてテーブルへと持って行った。
「2人とも用意ありがとう」
「いえ、永瀬くんも紅茶の用意、ありがとうございます」
「じゃあ、食べよっか」
「「「いただきます」」」
ケーキを一口食べると口の中に甘い香りが広がっていき、幸せな気持ちになった。
やっぱり甘いものは人を幸せにするためにあるものだな。
「美味しいです、如月さん」
「ふふっ、それは良かったです。匠くんはどうですか? 美味しかったですか?」
彩花にそう聞かれて俺は首を縦に振って頷いた。
「うん、美味しいよ。甘くて」
「! 良かった……です」
嬉しそうに微笑む彩花の笑顔は、まるで天使のようで可愛らしかった。
【完結】5年振りに再会した幼馴染みとの生活は甘すぎる 柊なのは @aoihoshi310
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