第25話 明けましておめでとうと危険な夜
朝、目が覚めると両腕に姉である葉月と彩花の2人になぜか抱きつかれていた。
「葉月も彩花も起きてくれ……」
身動きが取れない状態なので声をかけて起こすしかない。本当は体をゆさゆさと揺らして起こしたいが。
「た~く~み~、もうちょっとだけ」
「何が!?」
隣を見ると葉月は目を閉じながら何か言ってる。多分、寝ぼけているんだろう。
「たく、そういうのはまだ……」
「何が!?」
葉月がいる反対側を向くとこちらも寝ぼけている人がいた。
ほんと、この2人は一体どんな夢を見ているんだろうか。
はぁ~と息を吐き、目を閉じると俺はあることを思い出した。
あれ、おかしいぞ。寝る前は確か順番が壁から右に俺、彩花、葉月だったはずだ。真ん中に彩花がいたはずなんだが、いつの間にか順番が変わっている。
「……寝ている間に変なこと起きてないよな」
寝ぼけて俺が2人に何かしていたかもしれないと思うが、寝る配置が変わっているだけで他におかしいところはない。
服が乱れてるとかないし大丈夫だな。寝言は気になったが。
2人が起きたのはその数分後。彩花も葉月も俺の腕に抱きついていたことに関しては一切話すことなく各自起き上がってどこかへ行ってしまう。
(あの状況が気になっているのは俺だけか……)
一人残された俺は、遅れて布団を畳み、自室で部屋着から服に着替えた。
***
新年の始め。姉の葉月は、今朝、彩花が作ってくれたおせちを一緒に食べた後、自分の家に帰ってしまった。
(お泊まりして食べに来ただけだった……)
午前中は、ゆっくりし、午後からは初詣に行くことになった。初めは、彩花と2人で行く予定だったが、俊と小雪さんも誘って一緒に行くことに。
神社を集合場所とし、彩花とそこまで一緒に行くと先に小雪さんと俊が来ていた。
「明けましておめでとう。彩花、匠くん」
「あけおめ、お二人さん」
新年の挨拶をすると、みんなで参拝しに行くことになった。
「ふふっ」
「何だか嬉しそうだな。何てお願いしたんだ?」
「内緒」
ニコッと笑いかけた彩花は、小雪さんに呼ばれ、どこかへ行ってしまった。彼女と入れ違いに今度は俊がこちらへ来た。
「おみくじ引きに行ったらしい。俺達も行こうぜ」
「あぁ……」
今年もやって来た。去年は悪かったし、今年こそ大吉がでますように。
「凶……」
「たく、大丈夫だよ。私、大吉だから一緒にいればたくも大吉!」
おみくじの結果に落ち込む俺を彩花は、よしよしと頭を撫でてくれた。
「手繋いだら大吉パワー分けられるかもよ」
「なるほど!」
何がなるほどなのかわからないが、小雪さんのアドバイスを聞いた彩花は、俺の手を取り指と指を絡めてきた。
「!」
「たく、これで大丈夫!」
(大丈夫じゃない!)
隣で小雪さんと俊がニヤニヤしてるし、周りにいる人がチラチラとこちらを見ている。
「あっ、彩花……ここたくさん人いるしこういうことはあまり……」
「! ご、ごめん!」
バッと離れた彩花は、顔が真っ赤で両手で頬を触っていた。
「この2人本当に付き合ってないの? 付き合っててもおかしくないんだけど……」
「付き合ってないんだよなぁ。俺も付き合っててもおかしくないと思う」
小雪さんと俊は、お互い同じことを思い、俺と彩花の様子を見ているのだった。
***
初詣後、4人で昼食を取った後、ショッピングモールに遊びに行った。楽しみすぎて家に帰った頃にはクタクタだった。
お風呂から出て、ソファに座ると彩花に抱きつかれた。
「た~く!」
「! ち、近い……」
目線を下にやると見てはいけないものを見てしまった。
(し、下着、着てない……?)
目線を上にすると彩花は俺が困っているのも知らず顔をグイッと近づけてきた。
「たく、目そらしたけどもしかしてドキドキしてるの?」
「!?」
ドキドキしていることがバレており、ドキッとした。
心臓がうるさくなっていき、熱があるんじゃないかと思うほどに体が熱くなっていく。
危険だと感じた俺は、彩花の肩をガシッと掴んだ。
「あ、あのさ……そういう格好でこんなに迫られると俺……」
「俺?」
「変なことするかもしれないぞ……」
「変なこと? 例えばどんな?」
彩花は怖がる様子は一切なく、どんなことをするのか興味津々だった。
「……お、襲うとか?」
「たくならいいよ。ふにゅっ」
また危なっかしい発言をするので軽くチョップすると彩花は頭を手で擦った。
「ここはダメって言うところだ」
「むぅ~(誘惑作戦失敗……)」
そう言って、彩花は、チョコをパクっと食べた。先程からいくつか食べているみたいだが、夜だし俺が止めよう。
「甘いもん食べすぎると太るぞ」
「だって、美味しいもん……」
「だってじゃない。これで終わりな」
「たくがそう言うなら……」
彩花は、そう言って歯磨きしに行った。そしてその数分後、彼女は、パジャマの上のボタンを2つ外して帰ってきた。
「ちょい待ってくれ」
「たく?」
見てはいけないものを見てしまったので、咄嗟に俺はソファから立ち上がり、彼女のボタンをつけてあげた。
「も~子供じゃないんだからボタンぐらい1人でつけれるよ。たくは過保護すぎ~」
「……何か酔ってる?」
酔ったとしたら原因はあれかもしれないと思い、すぐにさっき取り上げたチョコを見てみた。
(あっ、なるほど……食べすぎでこう……)
チョコを置いていたところへ戻すと彩花が俺の腕をツンツンとつついてきた。
「ちょっと苦しい……たく、ボタン開けて?」
「へっ?」
「私、開けれないから……ね?」
さっきは子供扱いしないでほしいとか何とか言っていたのに開けてほしいんかい。
一人突っ込みしていると彩花は俺にぎゅっと抱きついてきた。
「たく、好き~いい匂いがする……」
「! は、離れてくれません?」
「やだ」
(やだって可愛い……って!)
さて、どうしようか。あのチョコを食べてからおかしくなってしまったが、止める方法はないだろうか。
「たく、ここ温かいよ?」
「ぬわっ!」
油断してると手にはふにふにで柔らかい感触がした。
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