第24話 新年の挨拶と一緒に寝るお誘い
大晦日。彩花と夜は年越しそばを食べようかという話をしていると姉の
『今日、お泊まりしてもいい? 久しぶりに彩花に会いたいからさ』
葉月は、大学1年生で、今年から一人暮らしを始めた姉だ。俺が住んでいるところから少し近く、たまに遊びに来る。
彩花と葉月は小さい頃から仲が良く、連絡をよく取り合っているらしい。
「彩花、今日、姉泊まりに来るけど……」
「えっ、葉月ちゃんが!? やった!」
彼女は嬉しそうに両手を合わせて喜んでいた。嫌そうな顔をしたら葉月にはダメだと言うつもりだったが、これなら呼ぶか。
お泊まりオッケーと姉にメッセージを返信するとピンポーンとインターフォンが鳴った。
頼んだものは何もないので彩花に何か頼んだのかと目で尋ねると彼女は首を横に振った。
(お昼過ぎに誰だろうか……)
ソファから立ち上がり、玄関へ向かいドアを開けるとそこには先ほどメッセージを送った相手である姉、葉月がいた。
まさかと思うけどあのメッセージ、ここで打ったんじゃないか? 俺がいいとお泊まりオッケーするとわかってて。
「早すぎるぞ」
「だって、玄関の前で泊まっていいかのメッセージ送ったもん」
「来る気満々じゃん」
「そーよ。可愛い弟が夜ご飯に何か作ってくれそうだから来ちゃった」
会いに来たんじゃなくて食べに来たのかよ。姉に突っ込みだしたら止まらないので心の中で留めておく。
まるで自分の家のように葉月は、お邪魔しますと言って中に入り、彩花と感動の再会(数週間前に会ったが)をしていた。
「彩花~今、話題になってる駅前のシュークリーム買ってきたよ!」
「わ~葉月ちゃん! 久しぶり!」
彩花と葉月は会えたことに喜び、仲良さそうな2人を見ていると俺は葉月から無言でシュークリームが入った箱を渡された。これはおそらくおやつの準備をしろと言われてるのだろう。
シュークリームの箱を受け取り、キッチンへ持っていき、温かい紅茶を淹れることにした。
その間、彩花と葉月は女子会が始まり何やら盛り上がっていた。
「で、匠とはどう?」
「えっと……特に……?」
「はぁ!? こんなに彩花、可愛いのにたくは、わかってないなぁ~」
「お、落ち着いて葉月ちゃん」
葉月は、はぁ~と大きなため息をついた後、彩花の肩をガシッと掴んだ。
「匠、恋愛とか興味なさそうだからなぁ。そだ、アドバイスするよ」
「アドバイス……お願いしますっ!」
彩花は、メモと手帳を用意し、葉月からのアドバイスをメモすることにした。
「まずは、両手を握ってそれを自分の胸に持っていく」
「な、なるほど……」
「後はお風呂上がりは結構いけるからノーブラで服を着て匠に密着。これで無反応な男はいないはずよ」
「のっ、のの……そんな恥ずかしいことできるかな……けど、たくが喜ぶならやってみようかな」
彩花の発言の後半部分だけ聞こえてきた俺は、喜ぶならやってみようかなって何やるんだよと心の中で突っ込むのだった。
無言でセンターテーブルにシュークリームと紅茶を並べるとそれに気付いた彩花は、目をキラキラさせた。
「美味しそう! たく、紅茶ありがと」
「ありがとね、匠」
「おう。で、泊まるっていつまでなんだ?」
いつまで泊まるのか葉月に尋ねると彼女は、紅茶を1口飲んでから口を開いた。
「1日だけだよ。愛の巣に長くお邪魔するわけにはいかないし」
「愛の巣ってなんだよ」
姉が買ってきてくれたシュークリームを一口パクっと食べると口の中に甘い香りが広がった。
(何これ、美味しすぎるだろ……)
テレビで放送されてからお客さんが増えた店らしいが、これは食べなきゃ損する味だ。これは是非、俊に教えて上げよう。
「今日は3人で久しぶりに寝よっか。ね、彩花」
「うん、それいい。たく、今日は一緒に寝よ?」
昔、彩花が永瀬家に泊まりにきた時はよく3人で寝ていたのを思い出す。
「今日だけなら……」
姉の提案には何を言っても断れそうにはないので、頷き、賛同する。
「やったっ。葉月ちゃん、今日の夕飯はたくが年越しそば作ってくれるんだよ」
「へぇ~そりゃ楽しみ。お姉さんの分もよろしくね、匠」
「はいはい、言われなくても作るつもりだよ」
お泊まりしたいといいつつ年越しそばを食べに来たのが目的な気もしてきた。食べたいけど自分で作るのがめんどくさい的な。
***
年越しそばを3人で食べ、年が明けるまではテレビを見たりゲームをしたり、いつもはこんな時間には食べないが、お菓子パーティーをした。
姉は、盛り上がりすぎて机に突っ伏してぐったり。彩花はというと俺の肩にもたれ掛かりソファに座っていた。
「彩花、眠いなら寝たらどうだ?」
「んー後、3分でお正月になるからそれまでは起きてる」
「今にも寝そうだけど……」
うとうとしていると彩花は、だんだん体がこちらへ寄ってきて最終的には俺の膝にポスッと頭を置いた。
(膝枕になってしまった……)
「彩花さん、起きて。寝るならベッドに」
「まだ起きてる……」
声からしてほぼ寝ている。日付が変わるまでに起きてられるのだろうか。
数分、この状態でいると時計の針が12時を指した。テレビからは除夜の鐘が鳴り、それを聞いたとろんとした目で彩花は、口を開いた。
「明けましておめでとう、たく。今年もよろしくね……」
「うん、彩花、明けましておめでとう。今年もよろしく」
新年を挨拶を済ませると彩花は、俺にピトッとくっついてきた。
「新年の挨拶もできたことだし、一緒に寝よ?」
「……今日は一緒にって言ったしな。じゃあ、布団の用意するか。姉、起こすから彩花は布団の準備頼む」
「わかった!」
さっきまでうとうとしていたが、彩花はバチっと目が覚めていて、布団の準備をし始めた。
(さて、俺は姉を起こさなくては……)
「葉月姉、起きて」
「ん~、もう年明けた?」
「明けたよ。明けましておめでとう」
「うん、あけおめ。カウントダウンしたかったのになぁ~逃しちゃったよ」
「それは残念だ」
布団をリビングの隣にある和室へ並べて、3人で横になる。順番は壁から右に俺、彩花、葉月だ。
寝るとなったら姉は、すぐに寝てしまい、彩花はというと俺の布団に潜り込んできた。
「たく、むぎゅー」
わざとなのかわからないが、彩花が腕に柔らかいものを押し当ててくる。それに我慢できるはずもなく俺は彼女の頬を優しくぷにっと触った。
「早く寝るぞ」
「む~」
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