第21話 クリスマスイブ
12月24日、クリスマスイブ当日。家に俊と白石さんがやって来た。友達をこの家に呼ぶのは実は初めてだ。
家に招くなり、俊と白石さんは、本当に一緒に暮らしているんだと謎に感動していた。もしかして一緒に暮らしていることが嘘だと思われていたのだろうか。
「おはよ、彩花。何作ってるの?」
俊をリビングへ案内している中、白石さんは、キッチンにいる彩花に話しかけていた。
「グラタンだよ、お昼みんなで食べよ」
「やった。毎日、彩花の料理食べれるなんて永瀬くんは幸せ者だ。料理に関しては永瀬くんには負けちゃうよ」
「負ける?」
彩花は何かたくと勝負しているのかなと思いながらグラタンを4人分作る。
「いや~、ほんとに一緒に住んでるとは」
まだ言うかと俊の言葉に俺は、心の中で突っ込みをいれる。
「少し前だけどお昼にしようか。俊、手伝ってくれ」
「おう、手伝うよ」
彩花1人だと大変なので4人で昼食の用意をする。いつも食事しているダイニングテーブルは2人用なので、今日はソファの方にあるセンターテーブルで食べることにする。
料理は揃ったが、スプーンが必要だと思い、キッチンへ取りに行くと使ったものを洗っている彩花が楽しそうな表情をしていることに気付いた。
「彩花、楽しそうだな」
「うん、たくといる時間はもちろん好きだけど、こうして友達が来てくれると嬉しいなって」
「そうだな」
食器洗いを終えると彩花とリビングへ移動し、昼食を食べることにした。
「何これ美味しっ!」
「さすが彩花……いいお嫁さんになるよ」
俊と白石さんは、彩花が作ったグラタンが美味しそうに食べる。
「美味しいなら良かったよ。たくは、どう?」
みんなより少し後に一口グラタンを食べた俺に彩花はニコニコしながらどうかと尋ねる。
「美味しいよ。前にも作ってくれたことあったけどその時のよりももっと」
「ふふっ、ちょっとした美味しさの魔法をかけたからね」
ちょっとした美味しさの魔法とは何だろうかと気になったので聞いてみたが、彩花は内緒と言って教えてはくれなかった。
昼食を食べ終えるとプレゼント交換会の前にテレビゲームをしようという話になった。
「白石さんは、ゲームやったりする?」
あまりやっているイメージはないがどうなのかと聞くと白石さんは、人差し指立てた。
「白石さんじゃなくて小雪でいいよ。名字だと堅苦しいし。これからは匠くんと俊くんって呼んでもいいかな?」
「うん、いいよ。じゃあ、これからは白石さんのことは小雪さんと呼ぶよ」
いきなり呼び捨てはよくないと思い、さん付けにすることにした。
「じゃあ、俺も小雪さんで。如月さんも俊って気軽に呼んでくれていいよ」
そう言うと彩花はなぜか俺の腕に軽く抱きついてきた。
「わ、私も彩花でいいよ。俊くん……」
食事のときは何ともなかったようだが、恥ずかしいのか声が小さかった。
「うん、じゃあ、彩花さんで。にしても匠、彩花さんに懐かれてますなぁ~」
俊がそう言うと彩花は俺の腕からパッと離れて、顔を赤くする。
「彩花のこういうところ可愛いんだよねぇ。そだ、名前呼びの話になって忘れてたけどゲームするんだったんだよね。どんなゲームがあるの?」
「カーレース、バトル系、いろいろあるけど、まぁ、カーレースがオススメかな」
自分の家にあるゲームを何個か紹介し、話し合った結果、カーレースをやってみようとなった。
コントローラーは2台しかないのでまずは、俺と俊がやりお手本を見せることにした。
「彩花は、よくやるの?」
「うん、あるよ。たまにたく……匠くんとよくやる。匠くんには勝てたことないけど」
ずっと気になったているが、彩花は友達の前だと俺のことをたくとは呼ばない。たくと呼ぼうとしても毎回言い直して匠くんと呼ぶ。
なぜなのか理由が気になるが、彩花が俺をどう呼ぼうと自由だ。
カーレースをスタートし、いつも通りやっていると俊が口を開く。
「そういや、匠。この前やった時、調子悪かったよな。何があったんだ?」
「ちょ、ちょっと眠たかっただけだ……」
彩花に抱きつかれてやりにくい状況になってたとは言えん。
「そっか」
俊にニヤニヤした顔でこちらを見られた気がするが、無視してゲームに集中することにした。
俺と俊との1戦目が終わると次は彩花と小雪さんと交代することに。
彩花にコントローラーを渡すと俺にピトッとくっついてきた。
「たく、このボタンなんだっけ?」
「!」
(近い近い!)
この距離感はいつものことなんだけど、彩花、ここに俊や雪乃さんがいること忘れてないか?
「それが右で、こっちが左に曲がる」
「なるほど……たく、教えてくれてありがと」
彼女は、俺にだけ聞こえる声量でお礼をいい、こちらにニコッと笑顔を向けた。その笑顔を見てドキッとした俺は見ていたらどうにかなりそうで、目をそらした。
彩花と小雪さんがゲームを始め、勝ったのは小雪さんだった。
「む~、悔しい」
「いい勝負だったね」
その後、何回かゲームをして、そろそろプレゼント交換をすることになった。
「誰のやつかわからないようクジを使ってやろうか。1が俺で2が彩花さん、で、3が匠で4は小雪さんね」
俊は、1~4の数字を紙に書き、その数字が見えないようすべて四つ折りにする。
その後はじゃんけんで勝った人から数字が見えないようにしている四つ折りの紙を順番に引いていくことに。
「おっ、俺のは3だから匠だな。プレゼントは、手作りクッキーとハンカチ……女子っぽいな」
「ちなみに焼きたてだ」
「へぇ~」
どや顔をしたが、俊には軽くスルーされた。そして、焼きたてと聞いてすぐに反応したのは彩花だった。
「羨ましい! 俊くん、私に手作りクッキーを譲って───」
「彩花にはまた今度作ってやるからな」
そう言っていつものように彼女の頭を撫でると俊と小雪さんから視線を向けられた。
「あっ、いや、これは……」
やってしまったことに言い訳なんてできるわけなく、俊からはニヤニヤと見られ、小雪さんからはニコニコと笑顔を向けられ、頭を撫でられた彩花は嬉しそうだった。
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