第20話 クリスマスプレゼント

「次のニュースです。クリスマス1週間───」


 クリスマス1週間前。外は寒く、ソファに座って読書しているとテレビからクリスマスというワードが聞こえてきた。


 読書を中断するためしおりを挟み、本を閉じてテレビを見ることにした。


 そっか、もうクリスマスか。特別何かする日でもないが、クリスマスだからケーキを作ってみようかな。後、彩花にクリスマスプレゼントを渡すとか。


 渡すなら今からショッピングモールに行って買うか……。


 特別することはないと思いつつも何かしたいので、さっそく当日の予定を立てていく。


 テレビを見ていると隣にいた彩花が肩にもたれ掛かってきた。


「たくは、クリスマスどう過ごすの?」

「俺は特に……まぁ、クリスマスイブは俊と集まって何かやるかな」


 集まって何かやるとしか決まっておらず具体的にこれをするとは決まっていない。おそらく何か食べるぐらいだと思うけど。


「いいな……」

「……彩花も来る? 男子ばっかりになるから白石さんも誘ってさ」

「いい! さっそくこゆちゃんに連絡してもいい?」


 急にテンションが上がった彩花は、俺の両手をぎゅっと握り、顔を近づけた。


 心臓がドキドキとうるさい。あの日、気付いた時から俺は多分、彼女を意識している。


「い、いいよ……俊にも彩花達が来ること言っておく」

「うん!」


 嬉しそうにニコッと笑った彩花は手を離し、さっそく白石さんに連絡していた。


(はぁ~ビックリした……)


 白石さんに確認を取ると彼女も来れるそうで4人、この家でクリスマスイブにクリスマスパーティーをすることになった。


 そのパーティーではプレゼント交換会と各自、食べ物を持ってくることになった。


「プレゼントか……たく、今からショッピングモールに行って買いに行かない?」

「そうだな。買いに行こっか」


 時刻は11時半過ぎ。ショッピングモールは、お昼を家で作って食べてから行くことになった。


 電車で行き、ショッピングモールへ着くと別行動し、プレゼントを買うことに。なぜ別行動かというとプレゼントは当日まで内緒にしておいた方が楽しみになるからだ。


 集合場所を決めて彩花と別れると俺はさっそく上の階にある雑貨屋へ行くことに。


 プレゼント交換会は誰に当たるかわからないので、誰がもらっても嬉しいものがいいだろう。


 いろんな店舗を回り、じっくり悩むこと1時間後、何とか買うものが決まり彩花と合流する場所へ向かっていると雨咲さんとバッタリ出会った。


「永瀬くん、こんにちは」

「雨咲さん、こんにちは」


 雨咲さんとは学校でしか会うことがなかったので、私服姿は新鮮だった。とても雨咲さんらしい服だなと思っていると彼女が小さく笑った。


「如月さんですよね」

「?」


 雨咲さんの口から彩花の名前が出てきたのに不思議に思っていると後ろから誰かに服をクイクイっと引っ張られた。


 後ろを振り向くとそこには彩花がいて、俺の背中に隠れていた。


「彩花?」

「たくが知らない間に……」


「ふふっ、仲がよろしいのですね。初めまして、永瀬くんとは中学から仲良くさせていただいてます、雨咲奏と申します」


 丁寧な挨拶を雨咲さんがすると隠れていた彩花は、ゆっくりと出てきてペコリとお辞儀する。


「き、如月彩花です……。私の名前、言ったことありました……?」


 彩花は物凄い小さな声で話すが、雨咲さんにちゃんと聞こえていた。


「いえ、如月さんは成績優秀な方で有名ですので、知っていました」


「そう……なんですね……」


 彩花は初対面で緊張しているのかいつもより声が小さく、敬語になっていた。

 

「私、如月さんに警戒されているんでしょうか?」

「いや、彩花は、人見知りだからこうなってるだけだと思う。雨咲さんは、ショッピングモールで何かしてたの?」

「服を買いに来たんです。如月さんと永瀬くんは、デートでしょうか?」


 雨咲さんがそう尋ねると後ろにいる彩花が全力で首をコクコクと縦に振っていた。


「あっ、彩花? あっ、雨咲さん、デートじゃないから」

「あら、そうなんですか?」

「うん、デートじゃないよ」


(何か後ろからじっーと見られてるような……)


「そうですか。さて、お二人の時間を邪魔するわけにはいきませんから私はここで。では、また学校で」

「うん、また」


 手を振り、雨咲さんは、俺らの横を通ってこの場を立ち去った。




***




「ん……」


 今日はショッピングモールでプレゼントを買うだけだったが、あの後、遊んで帰ったからか彩花はテレビを見ながらうとうとしていた。


 お風呂から上がり後は寝るだけだ。テレビを見るのはやめて寝たらどうかと声をかけようか。

 

「明日、学校だしもう寝たらどうだ?」


 彼女の隣に座ると彩花は俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。


「ん……じゃあ、たくと寝る」

「寝ぼけてる? 自分の部屋があるんだからそこで1人で寝てください」

「む~、たくがいないと寝れない」

「それは困ったね」


 そう言ってソファから立ち上がろうとするが、腕にひっついた彩花が離れない。


 彼女と寝たらまた俺が知らないうちにやってしまった事件が起きる。


 だが、中々離してくれないので俺はあることを思い付いた。


「じゃあ、彩花が寝るまで近くにいるからそれでいい?」

「うん……やったっ」


 リビングの電気は消し、彩花の部屋に移動すると彼女はニコニコしながらベッドに寝転がる。そして、場所を少しあけてそこをポンポンと叩いた。


「たく来て……」

「えっ、俺は寝ないよ。彩花が寝るまで近くにいるだけ」

「む~、一緒に寝たかったのに」


 彩花は、頬を膨らませて寒いのか布団の中に入っていく。


「たくはどんなプレゼントを選んだの?」


 プレゼントは当日まで秘密にすると話したが、彩花は知りたくなったのか俺に聞いてきた。


「まぁ、みんなが喜びそうなものだよ。彩花は?」

「……私もみんなが喜びそうなもの」

「一緒だな。クリスマスといえば、友達同士でやったプレゼント交換会で彩花、ビックリ箱もらってたことあるよな」

「あ、あったね。嫌な思い出……けど、その後、たくがそれを用意した男の子を怒って、私にヘアピンくれたっけ……」


 彩花はそう言って俺の後ろにある机を見る。机には小さな缶があり、多分そこにそのヘアピンがあるのだろう。


「私、たくの優しいところが好き。家族っていう関係もいいけど、私はたくと……」


 彼女は最後まで言わず眠りについてしまった。すうすうと寝息を立てて寝ている彼女は、とても可愛らしく俺は頭を優しく撫でてから部屋を出ることにした。

 





       

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