2章 幼馴染みへの気持ち
第19話 再会の思い出と気付いた後
彩花と再会したのは高校入学式前の中学生最後の春休み。
5年振りに出会った彼女は、背が伸び、大人っぽく、昔と変わっていた。けれど、変わってないところもあって、久しぶりのせいか最初は話すまでに時間がかかった。
彩花は人見知りだ。小さい頃はたくさん話せる仲だったが、久しぶりに会うと全く話せなくなっていた。
それなのにとある事情で一緒に住むことになった。
「えっと、久しぶりだな……元気にしてたか?」
「……うん」
話しかけたら答えてくれるので警戒されてるというわけではなさそうだ。今は久しぶりで緊張していておそらく慣れればまた昔のように話せるようになるだろう。
「たく……せっかく一人暮らしだったのにごめんね……」
「……久しぶりに再会して一緒に住むことになることになって驚いたけど、俺はまた彩花に会えて嬉しいし、一緒に住むことが嫌だなんて思ってないよ」
昔のように俺は彩花の頭を撫でた。すると、彼女は驚いて体をビクッとさせたが、目を閉じた。
「私も……たくとまた会えて嬉しい」
再会してから会話を重ねていくことで彩花とは昔のように話せるようになっていた。
そして今ではよく俺の肩にもたれかかったり、後ろから抱きついてきたり、スキンシップが多くなった気がする。
彩花が甘え上手でこういうことをするのはあまり変わっていないのだが、俺たちはもう高校生だ。幼馴染みだとしても距離は考えないといけない年頃なのではないかと俺は思う。
「たくは、彼女できた?」
「いないよ」
「ふふっ、そっか……私もいない」
なぜ彼女がいるか聞いてきたんだろうと疑問に思ったが、同居することで必要な情報だろう。
そうだ、いろいろ起きないように先に2人だけのルールを決めておこう。
「彩花、2人だけの家のルールを作らないか?」
「ルール……うん、2人だけのルール作ろ」
ルールといっても作ったものはそこまで固いものではない。朝・昼・夕食は、誰が作るのかとか、お風呂の順番は誰からとかそういうものだ。
「はいっ!」
「はい、彩花さん」
手を挙げたので何かプラスでルールを付け足しないのかなと思っていると彼女は、笑顔でこう言った。
「毎日、1回、たくとハグ」
「却下で」
「むぅ~」
彩花との距離はあり得ないぐらいに近くなり、多分昔より距離が近くなっただろう。
***
「たく、面白いテレビやってるよ。猫と犬の特集」
お風呂から上がるとモコモコの暖かそうなパジャマを着た彩花がソファから立ち上がり俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。
腕に柔らかいものが当たり、そしてお風呂上がりのためかいい匂いがする。
後、さっきの漫画を見てから俺はおかしい。彩花を見ると心臓がうるさいほどドキドキする。
「あ、あぁ……彩花、好きだよなそういう番組」
彼女に手を引かれて俺はソファに座り、彩花と一緒にテレビを見る。
最初は距離があったが、だんだん彩花が俺の方へ近づいてきて、肩に寄りかかってきた。
何だろう……今までこう肩にもたれ掛かってきたりされてもあまり何も思わなかったのに今は凄いドキドキしている。
「きょ、今日はもう寝ようかな……」
彩花の隣にいることが耐えきれず、ソファから立ち上がろうとすると後ろから手を引っ張られた。
「たく、何か変……」
「! へ、変? 別にいつも通りだよ」
「……寝る前にぎゅーしよ?」
「しないよ。じゃあ、お休み」
「えいっ!」
「あっ、彩花!?」
ここから離れようとすると彩花が後ろからぎゅっと抱きしめてきた。
「たく、何かあったら言ってね……。いつでも相談に乗るから」
「……ありがとう。大丈夫、ちょっと彩花との距離感に困ってたというか……」
「距離感……」
彩花は俺からバッと離れ、一歩後ろに下がったので俺は慌てて言い直す。
「違う違う、嫌とかそういうことは思ってないから。幼馴染みで家族だとしてもこの距離感は普通なのかなって思っただけで……」
「嫌じゃないの?」
「うん、嫌、ではないよ」
急に抱きつかれたらビックリするけど、嫌と思ったことは一度もない。
「……私は、たくが嫌だと思うことはしたくない。もし、今後嫌だと思った時があったら言ってほしいな」
「うん、わかった」
気持ちに気付いて彼女とどう接していいのかわからなくなった。けど、今はそのままで。
***
翌日の休み時間。白石さんに借りた漫画を返しに行くために6組の教室へ行くことに。なぜか行くと言ったら俊もついてきた。
「漫画、面白かったよ。ありがとう」
「おっ、読むの早いね。何かいい気付きになったかな?」
「!」
そうか、白石さんは、俺に何かを気付かせるためにこの漫画を渡したのか。
「うん、気付けたよ……。もう一度お礼を言うよ。ありがとう、白石さん」
「永瀬くん……。なら、彩花が頑張ってアタックしてることにも気付いたのかな?」
「…………」
「えっ、あっ、ごめん。聞かなかったことに」
「? う、うん……」
不思議な空気が流れ、白石さんは、漫画を持って教室へ入っていった。
返しに来ることができたので教室へ帰ろうとするとなぜか俊に肩をポンッと叩かれた。
「俺は匠のそういところ好きだ」
「そういうところ? 急に告白みたいなこといってきて怖いんだが……」
「まっ、気にするな。帰ろうぜ」
また肩をポンポンと叩かれ、俺と俊は、自分達の教室へ戻ることにした。
教室につき、自分の席へ座ると隣の席である雨咲さんが話しかけてきた。
「幼馴染みさんに会いに行っていたのですか?」
「ううん、知り合いに本を返しに行ってたんだ。雨咲さん、漫画とか読んだりする?」
「漫画ですか……歴史漫画は読みますが、あまり読みませんね。小説の方が読むかと」
「俺と一緒だ。漫画が嫌いなわけじゃないんだけど、文字がたくさんある方が好きでさ」
雨咲さんと本の話題で盛り上がり、趣味が合うのかもなんてことを思っていると背後に殺気を感じた。
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