第16話 ドキッとさせられる笑顔
駅から数分歩き、遊園地に到着するとチケットで中に入った。俺も彩花も初めて来た場所なので園内マップをもらってどこに行くか決めることに。
「乗りたいもの全部行けるかな」
「まぁ、行けないことはなさそうだけど、乗りたいものから乗ろうよ」
今日は休みの日だからか遊園地は混んでいた。人気のアトラクションは並ばなければならないだろう。
相談してどれから乗るか決め、最初に乗ることになったのはコーヒーカップだ。そこまで混んでいなかったためすぐに乗ることができた。
コーヒーカップは、5人ほどで乗れる乗り物で、2人の場合、広々と座れるのだが、彩花は俺の横に座った。
「そんなに近いと回せないぞ」
「たくは回したい?」
「いや、別に回さなくてもいいかな」
「じゃ、回さずに動いてる間、何か話そ」
「わかった」
回さなくてもコーヒーカップは、少しだけ回るのでそれでいいだろう。小さい頃なら全力で回していたと思うが。
まもなく始まりますとアナウンスが入り、ティーカップが動き始めた。
「たくは何か乗りたいものある?」
「ジェットコースターは乗りたいかな。後、お化……いや、何でもない」
お化け屋敷と言おうとしたが、彩花は怖いものが苦手だ。ここの遊園地のお化け屋敷はどんなものかと気になっていたが、彩花を連れていくわけにはいかない。
「私もジェットコースター乗りたい。後、最後は観覧車乗りたいかも」
「夜に乗ったら夜景が見えて綺麗だろうな」
コーヒーカップに乗りながら話しているとあっという間に終わり、次のアトラクションへ向かう。
楽しそうにニコニコと笑う彼女を見ていると服装のこと何も言っていなかったことを思い出した。
「彩花、その服可愛いな、似合ってる」
「かっ、可愛い? あ、ありがとう……」
「髪型もいつもと違ってて可愛い」
「! ありがと。たくはカッコいいね……眩しすぎて直視できないぐらい」
「あ、ありがとう……」
何だろう。女子って髪型が変わるだけでいつもより可愛く見える。いつも下ろしているだけだが、今日の彩花は綺麗な編み込みをしていて、可愛いリボンをつけている。
後、今気付いたけど、誕生日に渡したネックレスを着けてくれている。
(プレゼントしたものを使ってくれるとやっぱり嬉しいな……)
「ジェットコースター、空いてるね。乗ろっか」
「うん、乗ろう」
この後、空中ブランコ、急流すべりなどいろんなアトラクションに乗り、午前中はかなり満喫した。
お昼になると俺も彩花もお腹が空いたので、空いているフードコートのようなところで昼食を食べることになった。
売っているものはいろいろあり、俺はラーメンを頼み、彩花はオムライスを頼んだ。
遊園地の中のお店だと高いイメージがあったが、そこまで高くなく学生に優しい値段だった。
「ん~美味しい。たく、一口食べる? とっても美味しいよ?」
一口サイズのオムライスを乗せたスプーンをこちらに向けた彩花は食べてほしそうな表情をしてこちらを見てニコニコと笑う。
「食べてもいいのか?」
「もちろん、たくと美味しさの共感したいから」
そう言われてしまったら断れない。ここはありがたく一口だけ食べさせてもらおう。
「たく、あ~ん」
「いただきます……んっ、美味しい」
「でしょでしょ。そだ、さっきこの遊園地のイベントっていうところ見てたんだけど今、お化け屋敷行ったら猫さんのぬいぐるみキーホルダーがもらえるんだって。行かない?」
怖いのが苦手なのでお化け屋敷は絶対に行かないと思っていたが、彩花から行こうと誘われた。
大丈夫なんだろうか。猫が好きでぬいぐるみキーホルダー欲しさに行きたいのはわかるが、無理してないか不安だ。
「怖いの苦手なのに大丈夫なのか?」
「だっ、大丈夫……たくがいるし」
「……大丈夫ならいいんだが」
昔、幼稚園の頃にあったお泊まり会で何人かで肝試しのようなことをしたことがある。その時、俺と彩花は同じ班で最初から最後まで怖くて彼女は俺にずっとくっついてたっけ。
怖いのを克服したわけではないだろう。今も怖いものは苦手なはずだ。
(大丈夫かな……)
***
昼食を食べ終え、少し休憩してから彩花が行きたいというお化け屋敷へ行くことになった。
俺は怖いものが苦手ではないし、こういうお化け屋敷へ行くのが好きだ。だが、彩花は違う。
猫のぬいぐるみキーホルダーのために頑張るのはいいが、入る前からずっと俺の腕に抱きついていて怖がっていた。
「本当に入るのか?」
「う、うん……猫のために頑張る」
「そっか……クイズを正解して進むらしいから頑張ろうか」
怖さを紛らわすために優しく彼女の頭を撫でた。いつもなら嬉しそうにするが、今日は表情がガチガチだ。
「次の方どうぞー」
スタッフさんが、前に進むように言ったので、俺と彩花は中に入ることに。
俺が先頭を歩き、その後ろに彩花がついてくる。怖いから手を繋いでほしいとのことで、俺はしっかりと彼女の手を握る。
「た、たく……出るときは出るって言ってね」
「それは無理だよ……」
スタッフ側ではないのでどこで驚かせてくるのかわかるわけがない。
「あっ、1問目が……彩花────」
「たく、それ、1番の方だよ」
「えっ、あっ、そうなんだ……」
2人で協力して解こうとすると彩花は、ささっと解いてしまっていた。
このお化け屋敷は迷路みたいになっていて、クイズをしながら進んでいく。
彩花から怖くて早く進もうという気持ちが後ろから伝わってくる。
1番の方へ進み、しばらく何もなく歩いていると横から驚かされた。
俺は大丈夫だが、彩花は、声を出さず体をビクッとさせて、俺の腕にくっつき小さく呟く。
「む、無理……もう無理……」
「まだ1問目しかしてないけど……怖いなら目閉じてたら? 俺が連れていくから」
「ありがと、たく……」
怖がっている彩花だが、クイズがあるところでは一緒に協力して解き、何とかゴールすることができた。
「ゴールおめでとうございます。景品の猫のぬいぐるみキーホルダーです」
スタッフさんから猫のぬいぐるみキーホルダーを2つもらい、1つは彩花に渡した。
「彩花、どうぞ」
「ありがとう。猫さん、私、頑張った……」
彩花は大事そうに猫のぬいぐるみキーホルダーをぎゅっと抱きしめ嬉しそうな表情をする。
「頑張ったな」
昔の癖でつい彩花の頭を撫でてしまった。手を離そうとすると彼女がその手を取り、両手で包み込んできた。
「たくのおかげだよ。ありがとう」
「!」
彼女の笑顔を見ているといつもドキッとさせられる。それと同時に可愛いなとも思う。
(彩花にはやっぱり笑顔が1番似合うな……)
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