第49話 そっくりさんとは思えない!
水族館への落下の衝撃音は館内の反対側にいたユーザたちの所にも届いていた。
「なんかすごい音したぞ今!」
「早く行ったほういいかな?」
「うん……アスカさん、これいつまで歩くの?」
「いや、もう着きます。ここです!」
「ここは……」
ユーザ達が辿り着いたのは館内の地下にあるウォータスの災害用地下シェルターだった。
「ウォータスの大きな建物に必ず入り口が設置されていて、何か災害が会った時にここに避難する事になる……らしいです。」
「なるほど、ここの職員だからここに辿り着いたのか。ラメルさんはどこに?」
ユーザが辺りを少し見回すと奥の方に背をこちら側に向けている人影が見えた。
ユーザは視線と指でアスカに聞いてみるとアスカは頷く。
「あの〜ラメルさんですか?」
ユーザは近寄って確認しようと話しかけた途端ラメルは突然振り返ってユーザの肩を掴む。
「!?」
すると険しい顔に似合わない程の儚い声でラメルは語り出す。
「魚って危険だと思いませんか?」
「はっはい?」
すると今度はユーザを壁に押し倒し耳元で囁き出す。
「魚って危険ですよね?だからこんな所無くなってもいいですよね?その肉も危険なんです。ですから肉の動物性タンパク質を食べるとかくかくしかじか……」
「ラメル!それは嘘なんだ!全て妄想なんだ!だから帰ってきてくれお願いだ!あと他所の男にそんな近づくな!」
ラメルは魚の危険だから肉を食べてはいけないというとんでもない理論を繰り返し喋っており、その横でアスカが涙目で必死にラメルを引き戻そうとしていた。
それを聞いていたユーザ達は
「なっ何を言ってんすか?」
「怪人よりある意味恐ろしい……」
完全に引いて呆れていた。
「いまこういうのの相手はしたく無いわ……なんか眠くなってきた。」
右から左に流れる頭に入りにくい言い回しと空回りな必死さを延々と聴かされた結果、疲弊したユーザとハーズは睡魔に襲われ始めた。
「ふざけた事を抜かすなぁ!!」
突然の怒号にユーザは腰が上がった。
「何だよザッド!」
「この女の妄言を断ち切らねばならぬ。」
ザッドはわなわなと震えていた。どうやらかなりご立腹の用らしい。
「海の声を……聴けぇーーーー!」
そう叫んだ瞬間ラメルは白目を向いて痙攣し始めてその後失神した。
「何してるんですか!」
アスカが憤慨しながらザッドに詰め寄る。
「世界で一番深い、ロアマル海溝の叫びを聴かせてやった。朝日がのぼる頃には起き上がるだろう。」
自信満々に語るザッドにユーザは呆れながら律する。
「いくらあの話が嫌だからって一応依頼人の彼女だぞ?荒療治が過ぎるだろ。」
「これでも抑えた方だ。それとも眼球に釣り針を差し込んでやろうか?」
「いや、ならこれでいい。」
ユーザは手を振って却下する。
「では行くぞ。こんなのの相手をしているより海のイメージわ汚す怪人共を駆逐するぞ。」
ザッドはユーザを引っ張って地上に戻ろうとする。
「こんなのって、当たりつよっ……!ちょっお前勝手に動くなって、あぁあのアスカさーん、絶対にそこを動かないで!絶位迎えに行くんで!」
ユーザはそのまま行ってしまった。
アスカは
「ラメルゥーーー!」
失神したラメルを抱き抱えて絶叫した。
「なんなんだお前は!」
ユーザ達が地下シェルターに向かっている頃。警備隊の隊長が男に向かって呼びかける。怪人人間問わず全員の注目が男に注目していた。
クリゴを始めとした皆が疑問を感じていた。
(何で怪人までこの男に?)
「神。それ以外の紹介方法はないなぁ〜。」
神と名乗った男は肩のあたりまで伸びた髪を指でいじりながら気だるそうに答える。
「?………ふざけた事を言うな!」
隊長はにわかには信じられなくて反射的に反論した。
その瞬間トロリとした目の端が僅かに上がる。
「コレを見たら信じてくれるかなぁ〜。」
そう言いながら男は右手を上げる。すると手から赤色の波動が飛び出す。
「何なんだー?」
その場にいた人間達には何の異変も起こらなかった。だが
「怪人が動き出した!」
誰かがそう叫び一斉に武器を構える。それまでピクリとも動かなかった。怪人達が動き出した。
「?アレ……。」
異変はすぐに分かった。何故か怪人達は男に向かってトボトボと歩いて行く。そこにさっきまでの殺気は無かった。そして男がゆっくりと手を挙げた瞬間。周りの人間は目を疑った。そこには人間顔負けの流暢な動きで男に頭を垂れて跪く怪人の姿が。
「ホレ、ホレお前だよ。」
男は怪人に顎で支持する。一体のグフゴが四つん這いの大勢になり男はそこに座る。そして今度は上を向き
「お前、人が多くてむさ苦しいからちょっと仰げ。あとそこのお前肩揉め。」
すると男が落ちてきた穴からイーグレブがら降りてくる。イーグレブは羽を僅かに動かしながら風を送る。
背後からサンシェがやってきて触腕で男の肩を揉み始める。
異様な光景が広がっていた。誰もが言葉を失い立ち尽くすしかなかった。
そんな中ある隊員の1人の真後ろにシュリプレットが跪いていた。
「ヤベ………」
怖くなり一歩弾いた瞬間、
「があああ!」
沈黙が破られた。シュリプレットが隊員の1人を手にかけたのだ。
それに追随して何体かの怪人も起き上がり出す。
そして怪人達はふんぞり返って座っている男に襲いかかった。
「反抗期にはお仕置き。だよなァ!」
そう言うと男は虚空から槍を取り出し、怪人達を薙ぎ払う。
「シュ…」
「カ…ミィ」
攻撃を受けた怪人の肉体は砂のような粒子になり消え去る。
「キミ強そうだねー!ユーザと何の関係性?」
「お待ちくださいチェンジャー様!」
次に切り掛かったのはチェンジャーだ。
「人には興味ないなぁ〜。」
「なっ!」
チェンジャーの猛攻を座りながら次々と槍でいなしていく。そして立ち上がりチェンジャーを上に蹴り飛ばす。
「ガアッ!」
チェンジャーは天井にぶつかりそのまま落ちていった。
「おい大丈夫か?!」
ユーザが猛スピードで地上にやってきた。辺りを見まわしたユーザ達はこの状況に頭を傾げた
「……何だよコレ?怪人?どうなってんだよ。チェンジャー、クリゴさんまでいるし…!」
「ボクらが地下にいた間に情報量が……」
「おいユーザあの顔は!」
「えっ!」
ユーザは思わず奥を見やる。そこには自分によく似た顔立ちの男。バブルで見たあの顔が脳裏に浮かんだ。
「ホンモノおでましか……」
男もユーザに気づいた瞬間
「フフフフフ………」
嫌に口角を上げてほくそ笑む。
(なんだこの動悸……まるで只のそっくりさんとは思えない!)
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使うモノ語り イヤマナ ロク @rjde4fuvD
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