第38話 役者と小道具は揃った。
「なんで付喪神が人間といないでこんな所にいたんだ?」
クリゴは雅之達に疑問を持っていた。
「付喪神って一定時間人間と一緒にいないと動けなくなる筈なんだが……」
「そうだそうだ!オレも威勢良くやれるのはクリゴといる時だけだぜべらぼうめぇ!」
彼らの指摘にペキオラは首を傾げる。
「え〜そうなの?ワタシはそんなことないけどなぁ〜」
「えっそうなのか?」
「うん。ワタシを含めキョクアの付喪神はそうだね。まぁ付喪神にも色々あるんじゃな〜い?」
ペキオラはいつも通りのポケーっとした態度で言ったのを見てクリゴは
「色々あるのか……そうだよな!人間だって色々いるしな。」
クリゴはそつなくその言葉を飲み込んだ。
「えっそんな簡単飲み込んじゃうの?聞く意味ある?」
雅之が思わず口に出してしまった途端
「なぁんだオメェ!クリゴはこの性格でずっとやってきてんだ。文句あっか?」
トースが食ってかかる。
「いやいや、無いです。すいません。」
(この水筒怖っ!)
すると突然ペキオラが
「てゆうか今〜ウォータスに怪人がいるんだよねぇ〜。」
とさりげなくこぼした瞬間
「怪人が!ウォータスに!?それは本当か詳しく聞かせてくれっ!」
クリゴが身を目の色を変えて驚きだしペキオラの、方を見て身を乗り出す。
「なっ、早速許容量を超えたのか?」
その後、クリゴは怪人の脅威について説明する。
「本来怪人は非常事態を除いて超常大陸にしか出現しないんだ。怪人は本来超常大陸の土壌や水で育った動植物を食べる事でしかでしか生きられない。それ以外のものを口に入れた瞬間死ぬはずだが……」
「でも普通に人間食べてピンピンしてたよ〜?」
「なっ?それは本当か?あり得ない……でもウソをついているようにも見えないし……そうなのかあ。その怪人は何をしていた?」
「な〜んか水槽の馬車を襲って魚も食べてたねぇ〜。」
「水槽の馬車?まさか!」
「クリゴ、こうしちゃられねぇぜ!」
ただでさえ慌てているクリゴとトースの声がさらに焦燥帯びたものになる。
「多分怪人の狙いは水族館だ!早く行って向かえ打たないと」
「えっ警備隊は〜?」
ペキオラが尋ねると
「キョクアは知らないがウォータスの警備隊は少なくともアテにならない。さっき言った通り怪人が来ないから怪人に向けた訓練もしてないからな。多分来ても足手纏いにしかならない。」
即座に警備隊の必要性を否定する
「じゃっじゃあアンタなんなのさ!」
雅之が心の声を漏らすとクリゴ
「オレは怪人ハンターだ!」
の一言で済ませた。
(ちょっとちょっと、怪人ハンターって何よ?てか怪・人・が・出・現・す・る・こ・と・自・体・は・非常事態じゃねぇのかよ!)
「「ユーザのトコの付喪神が来たってホント!」」
「はい、そうで」
「なんで言わなかったのかなー?」
「私達を抜いてお楽しみか?あ?」
チェンジャーとバカ医者はタキガワがいなくなってから状況を伝えられた。
「ちょっと近いですぅ〜!」
「ガリガリ君の新味とユーザの情報はいち早く私に伝えろって言ったろ!」
「これは許されない事だと思うよー?」
2人は女性職員に詰め寄り責める
「すっすいませ…んうっうぅ、」
彼女は涙を流してしまった。
「なんで謝る?」
「何故泣くのー?」
「全くレディを泣かせるんじゃありません」
バカ医者はラブクープに刺されながら、チェンジャーはツミに首を締め付けられながら理由を問うと彼女は
「ぐす、だってこんな変な人達に絡まれたら私も変な人って思われそうで…だから……ううぅう嫌だぁあああ!」
理由を聞いて2人ずっこけた。
「いっ一応私達同僚だぞ?」
「キミ、たっ多分強くなれると思うよー?」
「でもこうしちゃいられない!」
「ユーザのところへいこー!」
「イヤー!付喪神カモーンヌ!」
2人は付喪神達を連れてユーザ求め夜を駆ける。
「さぁーていろいろ聞かせてもらおうか?」
「海の男の海鮮丼だ。食え。」
事務所の空いている一室でユーザ達は取り調べをしていた。
「まず名前は?」
「アスカです。」
「じゃあ早速だけどここにいた理由についてだけど?」
ユーザが問いかけるとアスカはゆっくりと話し初める。
「まずボクの話になるんですけど、実はボク『自分が肉を食べた瞬間魚に世界を支配されてしまう』という妄想にかかっていた時期があったんです。」
「おっおう。」
「その時の記憶があまり定かでは無いんですがどうやら精肉店や牧場にしょっちゅう迷惑行為を働いていて街でも要注意人物扱いされていたらしいんです。」
「またそういう系か……」
ユーザは深いため息を吐く。
「でもある時に不可抗力で肉を食べてしまったんです。するとその瞬間に、自分の考えていることが妄想だって気づいて、正気に戻れたんですよ!」
「そりゃ良かったな!」
「ただ、」
アスカは次第に遠い目になる。
「ボクにはラメルという彼女がいるんですが彼女が今度はその妄想にかかってたんです。」
「何でよ?」
「その……どうやらボクが妄想にかかっている時彼女に妄想の内容を四六時中聞かせて洗脳紛いの行為を行っていたらしいんです。今思うと狂ってますよね。その時の記憶は無いんですが……」
「その記憶が無いっての便利だな。」
「記憶改ざん疑惑のユーザがそれを言う?」
「で彼女が今度はおかしくなってしまって、『ここを人類の魚から救う防衛の為の戦線基地とする』言い出してココに勝手に住み始めたんです。」
「……なるほど?」
「ボクはもちろん止めようとしたんですが彼女に鉄棒で殴られ一切の記憶無くて……」
「結局シラフになっても記憶は無いんだな。」
「ですんでラメルをどうか止めてください!勿論迷惑
を掛けた分の金は払います。」
「まあアンタの言い分は分かった。それじゃあ取り敢えず水族」
ユーザは突然倒れた。
「えぇ何で!?」
アスカは突然のことに驚く。
「ダメだ、反応がない」
「まぁ仕方ない。今日だけでいろいろあったからな。だが今倒れてもらっては困るな。せめて医者がいれば……」
「いるぞ。」
バカ医者がザッドの後ろで囁く。
「うわっいつの間に!」
「どうやら私の出番のようだな。ユーザにはこれを飲ませる。」
「ふーんコレがユーザ何だー。……何か普通だね。」
「アレ、御宅どなた?」
「ボクは
チェンジャーが自己紹介しようとする瞬間
「あああー!んあまぁい!!何だこれ!舌がどげるぅ!」
「やっぱさクレーマー味のある薬ってないじゃん。でもさ私の調合技術なら、出来ちゃうわだよな〜〜コレが!やっぱこの辺天才のツラさ滲み出ちゃてるよねぇ?」
「それを言うならクレーマーじゃなくてクリーミーだろ!下手なショック療法よりも苦しいぞ!」
「でも下手なショック療法よりも?」
「効くから余計イヤなんだよ!おかげさまでオレの体ピンピンだよ!ったくもー。」
「ハハハハハ!」
バカ医者とユーザはいつも通り軽快な掛け合いを繰り広げる。そしてユーザはチェンジャーに向き直る。
「アンタは?」
「ボクはチェンジャー。キミにいつか会いたいと思ってたよー!」
チェンジャーは目を輝かせながら自己紹介する。
「あぁそりゃどうも。」
(コレがチェンジャー?なーんかロングヘア以外は特に特徴は無いな。)
「ってゆーかオレ達は水族館行かなきゃならないんだ。あとにしてくれ。あぁその薬キンノミヤにも飲ましてくれ。」
「もう飲ました。ホレ見ろ。」
「この薬は味以外は完璧だ。……キミ、付喪神って興味ある?」
「なくは無…」
「いえいえなんの興味もありませんわ。」
「あくまで私達はビジネスパートナー以上でも以下でもありませんので。」
「ふーん。」
(このアホはともかくこっちの付喪神は食えない感じか……)
「それよりユーザ早く行くぞ!水族館で事件だぞ!海の男として見逃せない!」
ザッドはユーザを必死に急かす。
「そうだな。取り敢えずアスカさんの彼女をいち早く取り戻そう。」
「私達も行っていいか?」
「どうせダメっつっても来るんだろ。ならいいよ。」
こうしてクリゴと雅之達、3体の怪人、ハッピー・マテリアライズwithバカ医者チェンジャー、彼等は一つの場所に集まろうとしていた。
──超常大陸
あらゆる怪異が跋扈し蠢めくこの変の内に人間の言葉が一つ響いていた。
「オレなぁ、最近文末に『なぁ』つけるのハマってんだよなぁ。オカシイかなぁ?オカシクナイって言えよなぁ?」
1人の男が四つん這いの怪人に足を組み座りながら目の前に跪いている怪人の額をつま先でグリグリ擦りながら尋ねていた。
すると男の前に別の怪人が跪く。怪人は何やら呻き始める。
「ほうほう不届モノが3体もイルンダナァ?よく無いなぁー?制裁を加えないとなぁ!」
うめき声にしか聴こえない怪人の声の
意味をしっかり聴き取った男は立ち上がる。
「さぁて、久々の神事だ!あっ『なぁ』ってつけるの忘れた。」
紫と黒と金の髪を振り乱し、灰色の瞳孔を瞬かせながら男は歩き出す。
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