第36話 怪人水族館

怪人達は腹を空かせていた。7、8人の人間を食べても彼らの胃袋では前菜にもならないようだ。怪人の1人は近くの建物の屋根に飛び乗って辺りを見渡す。


「シュウラァ……?」

怪人遠方を見て何かに気づく。怪人の目に溜まったのは荷台で何かを運ぼうとしている馬車が何台も走っていた。馬車は怪人のいる道の真正面を通っていたが、あまりにも離れていたためまだ気づいていない。

「シュウラ、シュラ!」

怪人は他の2体に馬車を襲うように呼びかける。


「カミカミィ!」

「グゥフフフゥ!」

怪人達は二つ返事で了承し、怪人達は馬車を襲うと画策し始める。


「グゥファ!」

「うわあっ!」

怪人の1人が片足で車体を無理やり止める。


「カミィ!」

「シュラア!」

他の怪人達は車体の横に飛び付き、無理やり馬車を止める。怪人達の出現に御者達は驚く。


「なんで怪人が!?ウォータスに!」

「そんな事いいから早く逃げろ!」

「すぐ警備隊に連絡だ!」

幸い怪人に襲われていない馬車も何台かいたのでその馬車達は直ちに走り去っていった。


「これでもくらえ!」

「おらぁ!」

襲われ取り残された馬車の御者達は怪人に何かを投げつける。


「シャア!?」

御者が投げつけた球状の物体は怪人の体に命中する。球状の物体には粘度の高い液体塗料が入っており、命中した瞬間、弾け液体が体に飛び散る。


「カァァミイ……カミィ!」

突然の出来事に興奮した怪人達はそのまま御者達を撲殺する。そのまま怪人達は馬車の後ろについている荷台を無理やり引き離し、中身をほじくり出す。すると中からは大量の海水と共に魚が出てきた。


「シュウラシュラア!」

「カァミカミィ!」

怪人達は喜び魚と死体、それから馬を平らげた。それから怪人は味を占め、魚の入った馬車を探すため夜の闇に溶け込んだ。


生き残った馬車達は警備隊と水族館への連絡のため直走っていた。彼らはラジャーア1の大きさを誇る水族館の飼育用の魚を運ぶ馬車だったのだ。


「診療所へレッツラゴーーー!」

そんな事が起きているとも艶知らず、リンはすっかり日の落ちたウォータスの街を爆走していた。が急ブレーキでとまった。


「ウォータスの診療所って………ドコ?」

リンはウォータスの診療所を知らなかったのだ。

「あっちだっけ?そっちだっけ?こっちだっけ?どっちだっけ?うーん…そうだ医者連れてこ!」


思いついたリンは大急ぎで来た道を戻りバカ医者を乗っける。


「わっなんだこれ!?栄養失調の……馬か?」

「馬じゃねーし元気100倍だよぉだ!はいこれ握って」

「なんて?肺から吸って?スゥーーー」

「吸ってじゃねえよ握ってだよバカ!」


何とかバカ医者にハンドルを握らせてリンはまた走り出す。


「ちょっくら診療所の場所教えてちょ。」

「え!あっあっちを右に左折だ。」

「どうすりゃいいんだよ!」


「そう。じゃああっちとそっちに行ってくれ。」

「どっちとどっち?」

次第に怒りを通り越して呆れてくる。


「カーブを直進しろ!」

「あっそっすか……」

リンはバカ医者の突飛すぎる発言にもう混乱しきっていた。そして5分後……


「どうだ。完璧な案内だったろ?」

「こんなんで到着しちゃうのな〜ぜな〜ぜ?」


街一つ分は離れている診療所に僅か5分で辿り着いてしまった。

「たっだいま〜!」

朗々とした声でバカ医者は中に入ると同時に


「バカァ!どこで油を売ったらしたの!」

ラブクープが一直線に突撃してきて首に刃を突き立てる。

「だからそこ頸動脈だからそこ!死ぬってマジで!」

バカ医者が必死にもがきラブクープを首から引き剥がす。

「全く……貴方はどこまでも……うん?後ろのクロスバイクは…」


「え?ラブ姐さん何でココに?」

「それはこちらのセリフですわ!なんで貴方も……ユーザさんは大丈夫でして?」


「えっええ?何の何の何!」

ラブクープは聞きたい事が多過ぎて思わずリンに詰め寄る。するとそこに


「キンノミヤ様も無事なんですか!」

「はぁ?って、え〜〜と…」

「あっタキガワです。包帯で分かりにくいかも知れませんが……。」

タキガワは顔面を包帯でぐるぐる巻きにされた状態で出てきた。


そこからバカ医者は治療に駆り出され、リン、ラブクープ、タキガワは話し合いを外で始めた。何故ならリンは室内に入れないからだ。


まずリンがここ一ヶ月半の事の成り行きを説明した。


「……と言うわけでなんでもほん…じゃなくてハッピー・マテリアライズの職員は全員ライドエンプに行くことになってさ。いやホントはもっと極秘の情報なんだろうけどさ。」


「理解しましたが許容するのが難しい話ですね。そんな大変な事に巻き込まれているなんて……ユーザさんもそんな秘密のありそうな人には見えませんでしたし。」


「タキガワはなんでそんなになっちゃったの?」

「これは…………という事がありまして。」


「えぇ!あの不審者生きてたの!?そりゃ災難だったな。やっぱあの時完全に轢き殺して良かったかな?」


「いえ、その後チェンジャーさんが始末したと聞いたので…」

「チェンジャー?」

(なんかユーザから聞いたことあるな…誰だっけ?)


「今チェンジャーさんは治療中ですわ。体中に治療しなくてはいけない大量のキズがそのままになっていて動けているのが奇跡なんですって。」

ラブクープが付け足した。

「ふーん。」

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