第35話 アイツ金の事になると脳が溶けるよな

ユーザ達は変態水棲生物達に助けてもらいなんとか岸に上がることが出来た。


「それにしても何であんなヤツらが来たんだ?」

「どうやらあのイルカが起点を効かせた結果らしい……」

「サメの喘ぎ声なんて初めて聴いたぞ?」


「でももうオレクタクタだ…タキガワの所行くの明日にしようぜ。もう日も落ちてきてるし。」

ユーザが空を指差す。そこには既に光だけを残し自分は床に入り始めている太陽があった。

「…そうだな。」

ユーザ達はひとまず事務所に戻り体を休めることにした。


だが彼らはいつもの道を歩く程の体力も残っていなかったので、浜辺で待機していた馬達に乗せてもらい事務所への帰路へ着いた。

「見えてきた!」

「あぁー久しぶりの空気だなユーザ!」

「お前は久しぶりどころか初めてだろうがバカ!」


キンノミヤが持っている事務所の鍵で扉を開ける。

「たっだいまー!ってオレッちは自転車だから外か…ちぇっ。」

リンが最速で入ったがすごすごと戻って行った。


「まっまぁリンはほっておいてオレ達は中に入ろう。」

ユーザ達は実に一ヶ月半ぶりに事務所の空気を吸う。


「はぁ戻ってきたぁ!」

「いやボクもここにここまで愛着が沸いてたなんて気づかなかったよ。」

「だよなぁこうやってここの空気を吸い込めばいつも通りのオレ達に元通………ん?ここって…こんなに埃ぽかったっけ?」

「後なんか生臭くない?」

ユーザとハーズは違和感を感じた。


「人がいないのにホコリが発生するなんておかしいよな?」

「後この生臭さも気になるよね?」


「ぎゃあああ!」

奥の部屋にいるキンノミヤが悲鳴を上げる。


「何だ!」

ユーザが部屋に入るとキンノミヤが顔を真っ青にして何かを指差していた。ユーザが指先の方向に視線を追いやるとそこには


「これは……金庫か?でも金が、」

「無いんだよ、無いんだよ!金が、ウォータスに来てからの予備の貯金130万カレンが……全部無い!全部、全部…… くうっうぅうっわぁぁぁうわぁわぁぁうわぁーわぁぁぁうわぁー!なぁぁああうんでぇぇえ!アアアアグウウゥゾオオオォォォオウウウアアァア!!」

キンノミヤさっきまで真っ青だった顔を今度は真っ赤にしてとてつもない怒声と嗚咽を吐き出しで泣き出した。だが感情の昂りに対し涙はあまり出ていなかった。どうやら感情の起伏に涙腺が追いついていないようだ。


「おっおぉ!キンノミヤ辛かったなぁ?それだけの金だったって事だろう?」

(でもこの金っておそらく金持ちを騙くらかして得た金何だよなぁ………)

ユーザは一応キンノミヤを慰めようとした。だがそれが逆に彼の逆鱗を買ってしまった。


「ふざけんな!お前に何が分かる!?この金にはなぁ色々詰まってんだよ!こびりついてんだよ!かかりまくってたの!」

キンノミヤに怒りの叫びに対しバカ医者が

「そんな金は汚そうだから掃除しよう。」


「わかるか?わっかんねぇんだろどうせ!言葉が安いんだよテメェは!有り得なぁいだろこんなの!?」

ユーザの言葉により、変なスイッチが入ってしまったキンノミヤに対しバカ医者が一言。

「でも私はそんなお前の言葉が分からなぁいだよそうなの!?」


「ごね得が許される世の中じゃねぇんだよ。だから奪ったんだろうが?えぇ!何なんだよ貴様は!?それで義理人情換算してみぃ。」

バカ医者が一言。

「だいたい500くらい?」


「もういいわ!キンノミヤはもうほっとこう!バカ医者にメンタルケアでもさせときゃいい。」

彼らの受け答えにユーザ達痺れを切らした。

「ボク達が留守の間に誰か忍び込んだのは明白だもんね。」

ユーザは付喪神達に指示を出す。

「ハーズはオレと一緒に二回を探索する。ザッドはオレと別の場所と一階を見てくれ。あぁ後外にも痕跡がないかリンにも調べさせてやれ。何か異変だと思う物や一ヶ月前と違う物だったり本当に些細な異変でも何でもいいから見つけ次第直ぐに知らせるんだ。」


「うん。やろうユーザ!」

「うむ。直ちにリンの元へ向かう。」

ユーザと付喪神達は、事務所内を探索を開始した。


会話の水球は未だなお続いていた。

「本気を解って話してたことあるか?ジャスティスだの正義だの知らんがボケゴラァ!」

「薬剤師のヤ・ク・ザ〜!」


「そんなこともあろうかと130用意したんじゃんか!氷も溶けるわこんなんさぁ!」

「じゃあ130以上用意すれば良かったんじゃないか?」


「まぁそれそうなんだけどさ。トノサマバッタの戯言以下だよ。ふさげんなってことなの要するに。」

彼の言動はより支離滅裂になっていく。そして涙が追いつき眼球から大量の涙が溢れ出し、水たまりを作る。


「雀の涙とかいうけどぉ、それがゴールじゃ無いんだよ?これ大企業でも出てくる常識。だからさぁ、アウアウウウウアア!」

そこから彼は涙を流すだけの生き物に成り果ててしまった。

バカ医者が一言

「これじゃあ脱水症状待ったなしだな。水はどこだ。」バカ医者はそう言って別の入り口から外に出た。


ザッドはリンに事の成り行きを伝える。

「なるほどねぇ。でもオレッち達クタクタじゃんか。そんな状態で探すの?じゃあもうちっと人手がもうちょい欲しくない?」

「お前にしては随分とロジカルな…」

余りにも冷静な判断にザッドが驚く。

「そりゃオレッちもまともになんないとユーザが過労死しちまうよ。」


「まぁ確かにな………話を戻すぞ。となるとやはりタキガワに声を掛けるべきか?」

「そうだね。だから鍛治工房行ってみない?」

そんな会話を何故か聞いていたバカ医者がポツリと呟いた。

「鍛治工房?そういやキラッキラのハサミを診療所で見たな〜?」


「キラキラのハサミ?もしや、」

ザッドは変わりたいと言い放っていたハサミの付喪神の存在を思い出す。


「キンセツだっけ?なんで診療所に……でも診療所に行けば!」

「タキガワに会えるかも知れぬと言う事か?」

「ついでにキンノミヤの機嫌も治るかも!こうしちゃいられないっしょ!頭の回転より車輪の回転!ユーザ!タキガワのツテが分かったかもしんないから行ってもいい?」


「すぐ戻ってこいよ!あとザッドは残れ!」

ユーザのリンは診療所に向かって走り出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る