第33話 水の中ならバレへんか……
馬車は海上で右往左往に暴れ回る。アホと罵られたバカ医者は馬車の中で暴れるのと連動してだ。
「ちょっと待て、一回落ち着けバカ!」
「追いついていられるか〜」
「追いつくじゃない落ち着くだ!」
「もうゴールしてんだよ!阿呆面になぁ!」
バカ医者はそう言ってキンノミヤを目標に変えて飛びかかる。
「こっちくんなよ、ユーザ追い出せ!」
「今やってる!でもコイツ……妙に力強い!」
バカ医者は単純な腕力だけなら怪人を倒せるユーザやそのユーザと渡り合えるキンノミヤよりも強かった。
「ねぇユーザ!水が……漏れ出してる!」
「ウソだろー?!」
彼が車内で暴れるせいで馬車に穴が空き水が漏れ出してしまった。
「コレじゃバカ医者じゃなくて破壊者ってか?つまらなすぎてベル生えるわwww」
リンがツボにハマって笑い出し車内の揺れが増すにつれて漏れ出す水の量も増えていた。
「んなアホなこと言ってる場合かぁー!」
その頃もう一つのベルが肝を冷やしていた。
「お前なんか面白い事やれよ!」
「……でっ出来るわけないだろ?オレ付喪神じゃねぇし。」
「おかしいだろ!?拾ってやったのにその言い草はどうなんだよアァン!この鏡は一芸出せたぞ!」
(わっけわかんねぇよ!?アイツはアイツ。オレはオレだろ。こういう変な怒り方すっからチンピラは嫌いなんだよ!)
雅之の独白が加速すると同時に彼らの怒りもエスカレートしていく。
「オン?何黙りこくってんだよテメェよぉ?黙っていいかなんて一言も言ってねぇだろぅよ!」
男は雅之を放り投げる。
「痛っ!」
硬い地面に放り投げられた衝撃と痛みで雅之は思わず
声を出してしまう。その瞬間先程のチンピラ男がやってきて開口一番
「オメェ何人様の許可もなく喋ってんだゴラァ!鈴のくせに人間様をおちょくるのもいい加減にしやがれ!」
「うん、マジ舐めてるわコイツ。」
「もしも人間だったら首無くなってたぜ。」
(んえ〜〜〜〜!?!?なんなんコイツ?自分で喋ってておかしいと思わんの?異世界現実世界関係なくこういうホンットにバカっているんだねぇ関心関心。)
あまりにも理不尽な言動を繰り返す半グレのチンピラ達に雅之は怒りや呆れを通り越してもはや感嘆の域に入っていた。
「ハァーッ……。なーんでこーなっちまったんだ?」
上野雅之はため息混じりに呟く。
「うるせぇぞ!鈴の癖にしゃべりやがって!」
「ひいいっ!すいません!」
(ホントにふざけんなよ!何でキチガイの手を離れたと思ったら半グレに捕まってんだよ俺〜〜〜〜〜!)
やはり怒りに心を囚われていた。
そして海上では
「そうだよなそうだよな!アホとかいうやつだもんな〜。塩水風呂とかいう民間療法にハマるわけだな。………しっかり治療をしろ!………まず医者にかかれ!………ッフゥーー………。」
水が漏れすぎてまるで湯船のようになってしまった。馬車の中でバカ医者が1人で盛り上がっていた。
「いや誰のせいでこうなってんだよ!てか1人で勝手に盛り上がって1人で勝手に疲れてんじゃねぇよ!」
「そういえばイルカはどうしてんの?」
「そうだ!イルカー!さっきから何してんだー?」
何も返答はない。人間にイルカの言葉は分からないので当然といえば当然といえよう。そこでザットが一肌脱いだ。
「我が聞いてやろう。海の力を得た我は海の全てを見聞可能だからな。」
そう言うとザッドはイルカに向かって声を張って話しかける?
「おいそこの水棲哺乳類!」
「キュー?」
「おっ通じた!」
「あとほんの少しやる気を出して我らを運べ。己を信じろ。」
「キュウキュウキュ?」
イルカは少し懐疑的な声色で返す。
「案ずるな。怪獣を釣ることの出来た我が言うのだ心配はいらない。」
「キュッキュキュ!?」
怪獣を釣れると言った瞬間イルカの態度が変わった。
「それに海もお主らにエールを送るっているはずだ。海の声を特別に聴かせてやろう。」
「キュキュ?」
するとザッドは何やら念じ始めるするとイルカの脳波に変化が起こる。
「キュ…キュ…キュ…キューーーー!!」
するとイルカは目を虹色に輝かせ始め吠える。
「おい、なんか騒がしいぞ?」
「海とシンクロしたのだ。」
海とシンクロしたイルカの脳内には言葉が浮かび始めた。それこそ正真正銘海の言葉だった。イルカは耳を傾ける。
『正直山登りたくね?』
(しょーーーーーーーもな。)
イルカは思考を停止し体が真っ白になる。そして波に漂うだけの生物となった。
「イルカァーー!!」
「なぁなぁユーザ?」
ユーザが振り向くとそこには怒りを完全に忘れていた。バカ医者がいた。
「もう何よ!」
ユーザが乱暴に聞くとバカ医者は
「ここでオシッコしても水の中ならバレへんか……」
「どうでもいいわーー!」
ユーザは海の真ん中で怒りを叫んだ。
そして雅之は街の真ん中で恐怖を叫んでいた。
「キャアア!」
彼の前にいた怪人達がチンピラ達を貪っていたからだ。
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