第28話 やっぱ金は欲しいじゃん?
「おいいつまでぐでーっとしてんだ。こっからが本題つったろ?」
「いや分かってるって…」
キンノミヤからジャスティスの概要を聞いたユーザとハーズはジャスティスが社会に与えたあまりの影響の大きさに圧倒され、話を聞いただけで座り込んでいた。
「オレ達ほぼ1話ぶりの登場なんだ。十分休憩出来ただろうが。」
「あんまそういう事言うなよ。本題だろ?じゃあちゃんと聞くからさ。」
そう言うとユーザは立ち上がり姿勢を改める。
「分かった。じゃあここからは重要だぞ。オレ達の進退に関わる。」
「あぁ……」
「これは昨日位に市長から聞いた話だ。」
先日──
キンノミヤは診療所の職員に促され台が一つだけ置かれた特殊な部屋に入った。台のまるで製図台にガラスを貼り付けたような形状をしていた。右横には何やら紙しか通れないくらい薄いスリットがある。
「ここは何ですか?」
キンノミヤが問い掛けると職員は台の方を見つめながら説明を始める。
「ここは市長含め公的期間の人間が緊急の連絡を取るための部屋です。この台はここの診療所のような都市運営の施設に必ず置かれているもので、緊急時にに市庁舎や警備隊へここまで遠隔でのやり取りをしたり直接その場に転送する為に使用します。基本一般人の立ち入りは禁止しております。ですからこの台の事もユーザさんには他言無用でお願いします。」
「なるほど……つまりこれからそれだけ重要な話をする訳だと。」
それを理解したキンノミヤは頭を抱えたい気持ちを必死に抑え、一旦息を整える。
「では分かりました。市長を呼んでください。」
心の整理がついた所で彼は視聴との対話を要求する。
「準備しますので扉の外で少しお待ち下さい。」
そう言いながら職員はキンノミヤを廊下へ追いやり扉を締め切る。キンノミヤは必死に聴き耳を立てて壁に耳を張り付けるが
(なっ、小銭の音ならいくらでも聴き取れるオレが聴き耳を立ててもダメだと!?)
何も分からなかったので諦めた。
1分程じっと待っていたら職員が扉を開けて
「それではこちらにどうぞ。」
台の前に立つよう誘導する。台は先程に貼り付けられていたガラス状の物体が光っており文字が書いてある。
「キンノミヤさんお待ちしておりました。バブル市長のワーンです。早速ですがそちらに向かいますので必ず一歩下がりお待ち下さい。」
指示通りキンノミヤが一歩引いた瞬間、台の周りが光だし、キンノミヤが眩しくて目を細める頃には市長が職員を数人連れてが目の前に立っていた。市長の顔は一ヶ月半前に比べかなり悪く寝る間も惜しんで復興に取り組んでいるのが分かる。だがキンノミヤはそんな事に目もくれずさっきの転送に興味津々だ。
「すっすごい技術だ……まてよ?これを使えばあらゆる物流や産業において革命を起こせるぞ!市長コレいくら?少なくとも100いや130までなら出せ…」
「1000。最低でもこれぐらいは。」
「すいませんでした。話が逸れてしまいましたね。早速本題に。」
態度を掌返しさせながらキンノミヤは応えていく。
「まず今回の件についてお詫びをさせて頂きたい。これは全て市長舎にテロリストを侵入させてしまった私共の責任でして…」
謝罪を始める市長に対しキンノミヤが止める。
「御託を並べるのはやめて下さい。そんな話をする為に今日来たわけではないでしょう。」
「いや、ですが…」
先程とは打って変わってやや高圧的な態度で彼は言葉を遮る。
「だからいいんですって。これから私の質問にだけ応えてください。あのテロリストの正体と目的。我々の今後の扱い。市長が何故依頼を受けたのか。ひとまずはこの位ですかね。勿論ですがありのままの事実のみを述べて下さい。こちらにだって面子と言うものが有りますしタダでは帰れませんから。」被害者なのだから幾らでも搾り取ってやろうと言う気概がキンノミヤの目から感じ取れる。
「いやちょっとちょっと待てぃ!」
ユーザが一旦待ったをかける。
「何だよいい所なのに。」
「お前本当にそんな受け答えしたのか?」
「いやだって…やっぱお金は欲しいじゃん?」
「答えになって無ーい!!」
背後の職員はキンノミヤの歯に衣着せぬ物言いと態度にあからさまに怪訝な表情を浮かべるが市長は一切表情を変えず
「分かりました。その通りですね。」
の一言で済ますものだから職員も何故下手に出るのかと呆れ果てるしかなかった。
「まずテロリストの正体ですが……ジャスティスの後継団体の傘下の組織の人間でした。」
「なるほど…でも確かにこんな事をしでかすのは奴ら位でしょうねぇ。こんな事を言うのも酷でしょうがある程度防ぐことは?」
「その指摘ご最もでございます。ジャスティス事件から5年しかたっていないのに……ですが後から調べて分かったのですがあのテロリスト集団。殆ど情報らしい情報が無かったのですよ。」
「殆ど?」
キンノミヤの眉がピクリと上がる。
「かなり小さい組織で今回の事件に関わった者全員が丸ごと組織の構成員でした。僅か10数人。それも全て金で雇われ戸籍も過抹消されており過去の経歴も碌に出てきませんでした。めぼしい活動もやっておらずこの為だけに結成されたのでしょう。」
「聴けば聴くほど杜撰ですね。とはいえども人1人殺すには規模が大き過ぎませんか?」
キンノミヤは彼らが
「ええ。ですから我々も色々な手を借りてその疑問について調べましたが何一つ分かりませんでした。」
「ここまで来ると逆にユーザが怪しいですね。」
と呟いた瞬間、市長達はハッとしたような顔になる。
(こーりゃだいぶお疲れの上余裕が無いな。でももう少し彫れそうだし稼げそうだ…。)
ごく僅かに唇の端を上げキンノミヤが問いかける。
「それじゃあ私がユーザの情報を仕入れるというのはどうでしょう?」
「はい?」
「灯台下暗しと言いますか?まあ気張って探すより身近な人間に見せる表情に真実が隠れてる事って無くも無いんですよ。勿論報酬は頂きますよ?」
「それは…どうでしょうかねぇ」
市長は「バカなこと言うな」と言うような苦笑いをうかべる。
それを見てキンノミヤは
「ですよね?流石に冗談が過ぎました。話を戻しましょう。我々の扱いについてですが…今出ている情報では負傷者の中に我々が入っていないようですが。」
「これに関してはこちらの方が安全と判断した結果です。」
「ほう?」
意外な返答が返ってきて少し驚く。
「さっきの組織の話に戻りますが……あの事件以降存在が確認何一つ出来ないのです。まるで最初からそんな組織無かったかのように。」
「そっそこまで徹底して……」
ジャスティスの周到なやり方にキンノミヤは舌を巻くしか無かった。
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