第17話 モノ語りはアクセル全開!

「おい、起きろ。今回釣るのはこの3体だ。」

ザッドに頬を叩かれ、ユーザは目を覚ます。


「え?……あぁ…はぁ、ああああああああああ!」

ザッドの一言でユーザは現実に帰ってきた。目の前にはバブルの職員もいる。職員達は心なしか不機嫌そうだったがユーザは気にも止めなかった。間髪入れずザッドを握り締め、顔を近づけ笑いながら説得する。

「なぁ、ザッドく〜ん今からでもこの依頼辞めにしないかい?」


「断る。海が我々を待っているからな。それにこれを機に我々の仕事が知れ渡れば事業拡大に繋がり、貴様の目的にも近づくだろう。」

ザッドにはきっぱり断られた。


「いやいやそうかも知れんが、普通こういうのってさぁ、小さな依頼からコツコツやっていて地道にかつ確実に利を得て行くんじゃないの?なんで国の1プロジェクトに参加せにゃあかんのだ!あぁーなんでこんな事にぃ〜」

頭を抱えながらユーザは感情を爆発させていた。


「嫌ならそこで勝手に喚いて嘆いていればいい。現に我の力を求めているものがいるのは事実だ。貴様らさっさと連れて行け。」ザッドは職員に自分を持っていくよう指示を出す。職員は指示に従いザッドを持ちそのまま行ってしまった。


「はぁ…マジで何様だよアイツ……」

ユーザはその場に寝転びボヤく。

「ボクも分かるよ。同じ付喪神だけどアレには付いてけないよ。」

「だよなぁ。」

乾いた声で2人は言い合う。


「大体何でこんな事になっちまったんだろうな。超常大陸でお前と会った時はまだよかったよ。」

ユーザは立ち上がって今までのことを話し始めた。

「なのにさぁ!守銭奴の逃亡犯やら海狂いの釣竿やら変な言葉遣いの自転車やら、なんでこんな変な奴らとばっかつるんでんだよ。記憶も全然取り戻せそうかと思ったら全然だし……!もうやってらんねぇよ!」


ユーザは頭を掻きむしり、体を振りながら騒ぎ始める。

「ユーザ落ち着いて!めっちゃ手が揺さぶられてるから!」

ハーズが止めるが一向に止まらない。すると、体を振った衝撃で衣服から何かが飛んでいきハーズに当たった。

「痛っ、なんか飛んできた。」

「どうしたハーズ?え?コレは……」


その頃地上では1人取り残されたリンがご立腹だった。

「あの白状物!何で最高にイケメンでゴージャスでパーフェクトでインフィニティでウルティマな俺っちを置いていくゥ!やっぱアレかタイヤの数か!4輪が良いのかチクショウ!」

「おーい。」

誰かに呼びかけられたがリンには聞こえていなかった。

4輪なのがいいのか!2輪はおとなしくギーコギーコやってろってかぁ?ざけんじゃねぇ!」

「おーい」

「もう誰よ!」


リンが振り向いたらそこにいたのは人ではなく馬車だった。

「ギャエエエエィ!!すみません!今のは口が勝手に言っただけで勿論本心な訳」

「そんな事はいいからさぁ。なんでも本舗ってここ?」

「ちょっとちょっと!聞き方というモノがありますでしょうが!もー!」

注意と共に中から人が出てくる


「え!アナタは……」

「え?あなたがなんでも本舗のリンさんですね。私はこういう物でして……」

男は名刺を差し出す。名刺には


バブル市長 ワーン


と書かれていた。


「え?でもさっき、職員が迎えに来たんじゃ…」

リンはここに市長がいたのが訳が分からなかった。さっき職員が迎えに来て、市長ばバブルに、いるはずなのだから。


「え?私は今来たばかりですが…え?」


「……じゃああの四輪は?」


その頃ザッドは怪獣フィッシングをしていた。

深海の奥深くにある鉱脈に糸を深く垂らす。海底は薄暗いがそれでも蠢いている巨影があった。

「どうでしょうか!行けそうでしょうか!」ザッドを握っている職員が尋ねる。

「まあ待て。釣りとはすなわち待ち。獲物との忍耐の闘いなのだ。でも我程になれば、」


捉えた。ザッドはリールを巻き取り巨影のベールを暴く。影はその姿を現し、ドサっと床にもたれかかる。


「これは?」

「深海怪獣ジラーガです。まさか開始5分で1体目とは」

「フッ当然だ。さっさと片付けるぞ。」

ザッドは再び取り掛かる。ザッドが釣りに夢中になっている間に職員はどこかへ消えていく。向かったのは市庁舎の誰もいない空き部屋だ。


「っふう……ずっと正装も堅苦しくてありゃあしねえぜ。」職員達は上着を脱いで長椅子にもたれかかる。

「ユーザがアレで死なねぇのは驚いたぜ。全の時もアイツは無駄にタフなんだよなぁ」

「ホントホント。アイツが死ねば私たち大金持ちになれるのに。さっさと死なないかな〜」


「首につけたあの時限爆弾がある。アレならイチコロだ。それにユーザを殺して終わりじゃない。オレ達の目的を忘れたか?」

「分かってるよ。怪獣達を暴れさしてバブルを占拠するんだろ。」


「っぶねぇ…死ぬ所だった。でも何で爆弾が?」

ユーザは奇跡的に難を逃れていた。爆弾が爆発した所には穴が空いている。


「ねぇ、もしかしてボク達騙されてない?」

ハーズの疑問にユーザも同意する。

「やっぱそうだよな。確か市長は海の男オーディションの時、怪獣を連れてお題を出した瞬間に逃げてただろ?曲がりなりにも怪獣の危険性をわかってるはずなんだ。なのに今回は3体も怪獣を釣れなんて言ってる。いくらザッドがすごいからって、同じ人間とは思えない。それぐらい怪獣っていうのはほんとに危ないんだ。」


ハーズも頷く。


「それにユーザさっき職員に聞いてたよね。何処かでお会いしましたかって。」


「…あぁ。」

「初対面って答えてたけど、さっきその職員。キミが目覚ましたときの顔すごい機嫌悪そうだったよ。絶対因縁があるんだって。」


「でもオレバブル来たの初めてだし因縁なんて……ん?何か声聞こえないか?」


2人は何かを感じ取った。耳をすますと、どこからか声が聞こえてくるのだ。その声は、爆弾によって開いた穴から聞こえていた。


「ここからだよな……おーい!誰かいますか!」


「助けてくれー!」

聞こえたのは、助けを呼ぶ声だった。2人はそれを聞いて、黙っていられるわけがなかった。


「大丈夫ですか?」

「何とか全員無事です。ただ…」

穴の下の部屋には人がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。ドアは鍵がかかっており全員手足を縄で拘束されて自由のない状態だ。


全員の縄を解いた瞬間ユーザは肩を掴まれ告げられた。


「貴方ユーザさんですね?今すぐここから離れて下さい!貴方は今命を狙われているんです!」

「どういう事ですか?」

「今この部屋意外にいる職員は全員偽物でテロリストの扮装なんです!ヤツらは突然この市庁舎を占拠したのです。この他にも拘束されてる仲間がいます。全員捕まったので、対処のしようがないんです。」


「ヤツらは貴方を殺したついでに怪獣を使ってバブルを完全に占拠するつもりです。」

「え?じゃあ怪獣がいて資源発掘が出来ないって…」


「全部真っ赤なウソなんです!発掘作業は問題なく進んでいます。」


「今ザッドがその怪獣を釣り上げようとしてんだけど、」

「絶対止めて下さい!いや逃げて下さいいや止めて下さいいや」


混乱する職員にユーザは笑顔で済ます。

「大丈夫です。全部解決して見せます。なんでも半端にお任せあれ!行くぞハーズ!」

ユーザはハーズでドアを無理矢理こじ開けザッドの元へ向かう。


「何が何でもザッドを止めるぞ。このままじゃテロリストに肩入れしちまう前に早く!」ユーザが市庁舎を駆けていると、何処からか声が聞こえてくる。

「お急ぎかーいそちらのナイスガーイ!」

「金の匂いが海底にもー?!」

「この声は!」

壁を突き破りリンが馬車を引いてやってきた。馬車には市長とキンノミヤが載っていた。

「規格外の6輪でオレっち参上!ほーれ乗ってけ!」

「分かった。」


馬車とクロスバイクのキメラビークルは市庁舎の中をひた走る。

「アクセル全開〜〜!」












































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