第13話 変わりたいならさっくり行っちゃえ!
「その後はどうなったの?」
ユーザは続きが気になり身を乗り出す。キンノミヤは聞かれたくないのかそっぽを向いていた。
「実は私も又聞きで聞いたので詳しいことは知らないのですが、どうやら家宝で得たお金でカントの誰もいない土地を勝手に安く買い叩き、その土地を外国の金持ちを騙して何十倍もの値段で売りつけていたらしいです。」
キンノミヤの豪快な手口にユーザは唖然とする。
「そっそんなのうまくいく訳…」
「いった。」
キンノミヤがキッパリと言う。
「あれは凄かった。自分でも怖いくらい金が増えたんだよ、何百倍にもな。売った宝も余った金で買い戻したんだぜ。それにその金で一応親孝行もする予定だったんだ。」
「マジかよ……住んでる世界が違うなぁ。」
「世の中金しか取り柄のない奴って割といるもんなんだってよーく知れたよ。」
「なのにさぁ酷いんだぜ。父上に二度と武士を名乗るんじゃないって追い出されてさ。母上は毎日泣いてて。弟や姉上にも軽蔑の目で見られるようになった。だから婚約者の家に勝手に上がり込んだんだ。」
「えっ婚約してたの!」
ユーザの驚きをよそに彼は続ける。
「そうだよ。で婚約者の家でも同じ事したら婚約破棄食らった。ついでに金持ちが嘘に気づき始めたから、腹いせに罪を全部擦りつけてやったよ。」
面倒臭そうに、キンノミヤは言う。
「」
ユーザ達はもう何も言えなかった。
「で俺は大金持ってここまで逃げてきた。であのオーディションでユーザを見つけて今に至るって訳だ。……なんか言えよ。」
「言えるか!」
(コレ、オレ達完全に逃亡犯の片棒担いでるようなモンだよなぁ……)
「ってかなんでオレの昔話披露会になってんだよ依頼を聞け依頼を。」
「……分かったよ。じゃあハーズ、まずそのハサミ起こそう。」
「分かった。じゃあ投げよっか。」
「え?いいの?」
ユーザはその提案に目を瞬く。
「前にもこういう事があってね。そうやって起こしたんだよ。ホーイ!」
左手をマインドコントロールしてハーズはハサミを投げる。
すると、ハサミは空中で開き出す。そして、キンノミヤノの頭目掛けて突っ込んで行く。
「キンノミヤ伏せろ!」
ユーザが叫ぶが、すでにハサミは真っ二つになっていた。キンノミヤノの手にはいつの間にか小刀が握られていた。
「……いつから仕込んでたんだ?」
ユーザは驚きを隠せない。
「これでも武士の端くれだからな。」
淡々とキンノミヤはどこからともなく出した小刀を消えていた。
「………」
ユーザは眉間に皺を寄せ黙り込む。場が緊張に包まれる。
「ピクピク動いてるし大丈夫だろ。のりでくっ付けよう。」
そのハサミは死にかけの魚の如くピクピクと痙攣していた。キンノミヤがのりでくっ付けたら何故か息を吹き返したのだ。彼は重い緊張が走る中勝手に話を進めていく。
「君の名前は?色々聞かせてもらおうか?」
「オレはハサミのキンセツだ。突然だけどタキガワさん!」
「え、何か?」
「俺を散髪用のハサミにしてくれ!」
「えええぇ〜!」
キンセツは勢いのまま雄弁に語り出す。
「オレあなたに作られたからの7年間。様々な紙を切ってきました。厚紙、和紙、羊皮紙……色々切ってきましたが…ふと思ったんです!人間の毛髪を切ってみたいと。」
「でぇーすぅーがぁ!」
突然の大声に一同がビクッとなる
「ワタクシは雑務用の平々凡々なハサミ。散髪に必要な繊細なカットができないのであります。」
その声は悔しさに満ちている。
「ですから!鍛治職人として!私に生を与えた?タキガワ様自らの手で、私を!生まれ変わらせていただきたいと存じます!!」
「なーんかむさ苦しい奴だな…」
「うむ。海のような冷たさを持って欲しい所だ。」
ユーザとザッドがボヤく。だがキンセツのむさ苦しさにより冷淡とした空気は溶けて消えていた。
「タキガワ、依頼完遂の為に出来なくてもやれ。コレは元主としての命令だ。」
キンノミヤは神妙な顔で語りかける。
「さらっとクズを発動しやがった!」
ユーザ一同がどよめく中タキガワの答えは一つだけだった。
「散髪用のハサミですか……作ったことはないですが。やれるだけの事はやります。」
「それでこそだな!」
キンノミヤは肩を組んで喜ぶ。
「なんか友情感出してやがる…」
「とりあえず近くの鍛治工房に連絡しといたから。カントの鍛治職人が来るって言った瞬間馬鹿みたいに興奮してたぞー。おかげで報酬もボッタクリがいがあった。最短で済ませよ。」
「は、はぁ…。」
キンセツを持ってタキガワは工房に向かった。
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