第11話 1111本と1000万カレンを得るまでの道

ちょうど同じ頃チェンジャーはまた一つ武器を奪い取っていた。


「これで記念すべき1000本目……っと。これは斧かなー?付喪神じゃぁなさそう。」

奪い取った斧をまじまじと見ながら言う。


「人のモノをそうやって盗るなんて……地獄に落ちるぞ!」斧を盗られた彼は言葉を絞り出す。


チェンジャーはその言葉を聞き一瞬ハッとし目を見開く。そしてすぐ表情を戻し、

「地獄か…。まだ行く気は無いねー。キョクアってとこにも寄りたいし。」

そしてニヤけながら、バックパックに目をやる。


バックパックは赤黒く染まっており。腐った血の匂いが漂い、完全な汚染状態だ。


「これはすぐ消毒せねばな。こんなものを放っておけるか!」


「確かに……これは…すごい風呂だな。」

「ボク今すぐにでも逃げ出したいよ。」


一方ユーザ達はブロブの家の風呂を見て呆然としていた。


「お前が度を超えたキレイ好きなヤツだと思ってたけどこれはぁ、強烈だな。」

「だろ。ウジ虫の巣窟になってる風呂場なんてありえるか?断じて無いな!」


「そっそうでしょうか?こんなもんでしょうよ。」

当然のようにブロブは言う。本気でわかっていない表情がそこにあった。


(どうやって風呂入ってんだよ。そもそも入らないのか?)


「2階もやばいぞ。人の住む空間じゃない。」

ハニモに促され2階へ向かう。すると、


「わぁー。いっぱいあるねー。これなら101本どころか110本目まで行っちゃうよー。」


同じ時刻。チェンジャーは盗賊10人組に取り囲まれていた。


「フッ、飛んで火に入る夏の虫とはまさにこの事…」


「貴様のプンプン香るその背負ってるのをよこせぇ!」

盗賊の1人が槍でバックパックを指す。


「悪いけどあげられない。地獄に行くまではねー。」

チェンジャーは寸分戸惑うことなく断る。独特の語尾が伸びる喋り方で。


「コイツ、ムカツク!死を与えねばならん!」


「活力十色な俺たちに引導を明け渡せぇ!」


「くらえー!」


「必殺!除菌サウスポー!」


一方その頃ハーズが雑巾を手にとるや否や床の埃がみるみる消えていく。


ユーザ達はあまりにも汚いブロブの家を大掃除していた。


「まさか持ち主の方が狂ってたとはな…」

「ホントだよ。リビング意外が本当に酷い。ゆうてリビングもよく見ると埃っぽいし。」


「そうかなー。こんなもんですよね。ね?」


「じゃああの2階のゴミ屋敷はなんだなんだ!おかしいだろ天井までゴミ届いてる。」


「え?凄あと思ったんですか?嬉しいです。」


「な訳ねーだろ!」


「え?ボクに武器くれるんじゃないの?」


そしてチェンジャーはあっという間に盗賊を倒していた。


「ナギ君、クランボ君。協力してくれてありがとう。まー1人でも行けたんだけどねー。」


「いえいえ。主は本日3回戦闘を行っております。そして3回目いに至っては10人を同時に……身体への負担なども鑑みて、これ以上1人での戦闘は控えていただきたいとの思いで。」


「そう?この程度ゴミみたいなもんだけど。」


「だーかーら!コレはゴミではありませーん!」

チェンジャーがは人間のゴミを処理していた頃ユーザとブロブは本当のゴミのことで、喧嘩していた。


「この小っちゃい服明らかに着れないだろ!」

「いつか痩せて着ます。」


「こんな埃だらけのタオルなんて…もう見るだけで虫唾が走る!」

「洗えば使えます!」


「こんなにカバンいる?」

「もしものことを考えてですよ?」


(ダーメだこりゃ。)

3人の思考は一致した。


一方7人の思考は不一致だった。


「もう武器は諦めよう。こんなのうんざりだ。」


「バカなこと言うな!取り返すぞ俺たち盗賊だぞ!」


「自分が元から持ってるの盗ったってプラマイゼロだろ。」


「そもそも勝てないからさ。これ以外もあげちゃお。アイツのご機嫌とろ?」


「アイツの手下になってもいいかなぁ。棍棒とか従えてるから人も受け入れてくれるだろ。」


「逆にアイツを取り込むぞ!」


「てか話アイツ臭くね?生臭いなんてレベルじゃねーぞ!」


「…………」

彼らの問答をチェンジャーと残り3人の盗賊が黙ーーーっていた。


「君達はどうするの?」

「貴方のおかげで目が覚めました。これからは真面目に生きてこうかなと思います。」


「じゃ残りの武器ちょーだいー!」

ニカっと笑ってチェンジャーは右手を出す。


「盗賊やめるならいらないでしょ。だからー。」

「分かりました。…ではコレを、」


「これで1021本目か。これで残り90本これで地獄に一歩近づいた………大収穫だー!バイバイー!」

鼓膜が張り裂けそうな大声でチェンジャーは叫ぶ。


「アーーうるさい!キレイになったからって浮かれ過ぎだ!」

ちょうど同タイミングでブロブ宅の片付けが終わり、ハニモは歓喜のメロディーを奏でていた。


「まぁいいや。依頼は一応解決で?いいのか?そういえば依頼料は……」

「今お持ちします。」そう言ってブロブは札の入った封筒を持ってくる。

(100万ナマで持ってこれるなんて、意外と金持ちか?)


そんなことを考えながらユーザは札を数える。100万カレンきっちり入っていた。

「100万やったぜ!」ユーザはあからさまにソワソワし始める。


「まぁこれからは2人仲良くしててくれよ。」

「あぁ。あの汚れは絶許だ。」

「はぁ、ありがとございます…別に普通なのに。」


あまりにも対照的な反応を横目に100万カレンの札束に心を叩かれたユーザは事務所への帰路へ立つ。ストリームの大通りを駆けていきながら。




































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