第6話 第一回海の男オーディション開催

ザッドは海の男の勧誘をしていた。

「キミ。良い面をしているな。海の男にならないか?」

「ホントに海の男に興味ないか?」

猛アタックだが今ひとつだ


「大海原が君を待っているぞ!」

「何故ならない?海に憧れないのか?」

「なんでだ?ならないのならば力づくで」


「やめろぉー!ホントスイマセン。では失礼ー!」咄嗟の所でユーザが止める。そして全速力でペダルを踏み込み、その場から離れた。


ユーザは息も絶え絶えで話し出す。「ハアハア…もう諦めろ。これで10回目だぞ…ハア…」

「まだ10回目だ。ウォータスからキョクアまでどんなに速くても2年近くかかるのだ。まだまだじゃないか。」


「もう10回目だ!出発から3時間!まだ引き返せる距離!で10回おかしいだろ!」


2人の口論を見ながら

「さっきからずっとこの調子だね。」

「俺っちはいいと思うぜーい。賑やかだし。」

ハーズとリンが横目で眺める。


すると突然ザッドが提案した

「よしじゃあ諦める。」

「ハッ?」

「エッ!」

2体が固まった。


「その代わり…第1回海の男オーディションを開催する。」


「「「第1回海の男オーディション?」」」

「あぁ。それをしたら諦める。」


「てか第1回って事はまだやるつもりか!」


「もうポスターも張り出した。」

「早すぎだろ!さっきから調子の良い事ばっか…わかった俺がなるからオーディションは無しだ。」


「もう受付は終了した。キミ達には審査員をやってもらう。」

「ふざけんな!」

こうして海の男オーディションが開催する事となった。


会場のホールには多くの観覧客が席を埋め尽くしていた。席にはクリゴやバカ医者、付喪神達もいた。


「これ見に来てんどういう層やねん…」

「ユーザさんも大変ですわね。」



舞台裏ではユーザが頭を抱えてため息混じりに言う。

「ハァ〜そもそも何でアイツは海の男を探してるんだ。」


「第1回海の男オーディション開催!」


司会が高らかに宣言し、会場は拍手に沸く。


「それでは早速初めて行きましょう。まずは審査員の紹介から。」


「審査委員長のザッドさんです。」

「良い出会いになる事を願っている。我の理想のために」

会場はどよめきに包まれる。


「続いて審査員の紹介。左からユーザさん。ハーズさん。リンさんです。」舞台袖から3人が出てきて審査員席に腰掛ける。


いよいよ審査が始まった。


「エントリーナンバー1番。ウォータスのホウスイから来ました。マイトと申します。参加した理由は…」


「理由等どうでも良い。海の男として何が出来る?それだけだ。」


(段取りと違うじゃねぇか!)

ユーザが心の中でツッコむ。


「…えと、素潜り10分出来ます!」

「その程度か。不合格だ。」


エントリーナンバー5番。バクバガから来ましたレンタです。100m70秒です。」

「甘い。次。」


その後もザッドは次々と参加者を不合格にしていった。その数述べ300人。


こうして残ったのが


元海賊カイト


元海軍将軍カンジ


海底都市バブルの市長ワーン


イルカ調教師オルドフ


ウォータス診療所のバカ医者デット


「待て待て待て!なんでこいついるんだよ!さっきまでの流れをぶった斬るな!」

「余りにもしつこくてな。一緒に旅したいと。」

「あと俺っちがゴリ押した。面白そうだし。」

「ンフフフフフ〜」

「うーわすごいニンマリしてるよ…」


「全員揃いましたね。それでは第1回海の男オーディションもついに最終審査となりました!審査委員長一言どうぞ!」


「ここまで残ったことは評価に値する。だがここからは一筋縄ではいかん。最終審査では君達にこれを釣ってもらう。」

ザッドが針に引っ掛けた紙を見せる。紙には絵が描かれていた。


その瞬間カイトとカンジとワーンとオルドフは目を見開き驚き間髪入れず、

「辞退します。」

といい足早に去っていった。


「フン。腰抜けめ」

「何を見たんだ一体…ってこれ無理だろ!」

ユーザは見るなり慌てた様子で言う。


「何だこれ?ただのイカじゃないか。」

「違うこれはイキッドだ!怪獣なんだ。釣竿で釣れるような代物じゃない。死にいくようなもんだ。」

「死ぬ?なーに言ってんだ。どれぐらいの重症か知らんが治してやる。私は医者だからな。」

胸を張って堂々と言うバカ医者にユーザは

「このバカ、何もわかって無い。」と呆れ果てる。


「ちゅかちゅーかさぁ怪獣中華さぁ、中華中華さぁ、釣ってやっとなれるって海の男って何じゃいの?会場のみんなもオーディション参加者もイミフじゃねーのか?」リンが大声で尋ねる。


「…今更聞くのか。海の男。それは…」

「それは…」

「誰にもわからない。それを知ろうとするのは無粋だ。」


「なんじゃそりゃー!」会場全員がツッコむ。


「分かんないならさ…もうザッドが海の男でいいんじゃないの?ボクもう疲れたよ」


「それは名案だな。よしじゃあ海の男の座は我のものだ。……何を黙りこくっているんだ?もうオーデションは終わったぞ。とっとと帰れ。」


沈黙を破ったのはユーザの言葉だった。

「オレコイツの図体また折っていいかな?」


会場は今までにない拍手に包まれた。



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