第5話 モノ語りは加速する。
店主が話し始めたのは、ある客の話だ。
「すごく慌ててる感じだったな。フードで顔は見えなかった。そいつは木箱を持ってきたんだ。でそれ置いて金も受け取らず行っちまった。」
「随分怪しいな。」
「え?そういう事もあるかもしれないだろ?」
「クリゴさんはすぐ信じすぎ。その木箱は?」
「怪しい物は幸いなかった。でも安心と思ってたらこれだよ。」付喪神を見ながら店主は言う。
「木箱に入ってたものは残ってないか。それも付喪神かもしれない。」
「売り場のは全部売れちまったなぁ。残りを持ってくる。」店主は店の裏に入っていく。
「ん?」
「どうしたのユーザ?」
「木箱に入ってる時お前らはなんで喋んなかったのかな…って」
「そうですわね。私は店に来た時からは確かにいしきがありましたでも直前の記憶と意識はないのです。」
「他の皆もか?」
「確かにそうだな。昔の記憶はあるはずの喋り始めたのはつい最近。」
「俺っちは昔からペチャクチャよ。その時寝てたんじゃねーの?」
「どーもおかしいな…オレみたいに記憶を消されたって可能性はないか。オレ記憶喪失でさ。」
「だろうな。磯の匂いがして我は目を覚ました。リンもユーザを助ける為目を覚ました。だが木箱の件、さらにその少し前は眠ったかのように誰も記憶が無い。そもそも何者かが木箱の物に手を加えた可能性は高い。」海が絡まないザッドは有能だ。
「持ってきたぞ。これで全部うわぁ!」
店主が例の木箱を持ってきた瞬間木箱から付喪神が溢れ出す。
「アッシはトンカチのカンチですぜ。いや突然狭いとこにいてビックリでございますよ。」
「ボクちん歯ブラシのラッシングだ。なんなのココは?」
「どもどもー!やかんのトウトルだよ!あっれれー?ここはどこだろう?」
「ワイは花瓶のビンスケや。いきなり狭いとこ詰められてえらいこっちゃ。」
「自分モップのモルプです。あの…別に言う事は無いっす。」
「やっぱこれって…」
「クロだな。」
「皆、突然だけど体に違和感無いか?」
突然バカ医者が一言
「違和感なら私が診てやろう。」
付喪神を手に取って色々吟味し始める。
「いや流石に医者でも無理だろ…」
「なんかあった。」
「マジかよ!」
「コレ注射跡だ。」
バカ医者が指差すとこには小さな穴が空いていた。
「お前割と役に立つな。」
「立つ?私今座ってるぞ。」
「そういう意味じゃない!」
「それにしても謎が深まったな。なんでこんな事を…一応木箱も見てみるか、」
ユーザが木箱の中を除いた瞬間。
「あ?……え?コレって……ああ!!何で!」
突然叫び出す。
「どうしたんだ。腹へったか?」
「違う……オレ見たことあるんだよ。」
ユーザは箱の内底のマークを指差す。
「そうだ…思い出した。オレこのマークのフードを着たヤツに頭を殴られて…そして、ダメだ思い出せない。」
「記憶が一部蘇ったの?」
「ああ、でもほんの一部一割も思い出せてない…ような気がする。」
ユーザは目を瞬き、そして前を向く。
「ここで繋がるとは思わなかったけど、確かめるしかないな。ザッドこのマーク知らないか?」
「これは…我等が祖国ラジョーア最北端の国キョクアの反社会組織チェインのマークそれと関わるとは…一体何者だ!」
「えっチェイン!」
「ほーんとぉー!」
「ホンマかいな!?」
「それはヤバいですぜ!」
「俺も飲み込めないぞ!」
皆その名前を聞いて慌てふためく。
「そんなヤバいのかチェイン…過去のオレも何してたんだか。とりあえずキョクアに行かないとだな。ハーズ、来るよな?」
「もちろん!ボクの記憶も取り戻さないとだし。」
「我もお供して良いだろうか。旅を通じて海の男に会えるかも知れんしな。」
「まぁいいけど。」(まだ諦めてねぇのかよ)
「知らないちゃ〜ん連れてっちゃったょ」
「うーんいいけどその呼び方やめろ。」
「私も連れてって!」
「お前にゃ無理だ。遊びに行くんじゃないんだぞ。ツミ、ラブクープ。コイツ真人間にしてくれ。」
「絶っ対付いてくからなぁ〜!」
二体に引きずられながら診療所に戻って行った。
「というわけで旅のお供も揃ったことだし」
「オレと!」
「ボクの!」
「記憶求め出っ発〜!」
クリゴ達に見送られユーザたちは進んで行く。
彼らのモノ語りはまた加速し初めたようだ
同時刻
「あれー?キミも付喪神なのー。これで二体目だぁー」
「ええ。その通りでございます。」
チェンジャーは相手から棍棒を奪い取り話しかける。
「キミの名前は?」
「ワタクシの名前はクランボです。」
丁寧で上品な喋り方だ。
「持ち主守りたくて覚醒したのー?」
「いえ、そういう訳ではなく物心ついた頃からこの通りですよ。」
「ナギ君とは違うんだー」チェンジャーはバックパックに詰めてあるナタに目をやる。ナギは眠っているようだ。
「無視すんなよ!棍棒返せよ!」
「黙ってて。」チェンジャーは喚く男に刃を向ける。
「よよよ〜!」男は走り去っていった。
気にも止めずチェンジャーは続ける。
「キミ意外にもいるのー?元から喋れるヤツ。」
「いますよ。キョクアに行けば。」
「そうなんだ〜キョクアか…面白そうだねー!」
こちらのモノ語りも加速し始めたようだ。
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