まさかの展開

 【二人きりの帰り道。夜風が優しく通り過ぎて行くのを感じながら、ゆっくりと道を歩く。この時間が1秒でも長く続きますようにとこっそり願うのも忘れなかった。】


「……よし、いい感じじゃんか」


 間違いなく美幸先生ルートに入っているはずだ。これはもう攻略したと言っていいんじゃね?後はこのまま選択肢が出てこなければいい(弱気)。

 すると、そこで変化が起きた。


 パァン!!


 【突如銃声が響き渡る。】


「銃声!?」


 思わず声が出た。

 何だ?何のイベント?


『い、今のは何ですかね?』


 神田川も明らかに焦りを見せている。その様子が画面とコントローラー越しに伝わってきた。

 だが、そこでさらに予想外の行動に出た人物がいた。


『伏せて!!』

『えっ?』

「えっ?」


 まさかの美幸先生に、つい俺まで反応してしまった。


【美幸先生が俺を強引に地面に押し倒すと、目に見えない何かが恐ろしい速さで通過していくのを感じた。

 得体のしれない恐怖に全身に寒気が走るのを感じた。でも、美幸先生の体温を感じると、どこか安心感もあった。】


『せ、先生……これは一体?』

『静かに。すぐ終わらせるから待ってて。動かないでね』

『それはどういう……』


 どういう意味なんだろう?

 もしかして……


【すると先生は身を翻し、俺の視界から消えた。

 俺は先生に言われたとおり伏せていた。

 とりあえず耳を澄ませていると、上の方からはさっきと似たような音が何度も聞こえてきた。

 な、何が起こっているんだ?これは夢の中なのか?】


 マジでどうなってるんだ、これ?いきなりジャンル変わったんだけど……。

 画面越しのドタバタだから、高みの見物をしていられるが、正直神田川が出てきた時と似たような驚きに、まだ気持ちが落ち着かない。

 アイツ、大丈夫か?

 格ゲーとかならまだしも、このタイプのゲームは選択肢が出てこないとどうしようもない。

 とにかく、物語を読み進めないことには先がわからないので、俺はおそるおそるボタンを押した。


【やがて騒音が鳴り止んだ。

 律儀に地面に伏せたままでいると肩を優しく叩かれたので、顔を上げた。

 するとそこには、顔に赤い何かがついたまま笑顔を見せる美幸先生がいた。】


『もう大丈夫よ』

『い、いまのは何だったんですか?』

『気にしなくていいわ。もう消え去ったから』

『消え……!?あっ、それより顔に、血……ですか?』

『ただの返り血よ。私のじゃないわ』

『返り血!?』

『それより、もう行きましょ』

『え?え?え?』


「…………」


 一旦電源きろうかな。




 


 

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