驚きの変化!?

「待て待て待て!」


 急に画面が停止して、神田川が画面から出てきた。


「もう恋愛どころじゃなくねえか!?日常生活すら不安になってきたんだが!!」

「気のせいだ」

「それこそ気のせいだよ!お前、こっから好感度上げるなんてできるわけねえだろ!」

「落ち着け。お前が一番振り向かせたいのは誰だ?」

「うっ……」

「そうだろ?だから……あんま気にすんな」

「お前がもっと気にしてほしいんだがな。まあいい。じゃあ続けるか」


 気を取り直した神田川が再び画面の中に戻ると、僕はさらにストーリーを読み進めた。

 とりあえずこれまでと違うことやらんとどうにもならんからな。まだ一人も攻略できてない俺があれこれ言うのもアレだが……。


『くっ、どうしてだ。なんでこうなった……』


 物語で神田川は勘違い野郎としてクラス……いや、学年で干されていた。特に女子は目も合わせてくれない。

 あれだけの事でここまで好感度が下がってしまい、正直プレイヤーとしても気落ちしてしまうが、とりあえずバッドエンドも一つ選択肢を潰すという今までは役に立つだろう。


『……俺の青春、こんなもんだったのかよ』


 打ちひしがれる主人公。どうやら今回は失敗か。いや、今回もか……。


『あの、どうかしたの?顔色悪いけど……』

『えっ?』


「マジか……」


 ここでさらなる変化が起こる。

 なんとヒロインではないはずの美幸先生がCG付きで登場した。

 ……おい、まじかよ。サブキャラのCGは珍しくはないが、これはまさしくヒロインのものだ。

 まあそれでも登場人物が画面から這い出てくる奇跡ほどじゃないだろうけど。


『いえ、俺が悪いんですよ。不器用でいつも失敗ばかりして……』

『そんなことないわよ。君はいつも頑張ってるじゃない。私は知ってるわ』


 強引な気はするが、なんか個別ルート導入の雰囲気だ。

 ……これで俺もようやく初の攻略達成か。感慨深いな。

 その後、先生は主人公の自宅で手料理を振る舞うという定番のイベントが発生した。


『どう?美味しい?』

『めっちゃうまいっす!最高です!』


 神田川の声には心の底からの喜びがこもっていた。まあ当然だろう。画面越しに見ている僕ですらこんなに嬉しいんだから。


『じゃあ、私は帰るわね』

『あっ、送らせてください!』

『ふふっ、ありがとう』


 ここでさらにイベント発生。いい感じじゃないか。

 こうまで上手く行くと、あとはこのまま読むだけでいたい気もしてくる。こんなに頑張ったんだから少しくらいいいだろ。無理か。

 まあギャルゲーってこうなったら、しばらくはほのぼのした空気が続くらしいからな。

 ……そう思っていた呑気な時期が俺にもありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る