別れ話
『なあ、俺達もう終わりにしないか?』
『えっ?そもそも私達付き合ってないんだけど……どうしちゃったの、いきなり?なんか気持ち悪いからもう起こしに来るのはやめるね。あともう学校でも話しかけないで』
「うわっ、ひど!」
「お前の選択肢がな!いきなり何してくれてんだ!」
「いや、ほら……せっかく新しい選択肢が出たんだから、試してみたほうがいいんじゃないかと……」
「……確かにそれは一理あるな」
思いの外すぐに納得してくれたので、俺はどんどん会話を進めることにした。
『おはよう』
『あっ、おはよう!』
話しかけてきたのはクラスメイトの庵野美鈴だ。もちろん攻略キャラの一人である。いかにもな仲の良いクラスメイトキャラで、時に神田川と悪ふざけをしたりするなど、悪友とも呼べる関係性を築いている。こういうキャラとお互いを意識し始める瞬間というのはギャルゲーの醍醐味の一つだと思う。
『何よ、朝から暗い顔して。あっ、わかった! とケンカしたんでしょ!』
『そ、そ、そんなんじゃねえよ!』
まあ、付き合ってもないのに別れ話をして、実質縁を切られたようなもんだからな。まあ、選んだのは俺だけど。
『よかったら相談に乗ってあげようか?』
お、これは今までにないセリフ……もしかして?
すると、また新しい選択肢が画面に表示されていた。
・相談に乗ってもらう
・話をそらす
・別れ話をする
これは悩ましい選択肢だ。非常に悩ましい。
そこで俺が選んだのは……
『美鈴、別れよう』
『えっ、何言ってんの?そもそも私達付き合ってない』
じゃんか。何急に?もう話しかけてこないで』
ひどいリアクションだ。
「てか、こいつ口悪いな。次から攻略しづらいじゃねえか」
「お前のせいだろうが!どうしてくれんだよ!開始早々幼馴染と女友達を失ったぞ!お前、俺に恨みでもあんのか!」
「落ち着けよ。さっきも言ったようにこれまでにやってないことをやる必要があるって言っただろ。これも必要なことなんだよ」
「……くっ、確かに。でもお前、面白がってないよな?」
「……………………いいからやるぞ」
「おいっ!間が不自然すぎて本音が透けて見えてんぞ!」
「うるさい。いいから続けるぞ」
そのままテキストを読み上げていくと、本当に今までとは違う物語が展開していった。
『何?もう話しかけないでって言ったよね?』
『しっ、しっ』
どうやら二人には本格的に嫌われたらしく、蛇蝎の如く嫌われているのが、画面から伝わってくる。こんな表情も用意されていたのか……。
「……ひでえなぁ」
「お前がな!」
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