8話 曖昧な気持ち


邪魔は入ったが、日課も終えて部屋の備え付けでシャワーを済ます。


着替えてから部屋を見てもエリシアは居らず何だか寂しい。


とは言え、あの使用人。

まだ動きはしない筈。


と言いますか、アレだけやってまだ来るなら褒めたいくらいです。


私、あんなのに負けるわけないのに、、、。



ガチャリと音がして扉の先へ向くと


「エリシア!」


彼女には何だかわからないけど一緒に居ると気持ちがポカポカする。

入って来てすぐに抱き付けば、、、


ーースカッ


あれ?


「ミコトさん!ダメですよ!昨日はあ、あんな事しといて!き、急に抱きつこうだなんて! 良い加減反省して下さい!」


「え、エリシア?昨日って?何かしました?」


「わ、忘れたの?わ、私はあんなに、、、、」

顔が赤くなるエリシア。

それを見ると何だかもっといじめたくなっちゃう。


でも、嫌われるのはイヤです。


だから、


「エリシア、えと、許して欲しい。」

私の方が背が低いので少し見上げる様にお願いしてみる。


「ぐっ、、ミコトさん。ワザとなんですか?」

何故かダメージを食らったエリシア。


「何がですか?」


ねえねえ、と聞いていみる。すると私でも気付けた。どうやらエリシアはこの"お願いの仕方"が好きなのだ。


だから、


「エリシア?許してくれる?」


と、先ほどの様にやってみる。

効果は抜群だった。


エリシアは私の肩を掴んで顔近づける。

眼は凄く真剣。かっこいいかもなんて思ったりしてたら。


「はあ、許します。あと、寝る時はベッドがもう一つ届くまで二人で使いましょう。」

2日目に部屋に戻るのが遅かったのはその話し合いと申請書を書いて手続きを行っていたかららしい。


何か、胸の所がチクっとして痛い。

明らかに不満そうな顔をしていたのだろう。

エリシアは不思議そうにしてどうしたの?と事もなげに聞いてきた。


どうしたも何も無いです!(むぅー!)


でも、顔を見て言うのは何だか恥ずかしい。

だから隙を突いて抱きしめる。


だが、思ったより勢いよく行きエリシアをベッドに押し倒す形となる。


私は必死に彼女を抱きしめる。

一緒が良い。ただ、それだけなのに言葉に出ない。


「み、ミコトさん?ど、どうしました?」

い、いえ、まず離れて、、、、ホントにどうしたんですかー!!


エリシアの顔は見えない。

見たい。でも、私は見られたくない。


「、、、、が、、い。」


「えと、何ですか?」


もう!

「一緒、、が、いい!」

一回で聞き取って欲しいです!

顔が熱いです。



でも、返事は無いです。

一緒に居たくないのでしょうか。

私だけだったんですか。


少しだけ彼女の顔のある方へ向くと、

エリシアは真っ赤になりオロオロしてました。


「、、、ふぇ?、、ミコトしゃ、、ん?」


思ってた反応ではないが何か可愛い。

真面目な顔して打たれ弱い一面が


あるなんてもっとーーー




あっ、、、そっか、、。




ダメです。この感情は。




彼女にこの感情は抱いては、、、ダメ。



だって、、、




そうなれば私はこの人と離れられなくなる。




ベッドから出て、、、


「揶揄っただけですよ!」

笑ってから部屋から出る。


これで良かったんです。

恥ずかしい事しちゃったのもきっとそうだったからです。


でも、、、


「忘れたくないなぁ、、、」


先程より足取りは重かったが昼食を食べるべく食堂へ行く。


辛いのがあれば良いなあなんて思いつつ。










彼女が部屋から出て行ってしまいました。

一緒が良いと言ってくれて、不快なわけ無かった。

でも、彼女は揶揄っただけだと行ってそのまま、、、



「私は一緒でも良かったのに、、、、。」

ですが、申請したのは私。


何でしょうか、この寂しさは。


彼女に迎えられた時、押し倒され抱きしめられた時、あんなに熱くなっていた心はすっかり冷えてしまいました。



彼女と会ってから私が私でなくなる様な感じがしてなりません。


試験会場で初めて見た時も胸が熱くなってつい


懐かしいだなんて


あるわけないのに。



あ、お昼の時間です。

あまりお腹は減ってないですが、食べなければ。



ベッドから起きて部屋を出る。

食堂へ向かって。



何ででしょう。


彼女がいただけであんなにも掻き乱されて思考が追いつかなくなるのに、無くなれば寂しいだなんて


「、、、わがままっ言うのでしょうか。」


誰が回答するわけでもなく。

ただ、霧散するだけ。



あ、食堂です。意外と遠いイメージですが案外こんなものなんですね。


席はーー


またです。咄嗟に彼女の事を探してしまいました。


人は少しだけ空けただけあってあまり居なかった。

カウンターで適当な料理を注文し、隣で待つ。



あ、いた。


料理を受け取りお礼を済ませてからその場所へーー


あ。


姫様と。


いたんだ。



やっぱり別の少し離れた場所に座って食べた。

時折り彼女の方へ向けば何やら楽しそうに会話している。


内容は分からないが姫様も砕けた表情をしていた。

私だけが舞い上がってしまったんですね。


ーーズキッ


胸に穴が空いたような。

何ででしょうね。


会ったばかりですのに。


こんな気持ちになるなんて。



料理は美味しい筈なのに味がしませんでした。

カウンターへトレーを戻し、部屋へ向かう。


部屋に着けば誰も居ない。


「当たり前ですね。姫様がいいんですから」


自嘲気味に呟いてもただ消えるだけ。

彼女の机にを見てみる。

あまりマメな人では無いイメージでしたがしっかりと片付けられており目に入る物はあまり綺麗な本ではなーー


ソレを手に取る。


「これって、、、」

見間違える筈がない。

私が歴史を好きになったきっかけの"レポート"


でも、2冊で完結だったはず。

しかし、ソレは3冊目のレポートだった。


作者も同じ。


彼女の私物であり貴族たる者こう言うのはしたないと分かっているが、ずっと探していた本が此処にあった。


悪いと思いつつも読んでしまう。














イルミアニスと食事をした。

使用人が迷惑かけたと謝罪されたが彼女が悪いわけではないので、大丈夫と言っといた。


相談ついでにベッドの件を話すと


盛大に笑われた。


でも、互いに忘れちゃう事などを話すと親身になってくれた。

時折りムスッとされた。


ただ、そういう時は決まって私の料理を一口上げれば機嫌は直る。


何だか可愛い、妹みたい。いた事ないけど。


食後に紅茶を飲みつつ会話をする。

その際にスキルで見たものについては語れないことも話た。


代償ではない。だけど、彼女が聞いて喜ぶものでも無かったから。

そうならない様に私がすれば良い。

幾度もそうして来たんだから、、、?


その後はそのまま部屋に戻った。

戻ればエリシアもいた。


私の机で伏して寝ていた。


その側には昔に誰かから貰った本。


大事な物で時折り読み返してはしまっていた本。

エリシアに見られても別にいい。

何なら恥ずかしいことを知られても、、、、


いや、知ってほしいと思っている。


何ででしょう?

ダメなのにこんなにも愛おしいと思ってしまいます。


彼女をそっと横抱きに抱えベッドに寝かす。

少し起きてしまったけれど頭を撫でてそっとおでこにキスを落とせば微笑んでまた眠る。


やっぱり好きです。


喉に出かかる言葉を再度飲み込み布団をかけて彼女を撫でる。

壊れ物を扱う様に優しく、流れに沿う様にそっと。


こんなにも近いのに遠く感じる。

私が原因なのは分かってる。


でも、互いに忘れちゃうなら最初からない方が良い。


何故そう思ったのか。


ーーきっと、私の後悔なのだ。


忘れても尚気持ちに残ったカケラ。

誰かに何を考えているか分からないと言われた事がある、、気がする。


でも、この世界に来てからは感情の制御が難しい。


気持ちを


感情を


隠したいと思ってしまうくらいには顔に出やすくなってしまった。



それはエリシアと接するととても良く現れる。



でも、彼女は忘れてしまう。

スキルなんて、、、欲しいなんて言わなければ良かったのかな、、、。


寂しいのはもう嫌です。



この先私はイルミアニスを手にかけ、色々な人に、、、英雄として扱われる。



そんな事にはしたくない。


断片的で分からないがその頃にはきっとイルミアニスも私も忘れている。


何故そうなるのか、回避は出来るのか考えるがきっと難しい。

それは数ある可能性が否定してる。


でも、エリシアの未来は最後まで一緒だった。

ただ、最後までと言っても最期ではない。途中から見えなくなってる。



"まるで私みたい"



何でそう思ったのかわからない。ただ、自分の先が見れないのと似ている気がした。


妄想かもしれない。

ただ、ソレをやって成功するのだとすれば、、、


いや、あり得ない。

何かしらで見えなくなってるだけ。


今はイルミアニスをどうにかしないと。



何ででしょう。私、何とかしたいと思っています。


何故でしょうか?世界に関わるからでしょうか。それとも、、、


私が彼女を守りたい?


今まで散々、種や因子を殺してきたのに?

助けたいなんて



この気持ちは何なんですか?



教えて欲しいです、エリ、、、シア、、





私はどうしたら良いのでしょう。

それ以上は問答しても分からず、彼女の寝顔を見て一緒に眠る。


やはり、彼女は落ち着きます。


手を回せば、反応する様に抱きしめてくる。

そんな些細なことでも嬉しくなる。


私は眠りにつく。
















私は夢を見る。


これは今よりも未来に起こる事。

凡ゆる事を試しても結果は同じ。


どんなに繰り返しても彼女を殺すのは私なのです。


彼女は王女。この国の王女様。


けれど、この国の人は彼女を恐れる。


だから何時も一人。


彼女も気にしない。


目的の為に全てを捨てた。


彼女に周りは見えていない。


国も民もこの先も。


その目的さえも。


だから私が成すのは正義の一撃。


でも、互いに気付くのはいつも後。


彼女は、、、


私は、、、


何かを失っている。


でもコレは、あくまで未来。

決定はされておらず、ただ、確定に近い未来。


私が差し出す時には既に手遅れ。


ああ、無力な私。


幾度もやり直しても結果は変わらない。



でも、確実に言えるのは



英雄になんてならなければ良かった。









あとがきーーー


読んでくれてありがとう!


いやー少しずつ語られていきますね、、、。

未来を少し提示して其処へ向かう様に、ズレが起こらないように。


でもですね。


読み返して足したりしてると思うことがあるんです。


あ、これ本当に彼女が思ったんだろうなって

作者から出た言葉ではないなってのが拙い文章ながら感じてくれれば良いかなって思います!



【プチ解説】

勇者って何?

勇者とは、世界が危機に瀕した際に生まれてその根源を断つ。

これは人類を救う者ではなく、世界を救う者。

人類が死滅寸前であろうと勇者が生まれることはなく、世界が終わりへと近づいて前進すると警報がなり、装置が作動する。

だが、大抵の勇者は人型をとっており結果的に人を救う事にもなるので勘違いされて伝承される。


転生者って何ぞ?①

転生者は、死して天界へと記録された情報体の結晶化したもの。基本的には人と大差はない。

世界に人を送られ世界を廻す者。

それは良くも悪くもある。

スキルを獲得しそれに値する代償を受けそれでも生きながらえんとす者。

愚かな者である。

しかし、全てを捨てても尚一つの目的の為に廻り続ける愚者も居たりする。

送られる時間、時代は大体同じにするが、自在である。(送る側の意見です。)


あれ?これだと別経由で来た転生者は、、、?

次回書きます。

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