extra 亡霊の背中を追って(後編)


エルクレン家から手記の写しを手に入れることができた。

其処には重要な手がかりがあった。


一先ず、追っている者を亡霊と名づける。

(一度死して、今尚現世に止まる意を込めて)

その者の大まかなデータが集まったので少しまとめようと思う。


性別は女性である。


見た目は子供である。


転生の儀で呼ばれた一人である。


今尚生きてるかもしれない。


もしかしたら命が複数ある。又は不死である可能性。


特殊な眼を持つ可能性。


国規模で記憶の改竄を施せる可能性。


妄想を入れると特殊なスキルによる代償がある可能性があるかもしれない。



ざっとまとめたものに目を通す。

亡霊の特徴はやはり少女であること、見た目が変わらないと書かれていたがそれはどの位の年月で成長するものなのか、100年なのか1000年なのか私達には到底検証が出来ない。


転生の儀で呼ばれた一人である。だが、他の二人には不死性は無い。カヨ様が十年周期でお姿がリセットされる擬似的で不老不死に小さい"近い"が心臓は一つ。

無くなれば、彼女とて死ぬ。


となればもしかすると、転生の儀の"イレギュラー"?


イレギュラー、数字的に表した際にでた余り。

だが、それは先ずあり得ない確率なのだ。銅貨一枚で賭博し、生涯困らないお金を手にする者が同時に500人必要になる計算だ。



そんな確立を潜り抜けて此処にきたのであれば、最早彼らとは何かが違う筈。


一つだけ考えられるのはスキル。

今までの文献では不死などは確認されてない。しかし、効果が転生者に近い物になっている。

ならばその上位互換?


それだけ取っても亡霊はイレギュラーである可能性ではなく、確信のようなものがある。



過去の古いある文献にはその少女がされたと思しき記録が残っている。

転生の儀の場所は現在、封鎖されてる。

理由は既にいるのに犠牲を経て呼ぶ必要がない。と、建前上はなっているが、私の権力と行動権限で中へ入って確認したこのがある。それと文献の照らし合わせである仮説が立った。



其処には魔法陣(半径が10mくらい。)と入り口側の方に黒いシミがあった。


儀の際には人は死ぬ可能性は大いにあるが、それは命を削って命ある者を呼び出しているからである。だが、どの国の記録にもシミが出来るほどの事故は確認されてない。


であれば儀の際にトラブルがあったかもしれない。

シミの向き的に転生者に"切り付け"られている。

呼ばれた際カヨ様とコウタ様の様子には焦りがあった様でとても、人を殺すことは出来ないでしょう。ソレ以外に複数人巻き込まれるものがありその者たちは器だけしか呼び出されず、亡くなったと書かれていた。


其処に一人、イレギュラーの亡霊。

其処でも仮に死んでいたとしても不死であるなら乗り越えることは容易い。


歴代の王には手記を残す義務がある。

其処で3代目の王の手記を何とか見ることができた。(日頃の行いは大切だと実感する。)


その手記の儀のトラブルが起こった時のものがあった。




『儀が滞りなく終えその旨連絡が来た。しかしその後直ぐに人が一人死んだと報告が上がった。流石に焦る。私とて先の内乱の件で忙しくしているのにと思考してたら、彼女がきた。


格好は白く、随分と薄手だが透けることは無い変わった服。それに似合わず赤い血が全身に掛かってる。


思わず頭を抱えた。だが取り乱しては王として失格、なればやる事は先ず話をする事だ。


彼女は聞く耳はあったらしい。其れに人は殺してないと言う。その様相、片手には禍々しき剣を持ちながら言うから笑ってしまう。


其処で彼女は言う。アレは魔族だと。観たから間違いないと。


あの場の人が気付かなかったのは魅力されてたからだと。


本当であれば、事件だ。国を揺るがすほどの。


それに続けて彼女は

“私はこの国を守りに来たわけじゃ無い。世界は守るがこの国、人は入ってない”

そう言った。イレギュラーだ。


ーー中略ーー


ーー私はあの首輪を付ける事は反対である。

が、今回はそうも言ってられない。彼女と交わした契約。一件此方に利が多く見える。

しかし、先の一件を聞いた限りだと大きく変わって来る。


儀で呼ばれる英雄達は基本的にレベルが一。

彼女もその限りでは無いが、人であれ魔族であれ転生直後に一閃し殺している。

作ったと言った剣も見せてもらったがアレは幻級以上あった。


この事から私は国を民を人質とされている。


だから、あの首輪を寝てる隙に掛けた。どんな者であれ外す事は敵わない。


ーー中略ーー


エルクレンに引き渡して直ぐ首輪が反応した。

反応という事はつまり彼女は死んだ事になる。国の危機は去ったのか?私は何か見落としが有るやもしれん。


ーー中略ーー


エルクレンで事件が起きた。使用人を殺す事件。私は貴族、平民の区別はするつもりは無いが代々で出来てしまった溝は深い。

そんな中で起きた事件。


当然騎士団を派遣し、家に向かわせた。

しかし、一言だけ言われて気付けば王城前にいたとわけの分からない報告が来た。

一人であれば良い。それが全員となれば不可解だ。


しかし、その言われた一言で気付く。


“許したのは一度だけ。二度は無い”と少女が言ったと報告された。


私は国を守り切れるだろうか。

いや、国は国と民だけは守ると誓う。

この先で継承して行く子孫達にもこれだけは理解し伝えるためにこうして書き留めている。


ーー3代目王の手記2より引用』


これはもう確定だ。


あの契約書はこの国を守る物。

魔王からでも他国からでも無い。


たった一人から。


私は密かにこれらを纏めて三部作の構成で本を作った。

数多くの者には知らなくてはならない物。

2代前の王が残した遺産を。



一部づつ期間を空けて販売していく。

これはあくまで歴史書のレポートと言う括りにし、尚且つ他の本と比べて出来は良くしかし平民の子供でも買える値段にした。


研究チームから批判はあったが、それも最初だけ。この者たちには全てを知る権利が有ると私が判断し話す事で了承を経た。


その際に全員と契約を交わす。

これは信用だけでは護れるものではない。

彼等にも私にもリスクはある。

それも快く引き受けてくれた、彼らには感謝しかない。





二部を売り始めて直ぐ、誰かが尋ねて来た。

此処の研究施設は部外者には伝えない様日頃から行ってある。


だから、来る者でノックなどする人は居ない。


しかも、夜。


私は意を決して開ける。


其処には少女。


外套を深く被っており見えてる部分で思った。

そう、来たのは少女なのだ。


取り敢えず中へ入れて紅茶を出す。


一応迷子なのかを聞いたが、案の定違った。


紅茶を飲み、少ししてから彼女は語り出す。


「あの本、読みましたよ。名前以外は大方合ってます。」


予想はしてた。だが、研究対象が目の前にいる。

その事に私は一種の喜びがあった。

だが、これだけ言うために来たのだろうか?

不安が募る。王の手記にもあるが200年も経っている、当時のままではないだろう。


「あー、今日はですね、あの本って読んだ限りなんですが次が最後で其処で色々確信に触れるかと思うのです。」


彼女はさも観て来た様に言う。

外套の奥で金色に光る目。


その眼をある者は綺麗だと言った。


しかし、私には恐怖でしかない。


彼女は私から逸らさず言う


「最後の本だけ、売るのやめて欲しいんです。色々理由はありますけど、貴方、殺されますよ?」


殺すではなく、殺される。

それだけでも良い研究になる。

しかし、まだ現代の王は未熟で私が付いていなければならない。


まだ死ねない。


ならば、決断としては決まっている。


「では、最後にお聞かせ願えますか?」


どうぞ、と彼女が言う。


「貴女のお名前を私にだけでも御教え願えますか?」


彼女は顎に手を添えて考えている。

しかし、それも直ぐやめて彼女は言った。


「そうですね、やめてくれるっぽいですし良いですよ。」


紅茶を飲み、一息ついて


「ミコトです。」







あれから、もう30年。


今は病に付してから側近を後見を指名してから療養の為、領地のベッドで過ごす。


手元には3冊の本。


ただ、一冊は私の今持ってるこれしか無い。

当時を思い出す。


三部目は出さない。


そう、研究チームに告げたときの反感は凄まじかった。それはそうだろう最後の本が彼女も確信に触れていると言ったから。


それを出さずしてこの研究は終われない。


だが、掛かっている物が当時には大き過ぎた。

その旨を彼等に話す。

彼女の名は伏せて。


それでも、気づいたのだろう


誰が来たのか。


問い詰められたが名前は聞けなかったと通した。


だが、我らの研究は大凡合っているそうだと告げれば先程から変わって喜んでいた。


名前など、誰も気に留めなかったが。



その後は研究資料を全て破棄。

一つの例外もなく。


だから、この手元に残る最期の一冊は


「旦那様、お客様です。」


ノックと共に使用人が声を掛ける。



「入ってもらってくれ。」


程なくして、彼女が入って来る。


「側近だったのに意外と辺境なんですね。結構探しましたよ。」

少し不安気なその少女の声。

昔聞いたものと変わらない。



「すまない、此処まで来て頂いて。」


そう言ってから手渡すのは世界に一つだけの最期の本。

これは昔に交わした約束でもある。


売られなければ私は死なないが、売られなければ本の中身もわからない。

文才は無かったと思うがその少女は気に入ってくれたらしい。


「ありがとう。これで約束は最期です。」


「ああ、また、貴女に敢えて私も良かったです。」


彼女は少し考えた後に

「その病、治しましょうか?」


私は、、、。


「後、どれくらい生きられるでしょうか」


「うーん。明日の、、、朝ですかね?」


「では、2日だけ伸ばす事は出来ませんか?」


「わかった、この本の代金。渡します」

そう言うと此方に手を翳し魔力を込める。

光が私を包んで直ぐ消えた。


「よし、これで大丈夫です。2日は立って歩いたり出来ると思います。」


ですが無理は禁物ですよ!と言って部屋から出て行った。

その後に魔力反応で何人か使用人が来て大騒ぎし、私を見てまた騒ぎになった。



明日に来る息子とその妻と子供。

それに立ち会えただけでも私は彼女に感謝している。






「久しぶりです、父上。病で長くないと聞いたのでーーー」















あとがきーーーー


投稿遅れ,すまん。


理由は幾つかあるが、第一に勝手に動くもんだから国は滅ぶ手前だし、、(しっかり没です。)


英雄の一人は拷問されるしで少し軌道修正をはかってます。


ですので、extraで何とか、、、


【プチ解説】書き忘れ


神様、それは情報体の管理役。

願いや力を与えて試練を課す。

其処に意味はなく。


ただ、世界の運営の為にーーー

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