extra ? エラー


ここは?知らない場所だ。


眩しい。

辺りを見渡す。

病院の病室みたい。

頭がゆらゆらする。

痛いし、どうしてここにいるんだっけ?


頭を支える様に手を添える。頭には包帯が巻いてあった。

体を見ると所々擦り傷がある。

大怪我ではないものの、それなりに怪我をしたらしい。


私今日は何してたんだっけ?

思い出そうとしてもズキズキと頭が痛くなり、思考がまとまらない。

何でこんな事になったんだろう?

何も分からない。


ただ、早く此処から出たいと思った。

身体が痛い、頭も痛いだけど行かなきゃ行けない。


何処へ?


何しに?


分からない。

でも、ここに居るだけで、動かないだけで胸が苦しくなる。

起きたばかりだからかも知れない。


考えない。

考えるより先に動かないと!

身体は動く。


なら!大丈夫!


私はベッドからゆっくり降り、病室のドアまで目指し歩く。


息は段々と荒くなってきた。


足は重く、視界は歪む。


それでも不思議と動ける。

あの人が心配だから。


、、、


、、、、?


、、、あの人って?


一瞬、集中が途切れる。途端に動けていた身体は膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れる。


視界が徐々に暗くなっていく、、、


病室のドアが開き誰かの足が此方に迫ってきたところで限界が来てしまった。






私は夢を見ない。

でも、不思議な夢を観た。

それは、こことは別の世界。


剣と魔法のファンタジーな世界。

観た事ない動物、物語であるような大きなお城に城下町。


そこで私は貴族?の様な立ち位置の人として生活していた。

見た目は今とは全然違うけど所々で私だと分かる癖があった。


安心させる為に昔からお母さんが良く私を抱きしめてくれた。それはとても優しく、すぐ泣く私をそうして頭を撫でてくれる。

嬉しいと思った。


だから、私も良く抱きしめる様になった。

妹が泣いていたらお母さんと同じく抱きしめて撫でてあげる。そうすると妹は笑顔になって抱きしめ返してくれる。


そんな他愛もない様なもの。


この夢はビデオを早送りにした様に観てるような感じでそれには干渉できない。


そんな夢にもある時から私と同じ様な人が私の家で一緒に生活している。

見た目は私よりお姉さんで、優しい顔をした女の子。

常に私の横にいる。それだけ見てると私より子供だ。

段々その子を追う様になった。


だけど、いつの間にかその子は居なくなっていて、私も随分と大人になっていた。

もうシワくちゃのお婆ちゃんだ。


お城がない場所に移動していて、そこで私の旦那さん?と暮らしていた。

家の裏の畑を二人で育ているだけのそんな平和な暮らしをしていた。


シーンが家の中に変わった。


私と色々な人が何かをしていた。


何かを作ってる?

カガクシャ?だっけ?こう言うのって。

お母さんは凄い人だと言っていた気がする。


作っているのは眼鏡?でも眼鏡が一つだけしかないのもある。

皆凄い真剣だった。


私はそこで驚くもの見た。

突然いなくなった、あの子がいた。

あの子は前と見た目が変わっていなかった。

けど、目は何か黄色くなっていた。

からーこんたくと?だっけ?


おしゃれしたのかな?


そこでも私とあの子は仲良しだった。


少しだけモヤモヤした。私の方が、、、


真剣に眼鏡を作ってる時はあの子は居なかったけどその途中でお菓子の時間があってあの子と私は楽しそうに喋っていました。






それから物は完成したようです。

いっぱいの人を呼んで見せていました。

皆凄い喜んでいて私も何だか嬉しい。


けど、あの子は何だか浮かない顔をしている。

私ならあんな顔させないのに、、、


部屋は暗くなっていた。

私が部屋をでて何処かに行くと、あの子がいた。


その時あの子の花の咲いた様な笑顔を見た。

凄く綺麗でお婆ちゃんの私が羨ましいと思いました。


私ももっと近くで見たかった。






私が箱に入れられてお花をたくさん飾っている所に置かれて人が沢山来ていました。


でも、皆の顔は暗かったです。

私でも分かります。

死んじゃったんです。

でも、私の事だからなのかあまり悲しくは無かった。


皆白いお花を一本ずつ私の入ってる箱に入れていきます。


そこであの子を見ました。

泣いていました。

ずっと、泣いていました。


でも、誰も抱きしめてあげません。


なら!


私の自己満足かも知れない。


私はあの子に笑っていてほしい。


考えるのはそれだけ、その一心であの子のところへ行く。


私の大好きなあの子の為に。


やっとの思いで着いた。

あの子を抱きしめる。


でも、私が通り抜けてしまいます。

一度でも良いから彼女を抱きしめて撫でてあげたい。


何度も何度も何度も抱きしめようとしました。

でも、出来なかったです。

だから私はあの子の頭を撫でる様に頭に手を置くフリをします。


あの子の方がお姉さんですから私は少し背伸びをします。


目の前で泣く彼女を止める事が出来ない。

あんなにも好きなのに。



だからね!



私の大事なものをあの子にあげたの!


初めてだったけど上手くいったと思うわ!



お母さんも好きな人にする物だって言ってたから、


だからね、


泣かないで


私はあの子に笑っていて欲しい。

だから私は彼女の唇に自分の唇を置く様にする。

初めてするキス。

あの子は気付かないけど私はここに居るよって教えるんだ!



あっ、ドキドキしてたら段々眠くなっちゃった。

目の前が暗くなる。夢から醒めるのかな。

またあの子に会いたいなあ、


会ったらまた、、、















「ーえり!」

お母さんの声が聞こえる。

でも、目が重くて開けられないや。

頭も痛い、さっきより身体も重い気がする。


頑張って目を開ける。


お母さんが抱きしめてくれる。

あったかいなあ。


「お、、母さん?」

目が覚めて初めて出した声は随分とか細く、弱々しい。


「良かった、良かった」

と、お母さんは泣きながら抱きしめて、少し痛かった。


お医者さんにお母さんは何か言われて離れて行った。



私は翌日何が起きたのか聞いた。

私が信号を渡っていた時に車がぶつかってきたらしい。その時に近くにいた人が助けてくれてそんなにケガをせずに済んだ。


その後にお母さんにお礼がしたいと言ったけどその度に抱きしめられた。


ただ痛かっただけだった。


病院での生活は退屈でベッドから出る時はナース?のお姉ちゃんに頼んで偶に院内を歩いて回る。


その時にある話が耳に入ってきた。

それは事故で車に撥ねられた女の子の話。

でも、まだ意識は戻っていないというもの。


ナースのお姉ちゃんは私が見るとただ優しい顔で

「そろそろ戻ろっか?えりちゃん」



それ以降お願いしても病室の中から出る事が出来ず、トイレの時とお風呂の時以外はベッドの上にいる事になった。















中学生になった。

事故の事はもうあまり憶えていない。

でも、夢は何度も観た。


こことは違う世界。


友達に言っても、笑われるだけ。


お母さんにも言ったがあんまり信じてくれなていない。

でも、生活は大きく変わった。


妹と私は常に一緒にいる事が多くなった。

お母さんも私達が家に帰る頃には帰ってくる様になった。

お父さんも早く帰る日が多くなって皆で夜ご飯を食べる日が増えた。


勉強も遊ぶのも妹といるのも家族で過ごすのもみんな不満はない。

とても良い。


事故があってから3年。


私の中に何かがなくなった気がして、落ち着かない時がある。

無性に泣きたくなる時が増えた。


お母さんや他の人も気付いてはいるけど誰も何も言わず、見守ってくれる。


みんなに迷惑を掛けている。

分かっている。


でも、止められるものでもなかった。



大抵その日の夜は夢を見る。


あの夢、


こことは違う世界の夢。


私は貴族の娘。でも、見るたびに別の人になっていて、それぞれの人生を歩んでいた。


時には男の子になって可愛い女の子を助けたりしていた。

でも、あの子はいない。


もういなくなってしまったのかな。

また会いたいな。





夢から醒めると夢の事はぼやけてた様に次第に忘れる。

私の日常は少し暗めなスタートを切る。


いつもの登校。いつもの教室。いつもの授業にお昼ご飯。

でも何かが足りなかった。






私は明日からは高校生!

中学の時は不安定だったけど最近は特にそう言う事にはなる事なく、普通に生活している。


夢はもう観ない。


明日は入学式!

視力が中学から下がり始めて眼鏡をかける様になった。

でも、明日からはコンタクトでプチ高校デビューをするんだ!

そして、彼氏も作って楽しい青春を過ごす!






その後、私は母から事故の話を聞く事になる。


入学式を終えて、デビューを果たした。

お母さんと妹と一緒に写真を撮って、帰路に着く。

家に戻ると母から話があると呼ばれて私と母だけになった。


そこで聞いたのは事故の際に助けてくれた女の人の話。

事故にあってからまだ意識が戻っていない事。お母さんは心配をかけたくなくて言い出せなかった。

その事を泣きながら言われた。


どうしたら良いのか分からなかった。

急な話だったから。


でも、6年もの間その人は目を醒さないでいるらしい。


見てみたくなった。

嫌な人と思うが、生きててその境遇になる人は多くはないだろう。

だから興味があった。


そこでお母さんに頼んで病院を教えてもらい、そこへ行ってみた。


ガラス越しでたくさんの機械があって真ん中にその人はいた。

その子は頬は痩せこけていて髪が無造作に長かった。



見た時、泣いてしまった。

いきなり泣くものだからナースさん達には随分と困らせてしまったと思う。

でも、彼女を見て泣かずにはいられなかった。


小さい時によく見ていた夢。

そこは此処とは違い魔法のあるファンタジーな世界。漫画や小説の様な世界。


そこで私に似た人と一緒にいた女の子。

初めて好きになった人が


色々な機械に繋がれて寝ていた。



それからは家と学校の間にある病院へ欠かさず毎日行った。病室内は入る事は出来なかったけど、眠る彼女に今日あった事を出来るだけ話続けた。


高校デビューをし、彼氏を作ると言っていたがその情熱を全て彼女に注ぐ事にした。


勉強も常に上位。

運動は人並みだがそれでも彼女が醒めるのを願って自分の出来る事をする。



気付けば三年生。


そこで事が動き出す。



彼女が息を引き取ったと言うもの。

いつものように病院へ行くと慌ただしかったのを憶えている。


そこで仲良くなったナースさんに話を聞くと、悲しそうな顔で彼女の事を話してくれた。


そこから家族の者以外は立ち入る事が出来ない場所になっていて、どうすることもできずにただ座って彼女の家族を待った。


ずっと座って待っていると誰かが話しかけてきた。ゆっくり顔を上げると私のお母さんより綺麗な人がそこに立っていた。


彼女のお母さんらしい。

そこから私はこの二年の事をポツリとこぼす様に話す。

彼女のお母さんは何も言わずに隣に座り聞いてくれた。

夢の話はしなかった。


言い終わると、次は彼女のお母さんが話してくれた。

彼女は命と言う名前であまり感情を表に出る子では無かった事。

好きな事、食べ物の時は少しだけ表情が見える事などを話してくれた。

そして事故に遭った事。

人を助けて事故ったことを聞いた時は驚いたらしい。命は勉強は出来たが運動はからっきしだったかららしい。


でも、二年ほどが経過し目を醒さない彼女を見てると辛くなり見舞いには行かない様にしていた。


病院に呼ばれて来ると私がいたと話してくれた。




そこから葬式には私も出られる様に頼んで了承を貰い、連絡先を教えて家に帰った。




葬式当日。

式は身内だけの小さいものだった。

それに出させてくれた命のお母さんには感謝しても仕切れない。


私は彼女の前に立つ。

化粧がされており病院で見た時より綺麗になっていた。

私は夢に見た彼女を好きになった。

その彼女と何度も会えないかと思っていた。

でも、もう彼女の声を聞く事は出来ない。


やっと、、


やっと会えたのに。



病院でも家でも泣いた。

止まる事はなく泣き続けた。

だからもう枯れてしまったと思っていた。


でも、彼女の顔を見ると涙が出てきて止まらない。

夢に見た彼女もこう言う気持ちだったのかと今更になって気づく。


私はわたしに失恋したのだ。



その後は命の両親と少しだけ話をして家に帰った。


その夜に不思議な夢を見た。

内容は覚えていない。少しも。


でも、その翌朝は気持ちの良い目覚めだった。

その日から私は夢を見なくなった。


彼女の事も段々と忘れていった。



今では私も社会人としてバリバリ働いています。

大学生の時に何人か男性、女性とも付き合ったが長くは続かなかった。

理由は私らしい。皆から私(俺)を好きじゃないでしょと言う。

好きだから付き合っている筈。

でも、皆からは愛されてる感じがしなかったと言われてそれからは誰とも付き合っていない。


仕事が忙しいと言い訳をして母からの結婚の催促を交わし続ける。


妹は私より先に結婚し、最近子供が産まれたと母から電話で聞いた。

写真を見ても可愛いかったが羨ましさは無かった。


ただ、何かに急かされる様に仕事に打ち込んだ。

結果、過労で入院。


今は病室内で療養している。


母や妹、父が早くに見舞いに来た。

凄く心配していて少し怒られた。


そこから一週間で退院でき、そこから仕事に再度復帰しようとしたが


会社側には迷惑かけてしまっていた様でもう私の居場所は無かった。

退職をして家で何もしない日々をおくる。

散々働いていたのでお金に余裕はあった。


ただ、仕事が私の全てだった。


そこからは早かった。


最初は食べ物を食べると決まって吐く様になった。

食欲も湧かなかったが食べてると味が分からなくなっていた。

結局食べても味も分からず吐くだけ、元同僚で仲が良かった人が何人か尋ねてきたがこんな姿は見せられなくて追い返し続けていたら、


誰も来なくなった。


母親や妹からのメールは次第に煩わしさを感じスマホは解約して捨てた。



そこから何日たったか分からない。

身体は痩せ、動かそうにも動くことすら出来ずにひたすら仰向けに寝てることしか出来ない。


それから何分、何時間、何日か経って視界はプツリと真っ暗になった。









最期に願ったのはあの子との再会。

私としての記憶が無くなったとしてもまた彼女に会いたい。


それだけ、


本当にそれだけだった。



気付けば明るい所に立たされていた。

神殿の様な教会の様な、そんな場所。

身体の気だるさなどは無くなっており、死んだのだと理解するのにはさほど時間は掛からなかった。


顔をあげると目の前にはナニかがいた。


綺麗で人ではないの様な、、、そう


神様がいたとしたらあんな感じなのだと思った。

だから本当に神様だと言われた時、驚きはしなかった。


神様は言った。

『願いを聞こうと。』


私は何も言っていない。

でも、神様はそう言った。


ただし、願うものの大きさによって対価を支払うらしい。


今までの人生の頑張りを見てたから無償で願いを叶えるものでは無かった。

でも、考える時間は要らない。


もう決まってる。


対価が何だって構わない。

ただ、彼女に会いたい。


それだけなのだ。


その事を言うと神様は少し考えてから言った。

対価は前世の私の記録の抹消、今のこの会話も無かった事になる。

今までの人生が無くなる。


その代わりに会いたい者に会う事ができる。

だが、その者は私を知らず私も知らない。


普通なら諦めたかもしれない。


でも、


それでも私は、、、


「お願いします!彼女に、命に合わせて欲しいのです!」


必死だった為か口調がおかしくなっていたことに私は気付かない。

神様はそれを見て、表情が揺らぐ事は無かったが了承してくれた。


それから私の身体が徐々に薄くボヤけていき私も次第に何も感じなくなって行く。


最後の最期まで彼女との再会を願って。






















「ミコトさん、私は貴女が____」










あとがき


蛇足になるが小出し情報を少し。

と、読んでくれてありがとう。

この物語戦闘シーンねえなと思った人、

まだ出ないだけであるにはあるのでご容赦を。

【プチ解説】

この物語上人は死ぬと一個の情報体として神殿の様な場所に記録として保管されます。


対価、つまりは願いに見合うもの。

彼女にまた逢いたい。それだけだった。


その願いに見合った対価は自分の記録、情報体の削除。だから『えり』と言う女性はいなかった事になる。家族からもその記憶、それまでの痕跡の全てが無くなる。

自分というのが知覚する事はもう無い。


きっと、これからも彼女は繰り返すのだろう。

それは彼女とは反対の道。


願い、それは神が都合良く解釈し起こす奇跡の様なもの。ただ、願った者と一致してるだけで結果は歩みを進めた愚者にしか分からない。

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