4話 相部屋
「ぅん、しょっと。」
荷物を寮内の決まった部屋に置く。
今日からここが私の部屋。部屋の内装は元々は貴族学校と言うこともあり、其れに合わせて一部屋が大分広くなっています!
何故ここにいるのかと言うと〜
何と!
「受かったのだ〜」(腰に両手付け、1人でドヤる)
あの後学校の先生を尋ねてギルドカード渡し、後日の面接を経てここにいるのだ!
(ま、まあ流石にギルドカードは偽装しましたけどね、、、)
魔力は先生の少し高めに設定して、後は適当に消したり増やしたりして、、、バレずにここまで来たのだ!
それは置いといて、何とこの学校の寮は入学の5日前から入る事が可能で今日がその5日前。
やー待ってました!正直異世界と言えば学校に寮生活な所があると漫画で見た事があります。
ですけど、いざ来てみれば寮が付いてる学校てあんまり無いんですよね、、、
冒険者やって宿代と学費を払うみたいな事が多くて楽しいくはあったけど大変でした。
はあ、最高です。しかもここは貴族も平民も関係なく一緒の部屋になるそうですが、貴族は使用人と一緒に部屋を使うのが大半でその際に平民の今回の合格者人数は奇数で1人余るのです!
私は何とこの広い部屋をひとー
ーコンコン
突然のノックです。何かの確認でしょうか?
恐る恐る部屋を開けます、、、
「今日から貴方と同じ部屋に身を置くことになりました。エリシア=エルクレンです。」
1人じゃなかったです。
「あら、ミコトさんでしたのね。丁度良かったですわ。入りますね。」
そう言って彼女は部屋に入りテキパキと荷解きをする、
そして
あっという間に
「ふう、こんなものですね。」
早い!
え?使用人さんがやったりするものじゃないの?
「え?使用人さんがやる物だと思ってました。」
思った事をそのまま口に出すと
「そうね、両親からも最初言われたわ。でも、貴族以外はそうじゃ無いもの。私は常に公平でいたいの。」
だから、説得して使用人を外してもらったの。
それに楽しみだったのよね、家の者じゃない方とこうして生活するの。
そう、言った彼女は見た目こそ大人びていたが
その顔は年相応の幼さが見える。
私も最初こそ1人で舞い上がっていたけどエリシアと2人で三年過ごすと意識すると、良いなって思う。
でも、私はどんな高潔な人であれ
どんなに邪悪そうな人であれ
私は信用していない。
会話はするが決まってやる事がある。
其れはこの世界に来た時から自分に誓約したものであり、
神様?から与えられた生きる目的の一つでもある"この世界を守る"と言う代償を恙無く行う為の行為でもある。
だから彼女をの様子を見ながら、スキルを行使する。
そこで見たものは、、、
「え、この部屋って何か幽霊とかいたりするのかしら?」
彼女は周囲を見渡しながら最後に私を見る。
けど、彼女は最初こそ笑っていたけど顔が引き締まり真剣な表情で此方を覗く。
そのまま私の顔まで視線を下げて両手で私の目を拭う。
その時に私が泣いていたことに気付く。
私でもこんなのは初めて、、、はじめてのはずなのだ。
見たあの光景が忘れられず涙が止まらない。
誤魔化すように
「花粉症って、、ずびっ、、い、いやでじゅよね、、ずずず」
言うが彼女の表情からはその真剣さは抜けない。何を言うべきかを考えても纏まらず、涙を必死に止めることしか出来なかった。
服の袖で目元を拭こうとすると
「其れでは目が腫れてしまいます。」
此方をと、ハンカチを差し出して来た。
無遠慮に手に取り目元を拭う。
話かけられて少し冷静になると目元からはもう涙は流れて来なくなった。
「すいません。少し失礼しますね。」
空いてる手で片手大くらいの水球を作る。その中にハンカチと私の魔力を込めて更にその周りを汚さない様に魔力で覆い極小さい結界を作る。
その中でハンカチを、、、
前世で言う洗濯機の様に回転させて私の魔力で汚れを落とす。
その際にエリシアは此方を興味深く見ている。
へぇ、凄い。こんな風に使う人見たことないわ
等、実に楽しそうです。
良かった。もう私も大丈夫。
そして空いた片手で窓を開け、下を確認してからハンカチだけを取り、花壇の辺りに水球を投げて花に水を与える。
一見汚水をぶち撒けただけと思うかもしれないが、この世界の花に魔力を込めた水を与えるとその花が早く咲くのだ。
彼女にも一応説明して、手に残った濡れたハンカチを少し投げ風を起こす。強すぎると部屋が消し飛ぶので加減は必須。
風邪を起こしてから再度結界を作り、球体の結界内で水気を飛ばす。
そうしてある程度水気を飛ばし結界内に水分が出たらまた花壇に飛ばす。
最後に火と風を調節して温風を起こしてから綺麗に畳んで彼女に返す。
「ごめんね、汚れはもうないと思うけど不快だったらもう一回洗うから」
見てた彼女も恐る恐る手に取り感触を確かめ、広げてまた、畳む。
どうやら彼女は満足したらしい。
そのハンカチをポケットにしまうと、
「今の魔法って攻撃魔法よね?しかもあんなに精密に凄いわ」
エリシアは私の両肩に手を置き聞いてくる。
さっきのは忘れてくれたのかな?
「そ、そうだね、生活魔法も使えるけどこっちの方が何か馴染み深くて、、、」
「へえ、そうなの?珍しいわね。」
肩から手を外し、一拍置いて
「まあ、魔法に関しては今後聞きますが」
先ほどはどうして私を見て泣いたのかしら?
表情はまた真剣そのもので誤魔化せていなかったと気付く。
別に秘密にしているわけではないし、過去に言った 事もあるだろう。
でも、見たもの、光景は言えない。
これは予言ではない。無数の枝分かれになったルートでも終わりは必ずある。
其れが最悪しかないものであっても例外はなかった。表面上の説明で許して貰えるだろうか、と半ばドギマギしながらも言ってみる。
「え、えと、私ね。出会った人ってどんなに性格が良くても悪くても見た目が良くてもそうじゃ無くても信用してないんだ。」
「何でですか?」
彼女は努めて冷静に返答する。
「う、裏切られたら悲しいから。」
出た答えはこれだ。
きっとどんなに繕ってても言葉にすればこんなもん。相手にも見られたくない面はある。私にもある。
けど、長年こうしてきて世界の危機になる前の種はあったのだ。
それは人でもいたし、魔族でもいた。
大概そう言う者達は優しいのだ、人にしても悪魔であっても、ただそこに一滴の悪意が混ざる事で結末は等しく滅びとなる。
それは如何しても"変えられなかった内の一つで忘れられずにいる後悔"でもある。
それに勇者が生まれる事はこの世界の滅びが確定した様なものだ。
手遅れなのだ。観てきた凡ゆる事象には勇者が生まれる可能性が幾つかあった。
だが、その全ては世界が半壊し滅ぼすあと一歩のところで勇者が現れ、世界が救われるものだった。
結果的に救われても、其れは救ったことにはならない。だから、わたしがこうして呼ばれて生を受けた。
ーだから
「だから、私ね初対面の人の全てを見るの」
敢えて包まず、隠さず訊かれたら全て答える。其れで彼女との縁が切れても10年も経てば記憶すら残らない。
罪悪感は10年ほど経験すれば消える。
これまでもそうしてきた様に。
だから彼女は不思議だった。どうやら彼女は最期まで私といた。
其れはおかしいのだ。
未来は見えても会話は聞こえない。
ただ、テレビでその人の人生を早送りで見てる様なもので、300年経ってもそこだけは変わらなかった。
「全て?人生そのものってことですか?」
だから、彼女のこの反応もおかしい。
言葉に対して語気が優しい。
「そうですね。産まれから終わりまでの全て、凡ゆる可能性も全てです。」
気持ち悪いですよね、と弱気になる。
その権利は私にはないのに。
でも、
「そうね。気持ち悪いわね。」
やっぱり彼女もそうー
「でも、貴方はそうして、そうしなければいけない何かがある。貴方、他人との記憶が無くなるのでしょう?」
驚いた、彼女はあの場にいなかった筈
「き、聞いていたの?」
でも、記憶が無くなるのは互いに同じ、なら条件は同じなのだから普通は怒るし、縁が無くなると思う。
「そうですね。と言うより聞こえてきたのですよ貴方達の会話が。」
そう遠くにいたわけじゃありませんしね、と一旦区切り
「でも、貴方は転生の儀でこの世界に来たのでしょう?なら、記憶が無くなると言う事は周りの人が信じられなくなるのも無理ないと思うの。
だって、私たちは貴方しか忘れないけど貴方は私達を忘れるのだから。」
彼女は私を抱き寄せて頭を撫でる、それは保健室でされたものと同じ
でも、何か違う様に思えてくる。昔もこんな事があった様な、、、?
「やっと分かったわ。そうよね。研究だって止まるわけよ。」
何だろう、エリシアは何かを納得した様に思えるが私は全く分からない。
研究?
「ごめんなさいね、こっちの話よ。」
疑問が顔に出ていたのか此方を見て優しく微笑む。何も分からなかったがそんなのどうでも良くなるくらい、エリシアの胸の中は温かく気持ち良かった。
長い間抱かれてから、その後私の荷物をエリシアと2人で解き、片付ける。
手伝わなくて良いと言ったが、何故か手伝ってくれた。
そうして、、、
「終わりました!!」
両手を挙げて今の感情を現す。
エリシアもふふっと微笑みながら紅茶の用意をしている。
「私、今日来る時にクッキー買ってきたのです!」
荷物とは別にしていたカバンからクッキーの入った箱を取り出す。
「え、それって貴族でも中々手に入らない物じゃないですか!」
運んできたティーセットを机に置き、其れを見て言う。
少し、上気しているのが傍目からもわかる。
その姿を見れただけで何だか嬉しくなる。
「ふふん、今日はね店長さんに頼んで特別に取っておいてもらったの!!」
割り増しでしたけどね!と、言うがもうエリシアはクッキーに意識を持って行かれていた。
ちょっとモヤっとした。
何で何だろう?
クッキーに負けたから?
それはそれでムカつく。
でも、エリシアの顔見たらそんな事も言えないので我慢する。
「た、食べましょう?」
(チラチラと私を見るエリシア)
可愛い、何だか子犬みたい。
もっと待っても良かったが狂犬になる前に私から先にクッキーを取って口に入れる。
クッキーにチョコレートや果物のジャムが塗られているシンプルなものだったが、流石に貴族もあまり手が出ないと言うだけあって味は絶品だった。
エリシアに入れてもらった紅茶とも合って凄く美味しい。紅茶は飲んだ事ない味がしたけど元々お茶や紅茶は全般好きなので苦手意識はなかった。
「はぁ、美味しですね!」
「そうですわね。」
カチッと小さく音を立てながらカップをソーサーに置く。
彼女の表情は幸せそうで、私はそれを微笑ましげに見る。
それに気付いたエリシアは恥ずかしそうに睨んで来たが今の私は無敵なのだ!
「エリシア」
「な、なんですか?」
「今日からずっと宜しくね!」
エリシアはカップをソーサーに置いて
そうですね、と一息をつくと
「こちらこそ宜しくお願いしますわ。」
今日みた一番の笑顔で言ってきた。
それから2人でお茶会をしてその日は終わった。
ベッドは一つしかなくて(しかもダブル)2人背を向けて寝たが、寝れたのは朝になってからだった。
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