3話 入学試験(後編)


「其れでは、次の試験です。この試験ではこちらの水晶板に手をかざし魔力を込めてもらいます。」


次の試験も私は知らないものだったがどうやらあの水晶板にかざすと現在の魔力量と将来どこまで成長できるのかをランクで表示するモノらしい。


「試験官、質問いいですか?」


「どうぞ、ミコトさん」


「えと、その水晶のやつって壊れる可能性とかはありますか?」


「ふふ、ちゃんと壊れない事は確認してるから大丈夫よ。私でさえこわせないモノなのよ。」


「あ、そうなんですか!じゃあ安心ですね。」


ありがとうございます。と一礼しつつ試験官を向く。


一応ね、私解析もできるので確認の為にね?

ステータスを覗く事も出来るわけです!


と言う事で少し


失礼しまーす(ボソッ)


【ステータス】

カヨ=アサギリ Lv.99

生命力5000/魔力9000

【スキル】

魔眼A+[LV.-]

転生者EX+[LV.80]

聖者による特権EX[LV.-]

英雄の意志A-[Lv.-]

武力の心得B+ [Lv.-]

魔道具作成A[Lv.99]


えっ?


嘘だよね?


嘘と言って欲しいです。


「マジかぁ、、、」

これは頭を抱えてしまう。近くにいた何人かのステータスも覗いて観るが


【ステータス】

アルガナ Lv.15

生命力100/魔力200

【スキル】

剣術B[Lv.5]


【ステータス】

ルーミア Lv.25

生命力250/魔力150

【スキル】

稀少属性A+光[Lv.8]

回復魔法[Lv.5]


【ステータス】

エリシア=エルクレン Lv.20

生命力200/魔力250

【スキル】

エルクレンの遺産[Lv.-]

剣術C[Lv.17]

基本属性C-火、水[Lv.15]


コレに合わせるのですか?

偽装は効くのでしょうか?

はぁー従来通り知識と面接だけで良かったのにー。


「、、ト、、ミコトさん!」


「は、はいなんでしょう?」


「いえ、体調が悪いんですか?悪いのなら今回は諦めて療養した方がよろしいかと思いますよ?」

声を掛けてきたのはエリシア。

勝手にステータス覗いて勝手に項垂れていた私を気遣ってくれたらしい。

「いえ、体調は万全です。すいませんなんかちょっと、、、」


「そう?なら良いですが、無理は駄目ですよ?」


「次、ミールス」

「は、はい!」

気付けば試験は始まっていた、皆驚いたりと楽しそうだが私だけ楽しくない。

何で驚くのか分からないズルいみんなだけ楽しんで良いなぁ良いな。


こう言う事は何度かあった。

そう言う時は胸の辺りがモヤモヤしてくる。

こんな時どうやってモヤモヤを無くしてたっけ?


忘れちゃった。




「次、ミコト」


「、、、はい。」


私の番だ。大丈夫、偽装のスキルはした。


誰も気付いてない。


誰も私を見つけられない。


ワタシも、、、






ーーバリーン




何かが割れた音がした。

目の前には割れた結晶が、、、


結晶?


水晶、、、



あ、



「やってしまいました。」


かざしていた手を見ると盛大に切れて血が出ていた。

其れを隠し、試験官を見ると驚きではなく敵を見る様な眼でこちらを見ていた。

気付けば彼女は私の安否を気にしてくれていたがあの目をされてはもう私は、、、


急に身体が重くなり意識が途切れた。




















偶に夢をみる。


私がわたしであった昔の記憶。


でも、前世の記憶は殆ど出ないの。


私が見るのは私が幸せだった時と全てが無くなった時、、、、



「ミコト、今日は   と私と3人で街までお買い物に行きましょう?」

優しく問いかけられ笑顔で声のする方へ向く。


顔の無い人。


其れでも私は嬉しいと感じる。



「ミコト?それがいいの?」


「うん!コレがこの店で一番良いやつなの!」


観た景色には覚えがある、私が過ごした景色。

けれど、街の人も家にいた人も顔がなかった。







私は歩いていた。


どこを?


家を目指しているのだ、買い物が終わり帰路を目指すのは普通の事。喜んでくれると良いな。


でも、


「あら?どちら様ですか?」


その人に言われた途端何かが崩れた。

持っていた物は手から落ち、何を買って誰にあげるのかも思い出せないことに気付く。

その人は少し焦った様にした後屈み抱きしめてくれた。


わたしはその時嬉しいと感じていた。

其れでも空いた穴は塞がる事なくただ涙が止まる事なく出るだけ


「どうしたの?迷子かな?」


検討違いだと言いたい。でも、わたしも分からない。


「い、いえ。わたしも気付いだ時にはここに来ていて、わからないのです。」

抱きしめてくれたその人の顔は無かったがどうしてかその顔を見たいと思った。


その日は落とした物も拾い忘れてその場を後にする。その夜は街の宿で過ごした。


その日からわたしはおかしかった。


大衆浴場に来ても、


宿屋でご飯を食べる時も、


1人ベッドで寝る時も。


足りない、何かが。そう感じる様になった。

1人になると背中が寂しい、何時もわたしは1人だったのに。


とにかく1人が嫌だった、誰かといたい。

お金も多くあったわけじゃない。


手元には後数泊分のお金といつ作ったかも分からない冒険者ギルドのカード。


カードは何故か偽装してあり、其れを剥がすと


【ステータス】

ミコト=サワハラ Lv.99(+5)

生命力-/魔力80700

【スキル】

不老不死[LV.-]

魔力量EX[LV.-]

勇者(偽)EX[LV.99]

鍛錬(愚)[LV.-]

千里眼EX[LV.-]

創造A+[LV.30]

変装

偽装

生活魔法

模倣

魅力


私がわたしであったときのものだと理解する。

一つ一つスキルについて確認ができる様になっていてあるスキルで手が止まる。


「鍛練、、、」

そのスキルは思い出や記憶の代償にレベルの限界を突破させるものであり、大切な人であるほど先になくなる。互いの過去に私とその人の記憶、記録が抹消するもの。


つまりは、、、


また、目の前が暗くなる。

私が忘れたわたしをせっかく見れたのにここまでなの、


待って


まってよ


エリーゼ!!














暗い、どこ?

1人はやだ

怖い


助けて


必死で手を伸ばすが


あ、


そっと誰かに包まれる。


「大丈夫?」


「エリ、、ゼ?」


「ごめんなさいね、エリーゼ様じゃないけどこれで良いかしら?」


急に光が入ってくる。そこは昔見た、でも少し新しくなった保健室だった。


そのベッドの上で私は誰かに抱かれている。

温もりは昔を思い出すもの、

でも、もう出会えない者。


「、、、ありがとう。」


抱きしめてくれた人に言いその人の顔を見る。

その人はエリシア。


エリシアは優しい顔をしていた。


「エリシア、その私何か言ってたですか?」

少し恥ずかしくなり顔を伏せる。何故だか顔が熱い、ドキドキする。


似てるからかな、きっと。

こんなの悪い事だと思うどちらにも、、、


どちらにも?


「いえ、少しうなされていただけですよ。」


「そ、そうですか。て、あっ!!」

忘れてた、試験はどうなったのか

間違いなくその後は出来てないし

あぁどうしようどうしよー


「大丈夫ですよ。」


エリシアが心を読んだように続ける。


「あの後、軍用の水晶板を急遽用意して測り、貴方にはギルドカードを用意しとくようにと言伝を預かっております。その提出が終わり次第後日面接になるそうです。」


な、なんだぁ〜良かったです。

一気に肩の荷がおりエリシア胸に飛び込むかたちで倒れる。


「ちょっ、、!み、ミコトさん!?」

逆に彼女が慌て初め、胸がドキドキと脈打ってる。何だかそれが妙に嬉しく、少しの間そうやっていると。


ガラッ


ドアが勢いよく開く。

その音に私もエリシアも驚き離れ、音のする方へ向くとそこにはアルガナとルーミア、そしてイルミアニスがいた。


「あーもう体調は良さそうだね、、、」

(頭を掻き視線をチラチラさせてるアルガナ)

「そう見たいね〜寧ろ有り余ってる?」

(顔はほんのり赤くガッツリ此方を見てるルーミア)

「心配して来てみれば、、、はあ」

(眉間を指で挟み呆れてるイルミアニス姫殿下)

私たちを見て三者三様の反応をしているなあとエリシアを見ると、


「〜〜〜〜!?」


顔を真っ赤にして其れは見事な速度で出て行ってしまった。


一応お礼を兼ねて今度何かあげようと思いつつ、今前にいる彼女らに


「ご心配をかけました。すいません。」


ベッドの上から深く頭を下げて軽く謝罪する。


彼女たちは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしてから破顔し笑みを浮かべる。

「良いわよ、でも約束覚えてるわよね?」

イルミアニスは貼り付けたような笑みで近づき私の頬を引っ張る。


「だ、だいひょうふれふ。おぼえへいまひゅ〜」

其れを言うのが精一杯だった。


「そ、ならいいわ。」


ーでも、貴方何者?

頬から手を離し、此方を見る。

何かを恐れるような眼ではなく好奇心とも程遠いそんな眼で。


「わ、わたしは、、」

別に隠してるわけじゃない。以前も聞かれる事はあった筈、


でも、


互いに覚えていられないのに


後で寂しくなるのに


「わ、わたしは昔に違う世界から来たの」


何で言ってしまうのだろうか。


彼女たちを見れば困惑してると言う感じで、でもイルミアニスだけは顎に手を添え何か考えている様子。


何か言った方がいいかと口を開こうとした時



「なるほどね、貴女が三人目なのね。ミコト」

イルミアニスが言う。


3人目?


「え?」


「ええ、そうよ。」

私、歴史に興味あるの。と続けながらイルミアニスは言う。私以外にあと2人この世界に来たのだと言う。

でも、私以外の名前はカヨとコウタと現代まで残っているらしいが私の名前だけ歴史からなくなっていて、

いるかも知れないと言う曖昧な仮説だけがあったと彼女は言った。


「でも、本当に居るのね。しかも300年経っても変わらない。」

年上とは思えないわねと彼女は笑う。

アルガナもルーミアも驚くばかり、私だって驚いている自分から言ったとはいえ見つけてくれたと感じてしまう。


だからこそ、忘れてしまうのが


怖い


「でも、せっかく会えたけど皆も私も忘れちゃうから会う意味なんてなー」


続けて言おうとした時イルミアニスが痛いくらいに抱き締めてきた。

どうしたら良いか分からず後ろの2人を見るが

答えてはくれない。

ただ、どうすればとオロオロするしか出来なかった私にイルミアニスは言う。


「忘れないわ。そして忘れさせたりなんかしないわ。私ね歴史と魔法の勉強をしてるの、この学校だって資料館を使いたくて来たの。だからー」


貴方のその悩みを解決することも出来るはずよ!今、私がこの名において誓うわ。


「私、イルミアニス=ガイスフィアの名において貴方を忘れない。絶対によ。」


そう言われて私は気休めの様に思ったけれど

一番言われたかった言葉を彼女から貰った気がする。



___だからこそ、私が彼女を殺す未来がある事に悲しさを覚えてしまう。

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