2話 入学試験(前編)
「___っは!!」
目が覚め辺りを見渡す教室内には疎に空いてた席が全て埋まっており時間を確認するとまだ余裕がある時間だった。
危ない危ない、何年か前は寝過ごして試験後に起こされたんでした!
ふぅ、今回は安心です。
勢いよく起き過ぎました、、、周りの視線がちょっと恥ずかしいです。
羞恥に耐えじっとしていると試験官の先生が入ってきた。
何故か此方を見て目を見開いていたが何だったんだろう?ん?まぁ、大丈夫だよね。
「皆さん揃ってますね。」
辺りをさらっと見て言う彼女は若く綺麗な人だった。格好は前世で絵本に出てきた魔法使いの様にとんがり帽子を被っており全体的に黒い服装だった。
へえ、この世界であの帽子は初めて見たかもです。
今、千里眼を使用したいが昔誰かが使用されてると不快感があるって言ってた気がするので諦め綺麗な先生の話を聞く事にする。
「__ですから今回の入学試験は実技試験のみとなります。貴族以外の方も大勢いますしこの学校では実力が反映されます。知識に差は入学前には残念ながらあり、それで決めてしまうのは公正性に欠けてしまい才のある子も落ちる結果になりますので今年度よりこう言う形になります。」
後の注意事項を説明し教室のドアを開ける。
では、皆さん着いてきてください。
と促されやって来たのは板金鎧のカカシが10体分が均等に置かれた広間のような場所だった。
板金鎧はそこそこ硬くまともな訓練を積んで無いと傷一つ付けられない物だ。
其れが十体と脇には予備が三十ほど置いてあった。彼らが壊してもいい様になのだろう。少数で試験を行うのか今回の試験は少し少なく40人しかいなかった。
「はい、皆さん最初の試験は彼方の鎧に魔法を撃って現時点での威力を見ます。アレは板金鎧ですので壊せる方はまだいないと思いますが、壊しても評価は下がりませんのでご安心を。」
1人につき三発までです。との解説していると
辺りが少し騒がしくなる。
板金鎧は貴族の教育を受けてても難しい様で皆焦っていたり緊張していたりとまちまちだった。
その中で1人焦りも緊張もなくただ立っている子が1人いた。見た目は金髪でサファイヤの様な綺麗な眼をした人だった。
少し怖いもの見たさで千里眼を使用してみると
「___!?」
不快感を感じたらしく辺りを見渡していた。
バレてはいないらしいので良かったが
「、、、王族ですか」
彼女はガイスフィアの姫らしい。
でも、今見たアレは、、、、嫌なものを見ました。
「次、アルガナ」
「はい!」
如何やら始まった様だ。
アルガナは如何やら属性適正がなく純粋に魔力を込めた魔力弾を三発繰り出す。
二発当たり、音は結構したものの貫通には至らなかった。
「いや〜鎧かてぇー」
「アルガナさん命中率と当たった痕跡を見る限りその年では優秀ですよ。」
試験官の賛辞に照れながらも後ろの方へ下がって行った。
「次、ルーミア」
「は、はい!」
彼女は何故か魔力を弱めていた。試験官以外に気付いたのはあの姫だけっぽい。
ただ、何も言わずにその後も試験は続き
「次、ミコト」
「はーい」
私の番が来た。目印に立って目標の鎧からの距離は約40m程でまあ、そこそこ近い感じだった。
何の魔法でも良かったけどアルガナ使ってた魔力弾が簡単そうだ。
「ほいっ!」
手の形を人差し指をまっすぐ鎧に向け銃の様にして魔力を込めて放つ。
目標は見るまでもなく当たって2秒後くらいに弾けた。
両脇の鎧も巻き込まれ半壊する様な形になった。
「、、、、。」
皆何故か何も言わないので試験官に
「後ろ下がりますね!」
「、、、え、えぇ」
返事を貰ったので元いたところに戻った。
【とある貴族視点】
今回の試験は平民との公平性のため現在の実力のみの試験だと彼女はおっしゃっていた。
ただ、その中でも魔法の使う際の癖やその魔法に込める魔力量、命中率と言った面を見ると言われており鎧は予備はあったが壊される想定は無いのだろう。
事実、試験に臨んでいる人は今のところ少し凹んだ位が限界であった。
私も壊す自信は無く、三発の中でキズを付けれたら良いなと思って見ていた。
だが、
「次、ミコト」
「はーい」
見た目は周りより幼く、何より珍しいのは格好である。まだ貴族の順番ではなく平民の方達が試験している中で彼女だけやけに服装が貴族然としていた。平民が着てはいけないとかではなく、試験と言うだけであの様に服装を整えているのが不思議だった。
彼女の方を見ると少し考え事する様に顎に指を添えてぱっと何かを思いついたかと思えば、人差し指だけ鎧に向け魔力だけを飛ばした。
しかし、一発だけ打ち的から背けて終わったとばかりに伸びをしていた。
彼女の魔力弾は先ほど見たのより命中率は良かったがそれだけだった。
何だ、と思っていたら前方の鎧が弾けた。
「えっ?」
誰もが大したものでないと思っていただけにその光景を目の当たりにすると声が出せなかった。それは試験官も同じようで、彼女は気にする事なく試験官に一言言って元の場所に戻っていく。試験官はそれ以上彼女を見る事なく鎧の設置を行い、試験を続行させた。
けれど平民の中でアレを見てから勢いは落ちていき命中させるのも困難な状況になっていた。
その中で1人眼鏡を掛けて白衣を着た少女ミールスさんは健闘していたに思える。
その後の貴族の人も実力が存分に発揮させる事ができなかった表情で戻って来た。
「次、エリシア=エルクレン」
「はい。」
エルクレン家のご令嬢の番らしい。ただ、先程の魔法を見ても動じる様子はなく、緩やかな足取りで目標前に立った。
その時まで興味を無くしていた様に立っていたミコトさんがエリシア=エルクレンの名を聞いた時には顔を上げ何やら自分でも何故見たのかわからない様に困惑していた。
エリシアさんの結果は少しキズをつける程度で終わったがその顔には悔しさがなかった。
その戻る際にはミコトさんを見て何か話しかけていたがここからだと聞き取れない。
知り合いの様な雰囲気はなくただの世間話という事で納得した。
【ミコト視点戻ります】
試験は自分が終わるまでは時間が早いがその後は如何しても遅く感じる。
皆んなの実力が無いわけではないが遠慮がちに放つものだから見栄えも結果も悪く見る意味は無かった。
平民の番が全員終わり貴族の番になった。彼らも魔力量が平民より少し多い位と貴族教育の過程で少し魔法が上手い、ただそれだけ。
退屈な魔法を観てるのも辛くなって座り掛けた頃に
「次、エリシア=エルクレン」
「はい。」
彼女が呼ばれた。エリシアという名前は知らなかった、しかしエルクレンは知っている気がする。咄嗟に彼女の方を見ると何故か懐かしく思った。
でも、彼女は初めて見る。何故懐かしく思ったのか分からず困惑してしまい、でも彼女から目を離すことはできなかった。
エリシアの結果は他の人よりは良くまずまずだったけど、彼女の魔法の撃ち方は知っている。
何度も見たやり方だった。
何処ででしょうか?
戻ってくるエリシアは此方にやって来て
「貴方、ずっと興味なさそうだったのに私を見てきて何なんですか?正直言って実力はあれど不快です。」
彼女は眉を少し吊り上げて言ってきた。
その姿も私には微笑ましく思える、気がする。
「ごめん、昔に貴方に似た人に会った事がある気がして、、、、」
ごめんね、もう見ないからとこの抱く気持ちとの折り合いが付けられず曖昧な顔になりながら言うと。
「それはそれで不快です。」
それだけ言って戻って行った。
去り際の横顔は怒るでもなく笑った様だった。
今のは何だったんだろう。彼女の後ろ姿を観ながら考えていた。
考えていたら順番が進んでおり
「次、イルミアニス=ガイスフィア」
「はい。」
お姫様の番が来た。彼女もイルミアニスと同じく緊張はせずに試験官に一礼を浅くし、魔力弾を放つ。命中率は言わずもがな全弾当たり、私以外で初めて鎧を貫通させた。
痕跡には私と似た爆発跡がある。
イルミアニスも少し驚いた様にしてたため、私の魔法を見てその場でやったのだと思う。
現代でアレができるのは少ない。彼女はこの中でも一番優秀なのかもしれないと感じる。
私よりまだ無駄は目立つが魔法の勉強が好きなんだろうなと感じる表情と撃ち方だった。
戻る際に此方を見て、みて、、え?
近づいて来た。
目の前まで来て私を見てくる。
え、何ですか?もしかしてバレた?
色んな意味でドキドキしていると
「やっぱり貴方でしょ、さっき見て来たの」
あ、バレてる、、、、、。もしかして死ぬ?
「あ、い、いやぁ〜そんなコトな、ななな、ないかと」
私ですと言った様な言い訳を返すと
「良いのよ別に害はなかったし。でもねアレは結構不快感があるの何したか分からないけど」
あ、そ、そっか
「ごめんね?堂々としていて気になっただけなの」
「そ、まあ、不敬だけど良いわ。でも何を見たのか教えて頂戴。」
ステータスでも見たの?と何やら楽しげだ。
「えと、その言って良いんですか?」
「ええ、私の何を見たか知らないけど晒されて恥ずかしいモノはないわ」
そ、そうですか。では、と彼女の耳に近づき小声で言う。言い終えて離れると怒った様にでもびっくりしかの様な表情を浮かべる。
「え!?あ、貴方私を知らなかった事に驚くけどそんな事出来るの?それって魔法?スキル?これは、見た対価を貰うわ。後で教えてもらっても?」
両手を掴まれ綺麗な顔が近くある。ただし目は強く私を覗く。
断れる状況ではなくなったし、勝手に見たこっちが拒否する権利はない。
「わかりました。でも、聞いてもイルミアニスがと言うか私だけしか使えないと思うのでそこだけ理解して下さいね。」
一瞬眉が動いたが納得した様で、わかったわと言い戻って行った。
その間周りからは見られていた様で
(イルミアニス様を呼び捨てだなんて)
とかコソコソ呟かれてた。
はあ、学校は楽しいはずなのに最初の試験からこれじゃ心が煩くてこの先が思いやられるなと思うミコトです。
「これで最初の試験は終わりです。次の会場へ行きますのでついて来てください。」
そう促され私もみんなも付いて行った。
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