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 このメッセージがお前の元に届いたということは、あたしは死んじまったってことだ。

 ヤラレチャッタ、なんてな。

 手紙なんて回りくどい方法で、お前に言葉を伝えるのはあたしらしくないって思うだろ?

 実はこの遺書を書く慣習は3年前くらいからやってるんだ。

 あたしの病気が中々寛解なかなかかんかいされないことが増えて、いつ死んでもおかしくない体になっちまったからさ。だから、このメッセージを更新できるタイミングがあれば、その度に更新している。あたしにしては、かなりマメだろ?

 今もできるだけ学校に通っているけど、それ以外はほとんど病院の中にいるあたしの密かな楽しみになっている。土日に病院では、一日中寝ていることを強要されるから夜は全然眠れない。消灯時間が過ぎて、眠れないと色々思考が冴えて考えなくていい余計なことを考えてしまう。このしょうもない時間が、あたしの人生の中で最も死にたくなる時間だ。真っ暗で、周りには誰もいなくて、悪い事ばかりを考える羽目なる。クラスメートのブスな女どもだったらピーピーきっと泣いている。そんな時には、こっそりノートパソコンを開いてこの文章作成で気を紛らわしているんだ。

 生きている間はあたしの病気のことを誰かに言うつもりはない。周りの人に一々『かわいそう』とか思ってほしくないから。アイツらは、一丁前いっちょうまえにあたしに同情するけど、30分もすればあたしのこと何てスッカリ忘れて、誰が好きだとか、どの俳優がカッコいいとか、どの給食が食べたいかとか、どうでもいいことを気にする。中途半端な同情は、いらない。一度は心配してくれたのに、すぐにあたしのことを忘れてしまう人間達のせいで、よりあたしの孤独感が強くなる。


 ここに書かれたことは、あたしが墓場まで持っていくと決めたトピック達だったのだが、お前にはゲロってみたくなった。

 病気は、本当に嫌ですね。

 お前が気に入ってくれた強気なあたしじゃなくて、メソメソしている私が最後の最後に出てしまいました。


 どうしてお前にこの手紙を送ろうとしているのか、理由は分かりません。

 なあサム、どうせお前は馬鹿だからあたしが死んで、メソメソしてるんだろ。泣いたってあたしにはどうせ分かりっこないのに。口の悪いギークながいなくなって良かったじゃない。

 親父もどうせ変なことをやって、お前に迷惑をかけるに違いない。全部無視しろよ。


 嘘をつきました。本当はお前にこの手紙を送る理由は分かっています。

 でも、ここに書くつもりはない。せいぜい、お前の腐った脳みそで考えることだな。


 あたしの近所に住んでいたガキがお前で良かった。

 お前の良いところは、頭が悪い癖に自分なりに考えようとする所とあたしのコンプレックスな部分を面白がってくれる所だ。私が入院してお前が見舞いに来たら、寝たふりをしたり、医者や親父を介してお前を突っ返したりしたけど、毎回来てくれてたの凄く嬉しかったです。

 人のことを散々馬鹿にする最悪な人間のあたしにしては幸せな人生を送れたと思う。

 お前はあたしに振り回されてばかりだったけど、もっと自分の生きたいように生きたほうがいいよ。

 元気でな、おさむ




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 あとがき

 二十歳の頃は、アルバイトでも全然声が出せずに、挨拶の声が小さいとよく怒られていました。そこで私がとった対策は、ゲームのキャラクターになりきって、社会に出ることでした。私はFF10が大好きで、このゲームでもっとも友好的なキャラは主人公である。挨拶のようなちょっと恥ずかしいことでも、彼ならこうするだろうと考えることで、私の中のハードルを飛べるようになりました。苦手な人との会話とかでも嫌味を言われても、彼ならこんなことでへこまないって耐えることができました。その慣習を繰り返していく、いつの間にか自然と、明るい自分が出てくるようになりました。何か好きなモノができる事は、一見関係ないようなことにも役に立ちます。要するに、自分の好きなモノにのめり込むことは良いことですよってことが言いたかったです。

 さて、この話は去年の十月くらいに作り始めたのに、放置しては少しだけ書き、放置しては書きを繰り返して、完成まで半年かかってしまいました。

 皆さんは、自分で作ったものを人に公開する勇気があるほうですか? 私はない方です。今まで作ったけど没にした小説は数知れず。小さい頃から小説を読んでいたから、話を作ったりするのが好きだったのですが、その話を公開するとなると結構苦しいです。今まで、読んだ作品で、『ここをこうすれば面白いのに』って思っていたことがダイレクトに自分に返ってくるのがシンドイ──。

 創作活動において、自分で作品を作ったのにだれにも見られていない、あるいは良い評価をされない悩んでいる人は多くいるとは思います。でも、クオリティは一旦置いといて、どんな作品でも人に見えるように公開したということは、とても偉大な決断なのです。私みたいに、ウジウジして公開しない人は結構多いと思います。もっとも、創作活動の最終目的が必ずしも、人に見せることでは無いとは思いますが、それでも自分の作ったものを人に見せたというは、やはり凄いことです。

 全ての創作活動者に幸あれ。

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