第3話 ダル絡み
だんだんと酔いが回り始めたヤツらが出てきたところで一次会はお開きとなり、源先生は一次会が終わると共に帰ってしまった。
昨年に難病が見つかり、お酒も飲めなくなってしまったけど、少しくらい皆と話したいと言って身体に鞭打って出てきてくれてたようだった。
そういえば、ずっと日本酒だって言いながらお冷飲んでたもんな。
「蘇我はどうする?お前も二次会行くか?」
駅の方向へと向かっていく源先生の背中が見えなくなったあたりで、阿部が背中を叩いた。
「う〜ん、どうしようかな……」
光弥のこともこれ以上は何も情報出て来なさそうだし、正直木村の様子は怪しいとは思ったけど、無理に聞けそうな感じでもない。
それならこれ以上残ってもあまり意味はなさそうかな。阿部たちとも充分話すことは出来たし。
「おれはここらで――――」
「蘇我帰っちゃうの〜?あたしらともう少し一緒にいようよ〜♪」
「えっ、ちょっ……」
そう言いかけた時、急に肩を組まれたこともそうだけど、声をかけてきたその相手に驚いて、続きの言葉を飲み込んでしまった。
中学時代、男子のほとんどが高山の気を引こうとしてアピールをしていた。
アイドル並みに顔立ちが整っていて、歩き方や髪を耳にかける仕草だったり、なんというか、男子が好きそうなことを熟知しているタイプの奴だった。
だからまあ、女子の中にも高山のことを嫌う女子も居たようだけど、高山と仲が良ければ男子とも近づきやすいという理由で高山の側につく女子の方が多かったっていう話は聞いた覚えがある。
さっき居酒屋でヤンチャグループのリーダー格だった藤原とキスしてたのがこいつだ。
肩を組んできたといえば聞こえは良いけど、ほぼ抱きついてきているようにも見えてしまう状態に慌てて離れようとしても、高山はしっかりとおれの首からその手を離してくれない。
「うわ〜蘇我羨ましいわ〜!」
そしてこんな状況になっていれば、当然その藤原が絡んでくるのも想像がついた。
中学時代のヤンチャグループのリーダー格で、おれのことを最初にイジってきたヤツでもある。
体格が良くて、その腕っぷしを盾に横暴を働くことで、割とこいつのことを疎ましく思っている奴は多かった。
(だから早く離れたかったのに……)
さも、おれの女と言わんばかりに高山のことをおれから引き剥がして抱き寄せているけど、お前そもそも彼女居るんだよね……?それは高山もだけど。
互いのお相手さんが可哀想だなと思っていると、高山がまたふざけた事を言い出した。
「そうだ!蘇我も一緒にカラオケ行こうよ〜♪ミミも来るし、他のみんなも行くって言ってるよ〜」
「お前、愛歌が誘ってくれてんのに断るわけねぇよな?お前レベルのやつが愛歌レベルのやつから声かけられることなんて滅多にねぇんだから、今乗っとかねぇともったいねぇぞ?」
そう言ってゲラゲラと笑っている藤原に腹が立つが、高山が「ミミも来る」って言っていたのをおれは聞き逃さなかった。
ミミというのは、高山が木村に勝手につけたあだ名だったはず。
もし、運良く木村からさっきの話の続きを聞くことが出来るなら……。
「わかったよ。二次会行くよ」
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