第2話 エンカウント!?

「〜〜!」


 さてさて、そうして今はカラオケ店に二人きり。

テーブルの上には飲みかけのココアが放置されている。目の前ではテレビに映る歌詞を目で追いながら歌う彼女の姿があった。


 今流れているのは最近流行りの曲。世界の理不尽さと愛についての歌なんだが...どうせ皆気にしてないだろう。リズムがメロディーが良ければ言葉なんてどうでもいいじゃないか。


 ちなみに彼女の歌声に関してはまぁ、、、プロには届かないがまぁ上手い方だろう。


「いいねぇー!うまいねー!可愛いよー!」


 俺はとりあえず合いの手をうっておく。自分が歌ってないときは正直暇。けどやっぱり美人を横目に

ジュースを飲むのはそれだけで満足。

つか興奮する。

やっぱり来てよかったな!




「ありがとうございましたーまたのご来店をー」


 それから店を出た時には空はもう暗くなっていた。


「リョウ!今日はありがとう」

「いやー楽しかったぜ。また行こうな!」

「うん!じゃあね!」


 と彼女は笑顔で別れを言って帰路を歩きはじめる。しかし、4歩を歩いた所で一旦止まると口を開いた。


「リョウ...好き」


 そうモゴモゴと言の葉を紡ぐ。分かってはいたがいざ言われると結構ドキドキする。胸が熱くなるような思いだがここも抑えさせてもらおう。


「ん?なんて?」

「な、何でもない!」ダッ


 逃げるように走り出しその姿は見えなくなった。可愛すぎる!

そんな様子を見て俺は呟く。


「......そろそろヤるか」


 高校生なんだ。みんなヤることはヤってるだろう。俺よりバカな人間でも出来てるし俺に出来ないはずがない。


 今まではちょっと決心がつかなかっただけ。次の機会にでもホテルとかに誘おう。絶対に断られることはない。万一断られても変えればいいさ。


「やってやる...やってやる!」タタ


 と心の中に覚悟をつけて手を強く握った。そうして帰宅の足を進めた。家には真里がご飯を作って待ってくれている。早く帰らないと冷めてしまう。


 彼女の作る飯を楽しみに信号を渡り横断歩道を登り、道路沿いを行くこと10分。帰ってきた。我が家に。もちろん光はついており、迎え入れる準備万端ってところか。


「ただいまー!」ガチャ


「〜〜〜」

「〜〜」


「………?」


 帰って一番、聞こえてきたのは話し声。一つは真里で一つは男の声。これは父親ではない。聞いたことがない未知の声だった。


「…!!」ゴト


 靴を脱いで聞き耳を立てる。

まさか彼氏?

いやそんな筈は...


「——が——な」

「———」


 テレビの後にかき消されて殆ど聞こえないが真里は何かにショックを受けているようだ。

震え声になっている。


 何が起きたのだろう、不憫で仕方がない。

泣かせる奴がいるなら俺が退治してやる。

待ってろ真里。


「出てこい。亮介」

「!!」ビクッ


 唐突に男が俺の名を呼んだ。背中にぞっと寒気が走る。バレた?何故俺の名前を知っている?

どこかで会ったのか?...コイツがなんなのかもう少し知りたい。





アイツは俺に気付いていなかった。



——ギィィィィン!



 コレできっと——




——ピーーーピピッピー



 金属音に続けてになったのはピーという機械音。


「無駄だ」

「なっ…」


 小さく、それでも確かな動揺の声が玄関方面から発せられる。


「さっさと出てこい」


 男は無表情のまま壁の向こうにいる人へ話しかける。声色は冷静、クールで低い。


 亮介は一旦考えるもその20秒後、警戒した様子でゆっくりとリビングに現れた。


「……あんた、誰だ?」


 彼は半ば睨むような目で眼前にいる者を確かめる。男は大柄で1m90はある大柄な体と黒い目を持ち合わせていた。


 心中には困惑と不安と恐怖が混ざり合い、冷や汗が顔を伝う。


「俺は修正者だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「修正者...?」

「あぁ。訳あってお前を……そうだな……殺しに来た」 

「……は?」


 理解できず少し苦笑いになりながら疑問符を浮かべる。当然、困惑は深まるだろう。さらに下を俯いて一向に何も話さない真里にも違和感を感じた。


「け、警察呼ぶぞ!」カチャ

「それはついさっき呼んだじゃないか?」

「なんだと?」


「言葉通りだ。俺は一回通報された。まぁもっともソイツをしてやったんだがな」


 修正者は随分と怠そうな表情をして頭を手で掻く。顔自体は下を向いているようだが、空洞のような目はこちらを見ていた。


「改竄...」

と一緒さ」

「…………いやまて……そんなこと!」ザザッ


 勘づくと同時に驚愕。それはこれまで味わった一番の衝撃を過去のものにするほど大きい。彼も思わず1歩2歩後退りしてしまう


 しかし、ただ一つ。この目の前にいる男が只者ではないことだけは理解した。


「そうだそうだ。お前が帰ってくるまで真里とかいう奴とすこーしお話ししてやったんだ。さぁ、お兄ちゃんがあっちに居るぞ?」

「...す」


「...?」


 真里がボソボソと呟く。亮介はその両の耳を集中して傾ける。そして彼女は...


「殺す!」ガタッ


 そう声を荒げながら、鬼気迫る迫力で宣言した。勢いよく上げた顔から見てとれるのは彼でも感じとれるほどの【怒】であった。

髪は逆立ち目は血走っている。


朝にあった穏やかな姿は見る影もない。


「(なぜ!?俺だぞ!亮介だぞ?!...)」


 

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