第1話 楽々生活
ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピピピ——
タンッ
「……ふわぁ」
口を大きく開けて欠伸をする。なんとか起き上がった体はまだ気だるい。一般的な一室の窓からは朝の光が差し込む。
霞む目で手に持ったスマホ画面を見ると時刻は7:00を回っていた。
「さてと...」ガタッ
ベッドから立ち上がり1階へと下る。全くこんな時間に起きなくてはならないのは非常に面倒臭い。流石の俺でも時間までは変えられないから。
しかし、そんな朝の晴れない気持ちも爽快になる唯一の救いがあるのだ!とびっきりのやつが!
「おはよー!ご飯出来てるよー!」
階段を降りるとお言葉が台所から元気よく飛んできた。その主は可愛い可愛い義妹である
彼女が8歳の時に父親が再婚しこっちの家へと来て現在は16歳。ポニテで大きな目が特徴的。
そんで美少女だ。
料理が上手く両親が仕事でいない日の朝ごはんはマリが作る。しかも性格も良いときた。こんなの俺には勿体無いくらい。
「あぁおはよう」
俺は相槌を打ってテーブルの席に座った。目の前には二人分の朝食が用意されている。ご飯からは湯気が出ていてまだ暖かい。作り立てだろう。
そして、彼女が対面の席につくと手を合わせていただきますと朝飯を食べ始めた。
「……」
マリが食事中にチラチラとこちらを伺っては不安そうな顔をする。その顔さえもとても可愛い。
「美味しいよ」
そうやって笑顔で言ってみれば彼女は顔を赤くして少し目を逸らしながら「ありがと」と呟いた。
マジ天使だな。
そうして幸せな食事が終わったならば、洗面所に行って顔を洗う。
そこからしばしの暇を潰し学校の制服に着替えた。この制服は通っている星河高校のもの。星河高校は偏差値も高く、とにかく自由。
本当に良き学校だ。しかし、二年の3学期に差し掛かり皆はそろそろ受験の準備をしなくてはいけないのだろう。
ふふっ...少し優越感を感じてしまっていることは否定できない。
「いってきまーす」ガチャ
「いってらっしゃーい!」
ドアを開けて妹に別れを告げる。超悲しい。けれどそれは彼女も同じだろう。そんなことを思いながら一歩を踏み出した。
・・
今日の学校は定期テストの結果が帰ってくる日だ。どうやら今回はいつもより全体的に難しかったようだった。
試験後、周りの人間は問題の難度について話し合っていた。まぁ俺と言えば……
「「すげぇ!」」
全ての教科で高得点を得て今友人らに取り囲まれている。机にある返却されたテスト達は目を奪うほどの点数。99、99、98、92、、、平均したら90点を超える。
「どうやったんだよ!」
「チーター乙ww!」
「やるやん!流石や!」
周りから来る羨望の視線や褒め言葉は少しこそばゆい気持ちになるものだ。
けどやっぱり気持ち良い!!
しかし、ここはグッと抑えて
「ま、偶然だよ偶然」
謙虚にいこう。別に謙虚じゃなくったってどうにでもなるんだが、そこは譲れない信念という奴だ。
それから褒められすぎてちょっとはにかんでいる時、ある人の視線に気づく。クラスの端で一人本を読んでいる『振り』をしている地味目の女子。
その子は正直言って可愛くない。
だが最近こっちを意識してくる。正直キモい。
変えとくか
——ギィィィン
脳内に鉄の音が響く。
すると彼女は本を読むのだけに集中するようになった。全く他のものを見る様子すらない。
まぁ、これは慈悲みたいなものだ。
どうせそれは叶わないし。
・・・
「リョウ...この後暇?」
帰宅直前の校舎の玄関。話しかけてきたのはクラス1の美女。何やら手を後ろに回しモジモジしている。その度揺れるロングでしなやかな髪が気持ちを狂わせた。
「あぁ、暇だぜ?」
「じゃあちょっと...カラオケでも行かない?」
「もちろん喜んで」
「!!ありがとう!」
ははっ、デートのお誘いだったようだ。であるならば断る理由はありもしない。
絶対に幸せな体験になるだろう。
「そんじゃあ行こう」ギュ
彼女の手を掴む。暖かな体温が直で伝わった。
「……」
いきなり手を掴まれたことによって思考が停止しているようだ。けど体は正直。顔は少しニヤつき呼吸の頻度が上がっている。
そこであえて質問してみよう。
「嫌だった?」
「い、い、い、いやそんなこと...」
すると彼女は口を窄めてそっぽを向く。
意地悪したくなるのはしょうがない。全部コイツが可愛いせいだ。そうして俺まで思わず口角があがった。
「も、もう!早く行こ!」タッタッタ
彼女は恥ずかしさを隠すように俺の手を引いて、多数の生徒の中を進み校門を出た。
あーあ困った女だこと!
————
枯れ葉色のダウンコートを着た男が校門のすぐ横
に立っている。その男はツーブロックの褪せた青髪や下に曲がった上がり眉などを待ち合わせかなり特徴的である。しかし、誰も彼の事を気にするそぶりを見せない。
「なるほどこの学校、やけに【矛盾】がこびりついてると思ったらこういうことね」
彼はたった今校門を出た美形の男女をチラリと目で追うとそう呟いた。2つの恐ろしい黒い孔をギロギロと動かしながら。
「ふふふ...」カタッカタッ
コートのポケットに両手を突っ込み革靴の音を鳴らして歩き出す。行先は——————
今日の天気は快晴。秋の風は少し肌寒い。街路樹からの落ち葉が道端に散らかっている。地面は赤やらオレンジに染まり大体がくすんでいるが趣がある。
まぁきっとそれらも風に乗せられどこかへ消える。
抵抗もできず吹き飛ばされるだろう。
「アンタもそうなるさ、
男は
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