第3話 袋

「この袋の中の物を、一つ差し上げよう」

私が道を歩いていると、背の低い老婆が近づいてきて言った。


――この人何を言ってるんだ。

老婆は手に持った小さな袋の首を掴んで言った。

「さあ、遠慮なく。とてもいい物ですよ」


私は少し怖かったが、私を見上げる老婆の眼を見ると、誘惑に逆らえず袋に手を入れてしまった。

見た目は小さな袋だったのに、中はどれだけ広いのか、袋に触れる感覚が伝わって来なかった。


私は固い物を一つ握ると、袋から手を引き抜いた。

その時、手の甲に纏わりついて来る感覚が残った。


引き抜いた私の手には、キラキラと光る宝石のような物が握られていた。

「おや。大きなダイヤモンドを取りましたね」


――ダイヤモンド?本物?だとしたら、何カラットあるんだろう。

僕が喜ぶのも束の間、老婆は悲し気な顔をした。

「おやまあ。一つと言ったのに、二つも取り出してしまったのね」


その時、手の甲から妙なものが顔を覗かせた。

そいつはトカゲのように、四つん這いで私の腕を這い上り、肩口まで登って来る。

そして口を広げた。


その口は、私の顔よりも遥かに大きかった。

口の中には、ギザギザ大きな歯が生えていて、3枚ある舌が私の頬を舐める。

――ああ、今からこいつに食べられるんだ。

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