第23話 ブレイブソウル封印

「スキルなんて技術が身につこうが魔法が使えようが全部『それだけ』の物」


 俺は口を滑らしたときまた殴られるかと思ったが青葉はいい女風に格言めいた事を言う、どうやら彼女のスキルは本当に勇気と自信を与える物で別に短気になる物ではないらしい。


「肝心なのはどんな意志を持って使うか、でしょ」


 つまり昨日の俺は、確固たる意志を持って勇気を出して殴らなければいけないレベルの不審者に見えてたって事か。


 泣きそうだぜ。


「まあ、もう使うことはないけれど私にとってこれ以上ない最高のスキルそれがブレイブソウル」


 腰に手を当てそう言い切る姿はモデルのポージングのように様になっていた。


「使うことはないって、いやいやいやそれはさすがにもったいないだろ!?」


 多分ブレイブソウルは特技系のように思えるが戦闘から日常生活まで汎用性の高い良スキルだ、それをしかも人生で初めに取ったスキルの封印は殴った事の謝罪にしたって重すぎる。


「もう決めた事よ、昨日祖母に言われたのスキルとは名ばかりの取って付けた道具に頼って他人様を傷つけるその行為のいったい何所に勇気があって何所に正義があるのかって、……何よりもスキルに頼って勇気をもらうならそのうちスキル無しでは何も出来ない臆病者になるって」


 謝罪あんま関係なかった。

 

 それにしても、青葉のばーちゃんスゴい事言うなアフターダンジョンの現代社会に真っ向から挑んでる。

 昨日姉弟そろってスキル使って金持ちになれるとはしゃいだのが恥ずかしい。


 青葉の目から徐々に碧い光が消えていく、しかしもう泣くことはなく落ち着いた様子だ。


 俺は聞くまでも無く聞いてもどうしようもない事を確認せずには居られなかった。


「なあ青葉、冒険者は続けるんだよな?」

「もちろん、何があってもスキル無しでも最強の冒険者に成ってみせる」

「良かった、まあ、その何て言うか、お互い頑張ろうな」


 もしかしたら、もう青葉と口をきける事は無いかも知れない。

 クラスも違うし、素の状態だと泣くほど殴った事を後悔してるみたいだし、俺から声をかける自信も無い。

 だけど青葉が冒険者を続ける事が何だかたまらなく嬉しかった。


 そこから俺と青葉は互いに昼食を取るために解散した。




 教室に戻ると。


「明松、菓子折付きでフラれたのか」


 足立の野郎が心底哀れんだ目でそう言いやがった。


「どのレベルの告白したらそのレベルのフラれ方すんだよ、ちょっとした謝罪だよ謝罪」

 

 俺は自分の席に着きながら足立をあしらう。


「逆に菓子折渡されるレベルの謝罪って何があったんだよ、てか学校に菓子折って」


 スマホをいじっていた高林が至極もっともな疑問と俺が考えないようにしていた違和感を突いてくる。


「昨日青葉のスキルが暴走してガッて成ったの謝られたんだよそんだけ、て言うかやっぱ学校に菓子折って変だよな思わず受け取ったけど、これ見つかったら怒られる奴なのか?」

「んーどうだろ? 授業中に食わなきゃ良いんじゃねえの、皆ちょこちょこおかし持ってきてるしでもサイズがなー」


 菓子折は小さめの座布団くらいある正直スクールバッグに入るかも怪しい。


「証拠隠滅なら手伝ってやろうか?」


 足立はちょうどデザートが欲しかったと抜かす。 


「お前このサイズの箱に入ったどら焼き食い切れる訳ねーだろ半端に手つけてる方が見つかった時怒られる」

「中学じゃねえんだからお菓子ぐらい平気だろ」

「じゃあ、証拠隠滅の必要ねーだろ」


 少なくとも昨日の今日で足立と一緒に教室で菓子折を開けていたら余計に怒られそうだ。


「一応袋やろうか? コンビニ袋だけど」


 剥き出しよりはマシだろと高林は微妙なサイズのコンビニ袋を差し出してくる。


「ああ、ありがと、でも入るか?」

「ちょっと伸ばせば、どうにか」


 俺と高林は2人がかりでどうにか菓子折をコンビニ袋に詰め込む。


 結果的に菓子折は入った、パッツパツで持ち手の意味も無くなったがどうにか入った。


「まだ剥き出しの方がマシ『キーンコーンカーンコーン』」


 足立の言葉にかぶせるようにチャイムが鳴る。


「嘘だろおい」


 足立は自分の席にそそくさと帰り高林は席を元の位置にもどす。


 残ったのは空腹の俺とパッツパツの菓子折。


 弁当を食べられず昼休みを終える、それは食べ盛りの俺には死を意味していた。

 




 


 



 

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