第19話 ステータス初公開

「はあはあ良いながら変な靴を女の子に履かせようとするのって四捨五入で犯罪じゃない?」


 殴った事ヘの謝罪の後に続いた青葉の開き直りとも取れる発言があまりにも正論だったので殴られた俺すら納得してしまった。

 

「でもチーちゃん、昨日も言ったけど暴力は駄目だよ」


 どうやら相馬さんも納得したらしい、暴力を振るうことは否定したけど四捨五入で犯罪者という部分は『でも』の部分で肯定している。


「でもねカヤちゃん、誰かが勇気を持って戦わないと世の中上手く回らないの」

「それはそうだけど」


 俺はこの辺りで自分の作ったガラクタを抱えて逃げ出した。

 本当は泣きながら走り去ってしまいたかったけど、現実は涙をこらえ震える声で「あ、俺この後用事あるからそろそろ帰るわ」と不自然な言い訳をして床に転がった変な装備品を拾い集め、受付にトンファーを返すとき冒険者免許を何所にしまったか解らなくなり後ろに列が出来たり駐輪場で装備品をぶちまけたりと散々な目に遭ってから帰路についた。


 家に帰るとまだ母さんもパートから帰ってなくて幸いにも家にはだれも居なかった。

 俺はその頃には恥を掻きすぎて逆に冷静になるターンに入ってて速やかに今日作った物達をゴミ袋に詰め込み玄関の三和土の隅に置くことにした。


「ただいまー、ん? カナメ何それ」


 なぜ大学生って帰ってくる時間まちまちなんだろうか、タイミング悪く玄関を開けた姉ちゃんは内側からうっすら青い光を放つゴミ袋に興味を持った。


「ただのゴミ」


 俺はぶっきらぼうに答えて自分の部屋に行こうとするが。


「痛だだだだ」


 姉ちゃんは簡単に俺の腕を取り関節決めてきた。


「カ~ナ~メ~、何度も言ってんでしょ嫌な事あってもふてくされるな、ふてくされても態度に出すなって」

「わかった、ギブギブギブごめんって」


 俺はそのままリビングに連行された。


「で、なにか嫌な事あったの?」


 字面だけなら弟の悩みを聞く優しい姉のセリフだが、弟を床に正座させ自分はソファーにふんぞり返りながら聞いてくるのだから真面な人間ではない。


「えーと、今日スキルで初めて作った奴がショボくってちょっとがっかりしたって言うか」


 もちろん他にも色々あったがここでは伏せる。


「さっきのゴミ袋の奴? ちょっと持ってきな」


 俺は姉ちゃんの言葉に大人しく従いゴミ袋を回収してくる、逆に中身を見せれば姉ちゃんも納得して引き下がるだろう。


「えーと、靴と一応帽子と、これは盾らしくって」


 とりあえずマシな見た目の物からどんどん酷い物を出していくと姉ちゃんは露骨に顔をしかめる。

 最後のファンガスシールドをベタベタの方を上に向けて出した時は心底ドン引いていた。


「……あんたのスキルって、剣や槍作る奴じゃなかったの?」

「俺もそう思ってたからがっかりしたんだよ」

「作れる物って全部こんな感じ?」

「さあ? キノコのモンスターしか倒してないしそのモンスターのドロップアイテムだけで作ったからまだ何とも」

「キノコのモンスターしか倒してないってあんたの言ってるダンジョンってキノコしか居ないの?」

「他にも居るけど俺は今の所、洞窟の端っこに生えてるキノコ順番に叩いて行くとたまにモンスターが混じっててそれを倒していく感じ」

「あんたダンジョンに何しに行ってんの?」


 あまりにも的を射た質問に俺の脳は一瞬フリーズする。

 本当に俺今日ダンジョンに何しに行ったんだ?

 キノコを叩き、イキって、土下座して、変な物作って、殴られ、罵られ。

 別にレベルが上がるとかもなく1円も稼ぐことなく帰ってきた。


「いや、まだ2日目だから、レベル上がったら他の奴倒しに行くし!」


 虚無感に飲みこまれる前に精一杯の強がりを口にした。


「うーんまあ好きにして、て言うかこの靴とかってそんなにショボいの?」

「どう見たってめちゃくちゃダサいだろ」

「いや、見た目じゃなくって性能の話しスキルとかで作った装備って身につけるだけで強くなるんでしょ?」

「え? ああ、あー」


 あまりに見た目が悪いので身に着けると言う発想がなかった。


「靴履いて帽子かぶって盾持ちな」

「はい」


 俺はどうやら正論の類いに弱い人間のようだ。


「あーその前にあんたのステータス教えてくらべるから」


 ダッシュファンガスプレーヌを履こうとした時にそう言われ俺は自分のステータスを確認した事ないのを思い出す。

 本来ダンジョンアナウンスを聞いた事のある人間は自分のステータスを観覧出来るようになるのだが昨日はスキルを取ってから確認しようと思っていて青葉のドロップキックのインパクトに負けて見るのを忘れていた。


「ステータス」


 スキルの発動条件と一緒でステータスも口に出した方が確認しやすい。

 俺は頭に浮かんでくる情報を読み上げていく。


明松カナメ

 

レベル:1


HP 12/13


MP 0/1


SP 3/12


STR : 15


VIT : 9


INT : 7


MND : 6


AGI : 11


DEX : 5


LUK : 2


スキル

武装作成Lv1


「あんた賢さが筋力の半分しかないけど大丈夫?」


俺のステータスを聞いた姉ちゃんの第一声はそれだった。

正直俺もHPがちょっと減ってるとか運が一番低いことよりも問題だと思う。 


「まあ、上がるかもしれないからいったん全部つけてみなさい」


 俺は内心、帽子のせいで賢さが上がったら嫌だなと思いながら靴を履き盾のベタベタを左腕に貼り付け帽子を渋々かぶった。


「ステータス」


明松カナメ

 

レベル:1


HP 12/13


MP 0/1


SP 3/12


STR : 15


VIT : 9+6


INT : 7


MND : 6+2


AGI : 11+4


DEX : 5


LUK : 2


スキル

武装作成Lv1

『逃走Lv1』

『潜伏Lv1』


「よっ、てええ!?」


 賢さが変わってなかった事により変なキノコ帽を普段使いせずにすんだ事を喜びそうになった時自分のスキルが増えている事に驚いた。

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