第16話 キノコ叩き再び、カナメ壊れる。
俺って会話下手なのか?
放課後、学校から電車で一度家に帰り自転車に乗って緑守国営ダンジョンにやって来た俺はキノコ叩きをしながらそんな物思いにふける。
今日だけでもう3人怒らせてるものなー。
まあ高林は急に壊れて、青葉のコーヒーが苦いのはどうにも出来ねーし、足立が説教されてる間教室で待ってやる義理はねーしな。
高林はあれ以降壊れる事も無く普通だった多分兄弟姉妹の話をしなければ大丈夫だろう、足立は自業自得だし高林もバイトの面接あるって断ってたから良いだろう。
青葉は……あれ俺が悪いのか?
今日の昼休みの出来事は、どう頭をひねってもあの時ああしておけばが考えつかない珍しいパターンだ。
「あ、やった」
キノコ叩きを開始してやっと10分が経ったころ今日三体目のダッシュファンガスを叩き潰し人生初のドロップアイテムを手に入れた。
ダッシュファンガスが残したのは俺の顔よりでかいキノコの傘の部分で、拾い上げると初めて手に入れたアイテムだからかとんでもなく貴重な物に思えてくる。
「武装作成」
ネットで見た話しだとスキルの発動はイメージが大切らしい、だからスキル名を口に出すのは格好つけや中二病ではなく冒険者の基本テクニックだ。
目の前にホログラムっぽいゲームのメニュー画面のような物が浮かび上がるそこには『作成』『素材ボックス』の2つの項目が並んでいた。
キノコの傘1枚で何も作れないだろうがとりあえず作成を押す。
ファンガスシールド ファンガス系の傘+???
ファンガスハット ファンガス系の傘+???
ダッシュファンガスプレーヌ ダッシュファンガスの傘×2+???+???
ファンガスハンマー ファンガス系の傘+???+???+???
「……」
俺は無言で左上にあった戻るを押して素材ボックスを押すと、『素材をすべて収納しますか? はい/いいえ』とでたので『はい』を押すと手に持っていたキノコの傘が青い塵に成って画面に吸いこまれていった。
「これは……使えるよな、実質アイテムボックスじゃん!!」
俺は思わず歓声を上げる。
作れる装備の一覧がショボそうだった時は正直クソがと思ったが、素材限定とはいえ収納系のスキルとして使えるなら武装作成はかなり便利だ。
俺の心は浮き足だつ。
アイテムボックスと言えば、ラーニング取得法不明、オーブの最低取引価格数千万円、代替アイテムは数百万、ギフトやリワードで引けば一生食いっぱぐれる事は無いと評判だ。
「いやー、俺の人生バラ色だなこれは、ってうお」
「キャッ」
浮かれながらキノコを叩いてまわってると横から来た誰かにぶつかった。
「すいません大丈夫ですか?」
俺は反射的に謝った。
辺りにすごい量のキノコの傘やら柄やら石突きが落ちている、多分前が見えなくなる程抱えて歩いていたんだろう。
「大丈夫です、こちらこそごめんなさいちゃんと前見てなくって」
相手が女子で手を差し出す勇気のなかった俺は辺りに散らばったキノコのパーツを拾い集める。
「いやー、すごい量ですね」
「あーすいません、えーっと明松カナメ、くん?」
「はい?」
顔を上げるとそこには相馬さんだった。
「ああ昨日の、確か相馬さん?」
俺は少し思い出すフリをした、何となく初対面の女子の名前をしっかり覚える軟派な奴と思われたくないから。
硬派を気取るつもりはないが変なところが恥ずかしいお年頃だ。
「はい相馬カヤコです」
相馬さんは元気よく立ちあがると自己紹介をして辺りを見渡す。
「あれ? ダイちゃん達は?」
「ダイちゃん?」
「えっと、足立くんと確か高林くんは?」
「え? ああ足立は多分学校でまだ説教されてて――」
「ダイちゃん学校で何かしたんですか!?」
足立のダイちゃん呼びは謎のまま相馬さんは食い気味で足立の心配をする。
「えっと髪型の校則違反で」
「あーもうやっぱり、ダイちゃんはもー」
相馬さんはこめかみに指をあて困った声を出す。
「相馬さんって足立と仲いいの?」
足立本当にモテるタイプなのか? 昨日あったばっかりでもう連絡先交換したのか? 白い目で見られてたのにそっからどうやって逆転したんだ?
とかそんな疑問をすべて集約した質問を相馬さんにぶつける。
「幼馴染みなんです家が隣で、今朝迎えに行ったら髪がキンキラキンでダイちゃんったら自由な校風だからこんくらい大丈夫ー何て言ってたんですよ」
オサナナジミ? イエガトナリ?
「本当にごめんなさい、明松くんと高林くんとパーティー組むって言ってたのに、言い出しっぺがお説教でこれないなんて」
ナンデアダチノカワリニアヤマッテルノ?
タカバヤシ、キミノキモチワカッタヨ。
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