第8話 ドロップキックにインパクト負けするスキル

 そもそも、初めに取りたいスキルランキングはが上位に来るランキングではなくが上位に並ぶ幼稚な物だ。

 だからそんなランキングの3位にたいした意味はない。

 むしろ、早めに取りたいスキルランキングだと大剣術なんて見た覚えがない。


 だから決して足立の事がうらやましいなんて事は絶対に無い。


「マジで口には気をつけろよ、ザコが」


 俺が一瞬言葉に詰まった間に足立はしたり顔で捨て台詞を残して離れていった。


 よし殴ろう。


 俺はトンファーの握りを確かめて、誰も見ていないか辺りを見渡す。


「なあ、明松さっきはごめんな」


 普通に高林がこっち見ていたし近づきながら何か謝ってきた。


「足立の事か? 何でお前が謝んだよ保護者か?」


 思わず足立への苛立ちが少し漏れ刺々しい言い方になったが高林は嫌な顔をせずむしろ申し訳なさそうにする。


「いや、ゴブリンと戦ってる時に俺が声かけたせいで明松怪我しただろ、足立にもディスられてたし」

「ああー、いいよ別に勝ったと思って油断したの俺だし」

「でも、あれなかったら勝ってただろ?」


 どうやら高林は責任感が強く気遣いが出来る人間のようだ、どっかの足立とは大違いだ。


「気にすんなってこれから勝てばいいんだし、て言うかスキルもう取れた?」

「ああうん一応、弓術」

「おおー遠距離系当たりじゃん」

「うーん、でもぶっちゃけ魔法とかに憧れてたからちょい残念」

「それは贅沢な悩みだな」

「ハハッ、確かに」

「じゃあ、俺もスキル取るわ」

「おう、凹んでないキノコ選べよ一回叩いても凹み治ってたらモンスターになってる事あるらしいから」

「へー、分ったサンキュー」


 スムーズ。

 高林はすごく接しやすい、クラスも一緒だし学校でつるむとしたら高林のコミュニティーだな.


 足立はいらん。


 当たりを見渡すと右端で青葉と地味な女子2人がそれなりに距離を取ってキノコを叩いていた。


 青葉は両手で2本のトンファーをつたなく操り次から次へとキノコを叩いて行く、女子2人組ははまるでモグラ叩きのように持ち手でリズムよく叩いて行っている。

 3人とも同じくらいの速度でキノコを叩いているが、青葉はスタイリッシュなウェアを着ているのに使い慣れないトンファー両手持ちのせいで何だかバカっぽい。

 むしろ学校指定っぽい小豆色のジャージを着ている2人組の方が何か息が合っている分ちゃんとして見える

 

「あっスキル取れた、でも回避かー」


 女子2人組のショートカットの方が叩く手を止めてつぶやいた。


「あ! クレアちゃんドロップアイテム出てるよ」


 少し残念そうにしていたショートカットがお下げ髪にそう言われ、明るい顔をしてすぐまた微妙そうな顔をした。


「何これキノコの足?」

「一応石づきじゃないかな?」


 さすがおそらくこのダンジョン最弱のモンスターなんに使うか解らん物を落とす。


 俺は自分もキノコを叩くことにした、もう半数がスキルをゲットしている出来れば最後の一人にはなりたくない。


 まず目の前の一際大きい淡く光るキノコを叩いて見る、キノコはそこそこ凹み別に動きも消えもしない。

 もう一度叩こうかと思ったが触れると飛び出すという話を思い出し隣のキノコを叩くまた動きも消えもしない。


 じ、地味。


 とりあえず無心で次から次ヘと叩いて行くがどれもピクリともしない。


 これは片っ端から叩いていくのが良いのか、思ったより凹みが治るのが早いし出来るだけ同じ奴を叩いた方がいいのだろうか?

 そんな事を考えながら叩いていると、洞窟の奥から話し声が近づいてくる。


「ん? 何してんのあれ?」

「ああ、キノコ叩きですー、一番安全なスキル取得法ですねー」


 若い女性職員を先頭に他のパーティーの新人達がそんな事を言いながらやってくる。


「え? このキノコってモンスターなの」

「たまにしか混ざってませんけどね-、経験値少ないしドロップ良いの無いんですけどー」

「えーじゃあなんでわざわざ」

「運動神経とかの問題でしょうがないんですよー」

「えー向いてないじゃん」


 軽薄そうな男と女性職員の会話は俺の心を逆なでする、うーん足立と五分くらい嫌いだな。


「あ、当たった! えっ? 両利き!?」

 

 そんなバカにされている空気の中お下げ髪の女子は思わずといった感じで自分のスキルをバラしてしまった。


「「「ヒャハハハハ」」」


 もうすぐ通りすぎそうだった新人パーティーは思いっきり笑い出した。


「りょ、両利きってスキルの意味ねーだろ」

「わ、笑っちゃ駄目ですよー」


 お下げ髪の女子は顔を真っ赤にしてうつむきながら震え出す。


 あー多分こいつら足立よりクソだわ、群れで人を嘲笑し慣れてる感じが気分悪い。


 だけど今の俺に出来ることは何もない黙って過ぎ去るのを待つだけだ。

 バカにされる方は何時だって立場が弱い、時に立場が弱い事すらバカにされる。

 怒ろうっても何かキレてるとバカにされ、暴力を振るいたとえ勝っても悪者にされる。

 数をそろえて人を嗤えば簡単に優位に立てる、この世で一番嫌いなルールだ。


 早く帰ってしまいたい気分になった俺は雑にキノコを叩いて行く.

 昼飯は少ないわ、ゴブリンに負けるわ、足立より嫌な奴を見るわ、と色んな事を思い出してどんどん叩く手が荒くなっていく。


「ブレイブソウル」


 ニヤニヤ嗤うクソどもが通りすぎようとした時良く通る女の声が洞窟に響く。


『モンスター初討伐確認、リワード報酬としてスキルが贈られます』

『明松 カナメは『武装作成』を取得しました』

 

 声に気を取られよそ見をしながら振り下ろしたトンファーが当たりを引いた用で、頭の中に男か女か解らない声が響く。


 どっちに集中したら良いか迷ったが、先にした声の主である青葉が嗤っていたパーティーの最後尾を歩く奴にドロップキックをかまそうとして居たのでそっちに集中することにした。


 







 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る