第28話 真実


~第27話までのあらすじ~

 リリーに「所有権をちょうだい」と言われた響は、その方法がわからなかったので、俯瞰ふかんの書を借りて思い出すことにした。そしてその本を開くと、衝撃の事実が書かれていた。




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2008年1月1日(火)

 第1回契約締結

  契約内容:全世界の所有権獲得

  契 約 者:(該当なし)―王那

  締結方法:契約石への接触

  効  果:3次元―4次元間の人間の入れ替わりおよび最適化

  名  簿:3次元→4次元

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

       4次元→3次元

        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2008年1月8日(火)

 第1回契約破棄

  破棄方法:オーナーに関する他言

  処  分: 王那の所有権のはく奪および4次元への転移

  効  果:全世界の記録消去および3次元転移者の最適化


2018年7月29日(月)

 第2回契約締結

  契約内容:半世界の所有権譲渡

  契 約 者:王那―杉野ヤヌ

  締結方法:契約石への接触および王那の同意

  効  果:第1回に同じ

  名  簿:3次元→4次元

        ・・ 角末伊奈瀬 永久野あい 科戸衣央 ・・ 轟リリー

       4次元→3次元

        ・・ 中野旗音 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


2018年8月5日(月)

 第2回契約破棄

  破棄方法:オーナーに関する他言

  処  分:杉野ヤヌの所有権のはく奪および杉野美心の4次元への転移

  効  果:全世界の記録消去および3次元転移者の最適化


2028年2月27日(日)

 第3回契約締結

  契約内容:半世界の所有権譲渡

  契 約 者:王那―国見響

  締結方法:契約石への接触および王那の同意

  効  果:第1回に同じ

  名  簿:3次元→4次元

        ・・ 中野旗音 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

       4次元→3次元

        ・・ 角末伊奈瀬 永久野あい 科戸衣央 ・・ 轟リリー

        ・・ 福田あいり ・・ 篝茶緒 ・・・・・・・・・・・

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 響は驚愕した。第1回の契約者は王那で、全世界の所有権を獲得している。その方法は響と同じ、石に触れること。王那はもともと、響と同じ3次元の住人だったのだ!契約石に触れてから1週間、オーナーとして全世界を所有したのち、契約破棄のタイミングで4次元に転移。3次元世界を俯瞰し管理するオーナーになったのである。王那の身体はその瞬間に成長を止めたため、2028年現在の王那も、身体はその時のままなのだ。


 そして同じく、伊奈瀬、永久野、衣央も、もともと3次元の住人だったのだ。ヤヌが所有権を獲得した際に4次元へ転移し、破棄されたときには入れ替わりが起きなかったため3次元に戻ることができず、響が所有権を得たときに「戻ってきた」のである。


 一方で、彼女たちと全く逆の動きをしたのが中野旗音。響のクラスメイトであったが、実はもともと4次元の住人だったのだ。しかしヤヌの禁忌により記憶は消去され、彼女自身ですら、そのことに気が付いていないのである。まさか自分が思いを寄せていた旗音がもともと4次元にいた人だったなんて、響は考えもしなかった。


 響は俯瞰の書を読み終え、その事実にただ茫然としていた。

(王那も永久野さんたちも、もともとこの世界の住人?旗音が4次元から来た人...?)

それもそのはず、「来た」と思っていた永久野たちは「戻ってきた」だけであり、同じく4次元の世界へ「行った」旗音もまた、「戻った」だけなのだから。所有権の移動による入れ替わりとは、2回行われることで1セット、元いた世界へ戻るのである。


(え...でも轟リリーは、伊奈瀬たちとは違ってオトナじゃないよな...)

 ふと響は思った。確かに、4次元から来た轟リリーは、響より目線の低い、オトナではないただの子供だったはず。しかしその疑問は、次のページで明らかになった。


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いかなる記憶消去工程においてもそれを免れ 行く先々でその記憶を保持し続けることができる者として 記憶保持者を制定し その役に轟リリーを指名する

この役についた者は その代わりに 身体等への最適化を受けることができない

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 轟リリーが記憶保持者であり、俯瞰の書の所有者でもある。それならば、バグが起きた当日に、響が轟リリーに狙われていたことにも納得がいく。あまりにも早すぎたリリーの行動は、入れ替わりの記憶と情報があったからこそのものだったのだ。



 前半部分を一通り読んだ響は、迷っていた。

(後半いきてぇ...でも、リリーにはダメだって言われてるし...あの人、怒ると怖そうなんだよな...)



 そして響はページをめくった。

 後半部分に書かれていることは...


 オーナーの役割と運命。

 なぜオーナーというものが存在するのか。そしてその役割を果たした人の末路とは。




小ネタ)

俯瞰の書で新しくわかったこと

・王那、伊奈瀬、永久野、衣央、リリーはもともと3次元にいた

そのうち王那は1回の入れ替わりで4次元の住人となり、3次元世界を俯瞰する神様となった。そのほかのオトナは全員、2回の入れ替わりを経て、3次元の世界へ戻ってきたのだった。

・王那も禁忌を犯していた

一人っ子だった彼女は、それにより4次元へ転移した。

・ヤヌや響は王那と「契約」を交わし、オーナーになった

ただ石に触れるだけではなく、その瞬間に王那が「仕事を放棄したい」という意思を持っていることが、オーナーになるための条件である。

・轟リリーが記憶保持者であること

身体等への最適化も受けないため、オトナではなかったのだ。

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