第24話 海に行くぞ
~第23話までのあらすじ~
響たちは
「おっ、卒業式の生徒かな~?オトナも一緒にいるな」
王那の言う通り、砂浜にはちらほら制服姿の人たちが見える。中には響たちみたいに、オトナとそうでない人が一緒にいる場面も見えた。彼ら彼女らはどのように出会ったのか、今の響にはとても興味深く思えた。ところで、さっきまであれだけはしゃいでいた王那が急に落ち着いた声でそうやって言うものだから、その切り替えの早さに響は驚くばかりだった。
「響くんは卒業式はいつですか?」
衣央の問いに響は答える。
「オレの高校は3月5日で、日曜日にやるんです」
「そうなんですね。私も見に行きたいです」
「私も行く」
「私は
衣央に続いて伊奈瀬と
「ちょっと、あい!先に行くって何よ!こればかりは一緒に行けばいいでしょ!」
「気持ちは先に行ってるの!」
「意味わかんない」
言い争う2人を、
「王那さんは、響くんの卒業式には来れるのですか?」
「行けるといいんだけど、ね。響次第かな」
「響くん次第、ですか?」
「そ。」
そこで王那は会話を区切った。これ以上は話さないということだろう。
海に来たのは、王那が行きたいと言っていたからであるわけだが、その割にはやりたいこともなかったようで、王那は砂浜に絵を描き始めた。
「出来上がるまで見ないで」と言われたものだから、響たちはバレーボールをして遊んでいた。このボールは、伊奈瀬がポンッと出してくれたものだった。やはり4次元は異次元である。そして彼女たちの身体能力もまた、異次元であった。ただでさえ身体が大きいのに、最適化の恩恵も受けているためか、力も俊敏(しゅんびん)さも響よりはるかに上なのである。3人は響に合わせて手加減をしてくれているが、動きの端々からそれが見て取れるのだ。
4人が汗ばんできた頃、王那の声が聞こえた。
「出来たぞ!!」
よほどの自信作なのだろう、腰に手を当てて鼻を膨らませている。急いで駆け寄ってみると、響たちは衝撃を受けた。
「これは...」
「すごい、ですね」
名付けるなら、「10歳児の絵」だった。
かろうじて人であることがわかる形が7つ。
「確かにすごいね...」
「王那ちゃんすごい!!で、なんで7個のイチゴを描いたの?」
(え?イチゴ?...永久野さん!それはイチゴじゃなくて、人だから!!いや確かに髪の毛の部分がイチゴのヘタの部分とそっくりだけど!!)
「これ...イチゴに見えるの?」
(ほら見ろ~!王那さんが泣きそうだ!!)
王那は涙目になっている。
「いやいや、違くて、ですね!絵が上手だからその...個展の
「そうですそうです!一号店ですよ一号店!」
伊奈瀬と衣央が必死にカバーする。
「えぇ、ほんと!?」
王那は元気を取り戻した。
(あっぶねぇ~!王那さん泣いちゃうとこだった~!)
「で、王那さん。この7人のうち5人は王那さんと私たちですよね。あと2人は誰なんですか?」
衣央の率直な疑問に王那は答えた。
「あと2人はね、美心とヤヌ。いつか2人がお互いを思い出して、こうやって一緒にいられたらいいなって思うんだ」
王那はどこまでも魅力的だ。絵は上手ではないし、朝起きるのも得意ではない。だが、純粋な優しさや思いやりなど、人として尊敬できるところがあるだけでなく、ギャップ萌え要素もある。彼女は1度の入れ替わりを経験しているが、どんな過去があって今の王那になっているのか、響はとても大きな関心を持った。
「オレもそう思います、王那さん。あと何日かで、どうにかして解決策を...どっかで...」
「何も分かってないじゃないか、響!!」
「だってぇ~!」
「響くん、私たちもできることはお手伝いしますからね!」
「任せて、ひっきー」「ひーくんは私が助けます!!」
神様である王那でさえ解決することが難しい大きな問題を前に、響たちは決意を新たにした。王那の自信作は沈み始めた日の光に照らされ、間もなく午後6時になることを告げていた。
「王那さん、他に行きたいところはあり————」
「ゲーセン行く!!」
響が言い終わらないうちに、王那は叫んだ。
響一行、2日連続のゲーセンとなる。
小ネタ)
響の学校の卒業式は3月5日(日)10:00~となっています。響は無事に参加できるのでしょうか?
王那がゲーセンに行きたい理由は、響たちがゲーセンで遊んでいるのを俯瞰の間から見ていて、楽しそうだと思ったからです。
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