第23話 今日は響の...

~第22話までのあらすじ~ 

 ひびき伊奈瀬いなせたちと一緒に、王那おうなのいる神社を訪ねた。10年前、杉野ヤヌや美心みこにつらい目を合わせてしまった王那であったが、彼女自身も2人を助けたいという気持ちだったことを、響たちは知るのであった。



 一件落着したところで、神楽殿かぐらでんから姿を消していた美心もエコバッグを持って戻ってきたので、お菓子パーティーという名のお昼ご飯を食べた。王那に失礼をしてしまい猛反省していた伊奈瀬も、王那のほがらかな性格や会話の飛び交うパーティーの雰囲気に、元気を取り戻していった。響はパーティーの途中で1時間ほど席をはずした美心のことが気になっていたが、それも会話に飲み込まれた。奥の部屋で物音もしていたし、大丈夫だろう。


 お菓子パーティーが始まって2時間。響がゲーセンで取るお菓子の量の、数倍はあろうかという大量のお菓子が、5人の力で無くなった。とはいっても、ほとんどは王那のおなかに収まったのだが。



大満足した響が「さて、そろそろ...」と立ち上がったときだった。


「ちょっと待ったぁ!!」

と王那が叫んだので、響は驚いて元の座っていた姿勢に戻った。


「美心、アレを頼む」


(...ん?アレって、なんだ?)


と響が考えていたその時!


 神楽殿が真っ暗になると同時に、見えたのは蝋燭(ろうそく)の灯(ひ)。それも20本近く。

 それと同時に甘い匂いもした。これは、まさか...


「響!誕生日おめでとう!」

「響くん。お誕生日おめでとうございます!」


重なる王那と美心の声。響はハッとした。


3月2日。響は今日、18歳になったのである。


「え!?ひーくん今日お誕生日なの!?」

「そうなら先に言ってよ、ひっきー」

「そうですよ。私たちもお祝いしたいんですから~!」

伊奈瀬たちは口々に言う。


「じゃあ今からお祝いすればいいだろ~!」

そう言って王那は、いつの間にか持っていたクラッカーをパァーンと鳴らした。

「びんだぁ~ありがどぉ~!」

突然のことに思わず涙と鼻水でいっぱいになった響は、蝋燭の灯を3回に分けて吹き消した。それもそのはず、このケーキの大きさは王那でも1回では食べきれないほどの特大サイズだったのである。響は人生でたった1回であろう、彼女たちとの忘れられない誕生日会を楽しんだ。



「王那さん、美心さん。今日は本当にありがとうございました」

響は扉の前まで行き、食べきれなかったので箱に入れて持たせてもらったケーキを手にして言った。「ありがとうございました」と、3人もそろえて言う。そしていつの間にか王那は響の隣に立って、「美心、今日はありがとうな」と礼を言っている。


...あれ?王那が響の隣?

不思議そうに眺める響たちをよそに、王那は言った。

「何をじろじろこっちを見ている?私も行くぞ」


え?一緒に行く?3次元に?

「あれ、でも...オーナーとしての管理のほうは...」

「3次元の住人のくせに4次元に踏み入ってるやつが何を言う!ちょっとくらい大丈夫だ」


「え!?王那ちゃん来てくれるの!?」

永久野はこの数時間で、王那ちゃんと呼ぶほど彼女と仲良くなった。


「もちろん行くぞ!海だ!海に行くぞ!」

そうして響たちはもう一度、お留守番役の美心に礼を言い、王那と一緒に海へ向かった。





神楽殿でのパーティーが終わり、響たちは王那とともに3次元世界へ戻ります。

次に向かうは、アパートから飛行板で東へ進むこと数分。太平洋に面するビーチ!


小ネタ)

 前話で美心は一度、神楽殿から出ていましたが、実は誕生日パーティーの買い出しに行っていました。本話で再び神楽殿に戻ってきた後、奥の部屋でケーキを作っていました。物音がした、というのはケーキ作りの音だったんですね!

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